2024.8
施設の整備・再生産を考える
施設の整備・再生産を巡る経営環境(濵谷真之)
- 1989年に策定されたゴールドプランなどで集中的に整備された社会福祉施設の多くが,大規模修繕や建て替えの時期に来ているが,一時的に多額の資本を要し,社会福祉法人の財務に急激な変化をもたらす.現在ある施設を整備した頃とは大きく状況が変わり,経営環境は非常に厳しい.
- 補助金も時代によって変化しており,介護保険事業計画による総量抑制がかかっている.また国の厳しい財政状況の中限定的になっていること.都道府県の交付金化・一般財源化された.特養の新規整備は基本地域密着型特養となったことから市町村への交付金に変化していく.つまり補助金の薄まきが行われ,一施設あたりの補助率が大きく減少した.障害者分野も補助対象は限定されていき,今日では障害者福祉施設の一部しか補助の対象とならなくなり,補助率は大きく減少している.
- 老朽民間社会福祉施設整備事業がある.施設等整備補助の中から優先的に補助するものとして運用された.また補助を受けた社会福祉施設は福祉医療機構からの無利子融資も受けられた.その制度は存続しているが,対象は救護施設,障害者支援施設,児童養護施設,女性自立支援施設等限られたものしか残っていない.
- 人口減少社会にあって,今後福祉サービスの需要も縮小することが見込まれる.そのため,立て替えなどは将来の利用者の減少を無据えた事業計画がいかに立案できるかが重要である.特に保育の分野はその傾向が強い.
- また建築コストも高騰している.しかし,福祉施設には最低基準があり,床面積を小さくして建築コストを抑制することは難しい.また法人財務状況は全体として悪化傾向にある.人件費の他,光熱水費や物価の上昇,また法人の中で安定的に運営できているのは全体のわずか8.4%である.
建築・建物管理の視点から見る整備・再生産のポイント(松田雄二)
- 建築費の高騰はしばらく続くこと.補助金は急激に減少しており,自己資金の調達が前提になると言える.
- 以下,大規模修繕に関するポイントについて解説している.
施設の再生産に求められる財務管理のポイント(林光行)
- 建て替えに関してどのように資金を調達したら良いのかのシミュレーションと視点について解説している.
レポート
- 本人の望む暮らしを続ける住まい作り
- 既存の公共施設を活用した新たな福祉の拠点作り
- 増設・改修後の施設でより一層地域課題に対応
- ZEB活用で快適な室内空間を
参考文献