2024.12

更生保護と地域福祉を繋ぐ

地域共生社会を目指した更生保護と地域福祉の連携とは（掛川直之）

更生保護と地域の連携は，明治期の慈善家が監獄教誨と免囚保護を目的に設立した静岡県出獄人保護会社にあると言われている．その後，保護観察の制度に通じる法律が整備され，年を追う毎に刑事司法の一翼を担う更生保護のあり方が出来上がってきた．
国家公務員たる保護観察官と民間ボランティアの保護司が協働して処遇に当たる保護制度は日本が世界に誇る立ち直りを支える仕組みの一つ．
社会福祉において更生保護は司法政策との重なりの中で，司法福祉，家事審判などと並列して捉えられてきた．
再犯防止推進法が2016年に制定され，国はこの計画の策定が義務化され，都道府県や市町村は努力義務かされた．市町村での策定は44％と低調である．2023年の第二次再犯防止推進計画が公表され，地域における包摂の推進がより強調されることになり，地方自治でも我が事として捉えることが求められるようになる．
地域における更生保護の福祉的な諸活動が，いわば国の刑事政策に絡め取られ，100年あまりが経過した現在，地域における福祉課題として再定位することが求められるようになる．再犯を社会の敵として捉えるのか，犯罪史か生きるすべが無かった人たちと考えるのとではまなざしが違う．地域共生社会においては後者の視点を取る．
保護観察所による地域援助，満期釈放者に対する援助，更生保護施設による訪問支援事業等が掲げられ，更生保護の射程範囲が拡大し，福祉化している．そもそも地域福祉とは必要な福祉サービスを駆使して一人の人間として尊重され，地域で生きていくことを意味しているが，これまで更生保護の対象とされた人はこのあたりまえに視点が適用されてきたのか．
最近では刑事司法ソーシャルワークが展開され，入り口から出口まで住みやすいまちづくりを踏まえた取り組み．本音を受け止めることが出来る他者として，そして，刑務所の生活によって失われた自分で考え，自分で決めることが尊重される自由が必要であると言える．

更生保護と地域福祉（今福章二）

更生保護とは，犯罪をしたもの及び非行のある少年に対し，通常の社会生活を営ませながら，適切な処遇を行うことにより，再び犯罪をすることを防ぎ，これらのものが善良な社会の一員として自立して，改善更生することを助けることである．それは，処遇活動と地域活動の二つからなるとされている．
もともと更生保護は司法保護として社会事業から次第に分離しはじめ，戦後更生保護事業が社会福祉事業と区別され刑事司法制度の中に明確に位置づけられ，両者の関係は疎遠になるが，2008年前後から司法と福祉の連携スキームなどを経て球速に接近して現在に至っている．
保護観察官，帰住環境を調整，刑務所を満期で出所したものなど緊急的に宿泊保護を行う更生緊急保護がある．司法的には様々な約束事を付与してそれが守られなければ，刑務所に再収容するなど，個人の課題として捉えている．
現代社会ではあらゆる紐帯が失われ，自己責任が強調されている．そのため犯罪を犯した人の再出発にはとても困難が伴っている．それには保護観察所などの中で完結していたこれまでの体制を越えて，地域福祉の関係機関との密接な連携と協働がなければならない．地域生活定着支援センター，ハローワーク，ソーシャルファームなどとして連携した就労支援，その他にも居住支援や依存症回復などなどとの連携が広がっている．
保護司は従来から対象者に寄り添い，社会の中での信頼とか安心に寄与してきた．最も社会から排除されがちな人たちに寄り添い，代弁機能を働かせながら実質的なコミュニティワーカーとしての働きをしている．しかし，高齢化や人材不足も指摘されている．
従来再犯防止は国の責務と民間組織の努力に委ねられていたが，再犯防止推進法により，地方公共団体も一緒に責務を負うことになり，計画を策定することになった．また2022年には息の長い地域支援を充実させるため地域校正支援ネットワーク体制の整備を狙いとする更生保護法が改正されたところである．

座談会更生保護と地域福祉をつなぐために

2005年から大きな動きが続いていて，更生保護法の制定をはじめ，医療観察制度の導入，就労支援の拡充，性犯罪，薬物事犯，暴力，飲酒運転に関する専門的処遇プログラムの導入など．また，地域生活定着支援センターが各都道府県に設置され，2016年には再犯防止推進法が制定された．この動きから，困難を抱える人に効果的な指導をすること，困窮している人の衣食住を確保すること，保護司がやりがいが感じられるように活動しやすくすること，自治体や関係機関と連携していくこと．それが再犯防止推進法に集大成となっている．
国が推進する地域共生社会の中に，刑余者の存在が意識されているかという問いかけもある．
保護観察を受けている人については，社会に貢献する活動については更生保護法では特別遵守事項で義務づけが可能となっている．それとは違って，自発性を尊重して自らがしたいとするボランティア活動を推進している地域もある．
社会を明るくする運動についての説明．
連携は大事だが，相互理解，見立てのすり合わせ，役割分担が必要である．横浜では2024年より保護観察所で生活保護ワーカーと保護観察官の人事交流が始まっている．
保護司会をはじめとする更生保護の関係団体は専門的な支援を提供するためのリソースがあまりに限られており，複雑な課題を抱える対象者の支援は難しい．そこで，医療や福祉，教育など分野を超えたネットワークを形成し，地域の資源を提供し合い，生きづらさを解消していく取り組みをしている(滋賀KANAMEプロジェクト）．
居場所づくりとして民生委員や社協との連携は欠かせない．

レポート

山形市社会福祉協議会と山形地方検察庁が連携した再犯防止の取り組み(入り口支援)

入り口支援とは，身柄拘束有無にとらわれず，不起訴処分，罰金刑になった者，系の全部が執行猶予されたものであり，家族など適切な監督者がおらず，更生のための支援を希望する者，あるいは福祉，医療などの支援を希望する者を対象としている．
地域で支え合う更生支援を目指して「福井モデル」の実践

2022年に刑務所出所などに息の長い支援を確保するために，国が更生保護事業を営む民間事業者などに委託した「更生保護地域連携拠点事業」が全国3庁に設置された．その一つが福井と言うことで…

参考文献など