2023.2
その人の人生のさいごをいかに支えるか
論文 人生のさいごをどのように支えるかー「死」を巡る医療・福祉の変遷から考える (太田秀樹)
- 人口減少,多死社会であり,どこでどのように高齢者を看取るのかが問題となっている.医学は死を敗北とし,病を治すためにめざましく発展してきた.その力が及ばない人たちへの苦痛を取り除き,穏やかな旅立ちを支援することである.
- 1973年に70歳以上の高齢者の医療費の無料化が行われると,自宅で無くなる人よりも病院で死ぬという文化に変容していく.いつの間にか,病院のベットが高齢者で埋め尽くされると老人病院とやゆされ,寝たきり老人という言葉も生まれた.
- 高齢者福祉の整備は,1989年のゴールドプランから始まり,1995年に高齢化率が14%を越え,新ゴールドプランが策定され,介護保険への準備が整った.医療面では,1992年の医療法改正で,医療を提供する場所に居宅が追加され,入院医療,外来医療のほか在宅医療という形態が誕生した.また在宅療養への誘導が始まった.
- 1996年の福祉のターミナルケア調査研究会が設置され,高齢者終末期医療がどう在るべきかの検討が始まった.しかし,死のその時まで適切な医療を提供し続けるのが医療者の社会的紙面だとの立場が貫かれていた.
- 2000年の介護保険制度の成立は在宅療養継続を目指し,それに必要な生活支援サービスを基礎自治体毎に,地域の実情に応じて整備するものであった.2014年の医療外語総合確保推進法として,地域包括ケアシステムの整備が進められている.徐々に病院死の割合は減少している(施設での看取りが増えてもいる).誤嚥性肺炎や脳血管疾病による死を老衰死とみなす傾向にある.
- 人生のさいごをどのように支えるかはあくまでも本人・家族が選択し,その意向をケアの専門家が多職種で支えることを意味する.それは病院で亡くなるのか地域や自宅で無くなるのかという選択肢も含まれている.
インタビュー さいごをどう生きるか,どう支えるか
- 終末期医療について書かれている.
- 旧来の医療の反省点は,医師を頂点とした階層社会になっていることで,その他の職種は医師の指示で動いていた.しかし,癌の終末期のように良くなる見込みが無い場合,その患者さんの人生をどのように支援するのが中心課題になるので,全ての職種が対等な関係の中でチームを組むことが大切.介護職は終末期に心身がどのように変化していくのかというプロセスを疾患毎に知っておくことが必要である.
- ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の普及に国は務めている.
- 排泄を他人に委ねることはとても抵抗のあることであると,看護や介護の問題としてきちんと検討する必要がある.
- グリーフケアは大事であり,寄り添うという言葉はどこか上から目線の言葉だと感じる.どんな場面でも自己肯定できることが大事である.その自己は必ず他者との関係性の中で生まれる.専門性は大事だが,1個の人間として向き合うこともまた大事である.
レポート
- 施設で迎えるさいごをよりよいものに→看取り
- 住み慣れた自宅でさいごを迎えるためのサポートのあり方→訪問看護
- 生前からさいごに向き合う地域における支援→孤立老人,地域
- 子どものエンド・オブ・ライフ・ケア→小児癌
参考文献
山崎章郎