2022.10
農福連携ー持続可能な地域を作る
農福連携の「これまで」「これから」 吉田行郷
- 農福連携とは,障害者などが農業分野で活躍することを通じ,自身や生きがいを持って社会参加を実現していく取り組み.
- 形態として,①社会福祉法人を利用する人が,農業者のところに働きに行く「施設外就労」,②障害者サービス事業所が自前で農業をやること.③農業法人が障害者を雇用する取り組みである.いずれにしろ,農業をやる人と障害者の連携がうまくいかないといけない.
- 最近では,企業が特定子会社や障害者サービス事業所を設置して,農業分野における障がい者就労に取り組む動きもある.
- 病院などの作業療法によるものー園芸療法の取り組みも農福連携に含めても良いかもしれない.また,対象も障害者だけでは無く,ニート,ひきこもり,刑務所出所者,高齢者等へ広がりがある.
- 農福連携と言う言葉は2010年頃からであるが,それ以前からも取り組まれていた.農福連携は現在4571主体が取り組んでおり,就労継続支援事業所は2401:15%である.
- 就労継続支援事業所による農福連携の拡大は,農林水産省による農園の整備など,厚労省による農業者と障害者のマッチングが行われたことによる.
- 最初は農家の手伝いに取り組んでいる内に,ノウハウを蓄積し,作業請負から農地の貸借に切り替え生産を自ら行う.そして,農産物産直売所を開設し,商品開発など拡大していった.地域の農家の販路拡大にも貢献している.
- 農福連携の阻害要因は,農業者による障害者の偏見,障害者による農業は大変だとする誤解がある.お互いが歩み寄って協力することで発展していく.
- 論文
福祉が農業に取り組む意味と意義 牧里毎治
- 重層的支援体制整備事業によって地域包括支援システムの構築,多職種との連携などは最後には,社会参加であるが,その受け皿が地域にないといけない.受け皿の一つに農業というコンテンツは有用であるし,むしろ昔から取り組まれてきたことでもある.
- 農業と障害者やひきこもりなどの社会とのつながりが薄い人に親和性があるという.農業は生産から加工,保存,料理などなどあらゆる作業工程が細分化でき,働く人の特徴や特性に合わせて調整しやすい.共同作業も多く,人とのつながりが得やすい.また,豊作を願う伝統行事など地域社会とのつながりも得やすい.
- しかし,その反面,自然に左右されるので,雇用の確保や賃金の問題,市場価格にも左右される.市場経済の仕組みに組み込むのかどうかというレベルに応じて考慮するべき課題はある.農繁期と農閑期における労働力需要もある.
- 労働の視点と福祉の視点を融合させる理想はソーシャルファームという社会的企業の形態では無いかと思う.
- そもそも農業が衰退したのは,人口減少や人口が都会に吸収されたからである.農業が国土保全や食料を支える重大な政策課題なのだという国民世論が高まらない限り,ひいては障害者や生活困窮者たちの農業労働は尊厳ある質の高い労働にはならないのではないか.そのためには農業が誰にとっても評価される裾野の広い農福連携の事業に育て上げないといけない.
- もっとも集団的に栽培から収穫,食材寄付や,農産物の廉価販売などに仲間として連帯して取り組むこと.労働市場から引退しても,人生は終わったのでは無く,互酬や贈答の貨幣では交換できない世界に自分の居場所と役割を見出すことに意義がある.
- 論文
