2021.3
災害への対応はすすんだか——東日本大震災から10年を受けて
今回は論点として簡単にまとめられているため,内容については概要のみとする.
論点1:求められる被災者支援とは
- 災害対策基本法の2条2の4と5にある,主体性と尊厳の尊重が被災者支援に求められる.
- 東日本大震災後10年経過し,災害支援は発展している.災害派遣福祉チームは設置県が33府県,公衆衛生分野では健康危機管理組織によるマネジメント業務を行う災害時健康危機管理支援チームが制度化されている.ICTやSNSが支援活動の省力化や見える化に活用されているなど.いずれ,どのような災害支援が行われているかの把握が必要.
- 被災支援の網の目からこぼれ落ちて,厳しい生活をしている人々がいることを忘れてはいけない.
論点2:災害時要配慮者を置き去りにしない
- 避難行動要支援者名簿を作成して,災害弱者の把握に努めたが,実際には誰を,どこに,どうやって誘導するのかの取り決めがなくあまり機能しなかった.そのため,避難行動要支援者個別支援計画が立てられることはできなかった.
- 一般避難所には物資は届いたが,自宅に戻った人には届かなかったし,障害に対する理解もボランティアには不十分で対応が困難であったとか.
- 福祉避難所に入所した場合は,入所施設へ丸投げをしていた.避難所で女性の性被害が報告されている.感染リスクも高くなりバリアフリーと共に空間の確保が必要.
論点3:災害時の支援人材の力をより活かすために
- ハード面・ソフト面を含めどのような条件が整った場合,どういう支援者が駆けつけることが可能になるのか.どのような環境整備や条件設定が必要だったか,外部支援者の役割と地元が担うべき役割の望ましいあり方はどうだったのか.
- ひとくちに支援者と言っても様々である.自治体の会長や民生委員,社協職員,ボランティア,NPOや職能団体.企業によるモノ・カネの他派遣されるヒトもある.そのため,役割も傾聴,調整,運営,解決者など様々である.
- 災害ボランティアセンターでは,専門性,継続性,地域性を兼ね備えた人材が求められ,社協が中心に行ってきた.
論点4:専門職による福祉支援に求められる専門性とは
- 災害派遣福祉チームは一般避難所に避難する高齢者や障害者,子どもの他,疾病者など災害時要配慮者の福祉サービスを把握し,支援する福祉専門職によって蘇生された支援チーム.主な活動内容は,避難者に対する相談支援,避難所内の環境整備,被地上生活上の支援,他職種や地域資源との連携による支援となっている.
- 他県との連携での標準化が問題となっている.ガイドラインと訓練が必要.
論点5:行政と社協・NPOの連携は深まったか
論点6:災害時における福祉施設の役割について
- 災害関連死で最も多いのが,一般避難所における生活の肉体・精神的疲労であった.こうした困難を少しでも解消する仕組みの一つが福祉避難所である.
- 今後高齢化と共に単身化や地域コミュニティーが脆弱(ぜいじゃく)化する.今後災害によって困窮する高齢者の受け皿として福祉施設の役割が求められる.
論点7:災害にの支援のための財源をどう確保するか
座談会 東日本大震災から10年,被災地の現在
- 復興の物差しは「時間の流れ」「生活の再建実感」「復興の力になるもの」→支援者が押し寄せてそれを裁くために,支援者の土俵に地域住民を無理矢理乗せて支援を行っていた.
- 原発事故のあった相馬市では若者や介護の担い手が不足して,介護保険サービスが十分に機能していない.ヒトが流れてしまって地域のコミュニティも十分ではない.
- 震災から10年経ち,場所によっては「暮らしの定着期」が始まっている.被災者の見守り支援を担っている生活支援相談員は現在も数を減らしながらも活動している.今後,段階的に配置が終了するため,一般施策としてつないでいく必要がある.
- 生活支援相談員がきめ細かく孤立している人に寄り添っているが,今後は地域住民の気づきが必要.生活支援体制整備事業(生活支援コーディネーターが地域に出向き,啓蒙する)を推進する取り組みが必要.
- 被災地に人が集まってくるが,集まる前に,その人たちの周りで孤立していたり,困っている高齢者の存在に気づく必要があるのでは無いか.
- 非常時の取り組み,BCP(事業継続計画)の作成は必要.