2021.2
福祉現場におけるICTの活用
東畠弘子:福祉現場におけるICTの活用と課題
- ICT導入は目的ではなく,手段としてとらえる.
- 2000年にIT基本法が,2013年にはロボット介護機器開発5カ年計画を実施など介護業界でも電子分野の活用は推進されている.2017年には未来投資会議で介護ロボット機器の本格開発を行うことなど,2030年には介護ロボットの導入台数は8千台を目指すとか.2018年には介護報酬の海底において,人員設備基準の要件にICTの位置づけが行われた.2020年には厚労省の介護給付分科会ではICTテクノロジーの活用として,見守りセンサーやインカムなどを夜勤職員に導入した際の加算の要件緩和がされた.実際見守りセンサーを使った場合の排泄介助の時短にはなっている.
- ICTによる効率化の一方で,人員削減の根拠となることで負担が増える事への危惧も発言されている.なにより機器の活用によって利用者の安全や尊厳,QOLを損なうことがないことが前提である.
- 介護職員が本来の業務を遂行するためにICTがある.また機械への偏見も払拭していく必要がある.ICT導入が遅れている理由に予算,そして詳しい職員がいないためであると言われている.
- 利用者の体動の変化と睡眠効率の測定で,夜間の状態がわかり日常のケアに活かすなどICTを使ったケアの見直しなども工夫によってできる.この他,介護記録をパソコン,スマートフォンなどの機器の導入で検索性と情報の保管が一元化できるという取り組みもある.
山口純:デンマークに学ぶ,ICT導入の進め方
- デンマークでは利用者とふれあう業務(温かい手)と記録などの間接業務(冷たい手)という捉え方があり,専門外である冷たい手は人材の有効活用とは言えないという考えの下,削減することを目指される.
- どのくらい記録に時間が割かれているのかなど直接業務以外のことについて計測して可視化すること.そして,ICTを導入することでどのくらい削減できるのかを具体的に提案することが求められる.
- どのような製品を選ぶかは,厚労省の令和元年度 ICT導入支援事業実績報告が参考になるとのこと(探したが,概要しかなかった).
- デンマークでもICT導入の取り組みがされたが,いくつかのプロジェクトは導入に成功したが,その数十倍のプロジェクトは導入に失敗し,利用の取りやめとなっている.失敗に共通していたのが,はじめはICTの製品が良さそうであったが,使い始めてから問題が発覚—製品自体,あるいは職員に関すること,利用者に関すること,経済性に関するものが含まれていた.
- 福祉のテクノロジー評価は,デンマークではVTV,日本では福祉機器評価手法ATAT TOOLがある.
- ICT導入には,小さくはじめ,徐々に広げることが大切で,まず体験利用,次に短期試験利用,長期試験利用を経て仮採用とする.仮採用は一年程度いろいろと使ってみる必要がある.まずは一施設でじっくりと導入を検討し,採用となれば他の施設に講師として派遣するなどで情報の共有を図る.
- 居宅サービス事業所におけるICT機器・ソフトウェア導入に関する手引きが役に立つとのこと.
レポートでは,
- 保育・介護分野における業務効率化(記録や報酬の申請など)特に保育では朝の電話連絡などもメールでやりとりするようになって効率化したとか.ただ外部のシステムとの連携に課題があるとのこと.
- 地域包括ケアシステムの深化としてのICT活用.地域包括支援センターを中心に多職種連携のために横串で情報が共有できるシステムとは何か検討し,導入した話し.
- LINEでのボランティア活動の呼びかけや実施について.
- 難病患者(ALS)にとってのコミュニケーションツールとしてのICTの活用.特にALSでは文字盤での意思の伝達の他,ネットを活用してのチャットなども発達しているとのこと.スマホでもスイッチで文字を興すことが出来るとか.