2020.8-9
福祉現場で安心・安全に働くこととは
座談会:福祉の職場・現場における安心・安全な環境とは
- 労働環境の整備,利用者やその家族からのハラスメント対応,労働事故(腰痛・転倒)など,またメンタルヘルスへの対応について話し合っている.
- 働き方改革において,労働環境に整備などは労働安全衛生法関連の法改正があった.時間外,休日労働が一ヶ月あたり80時間以上あり,疲労の蓄積があり本人の申し出があれば面接指導を行うことになり,事業規模は問わないため少人数規模の事業所でも義務づけられている.
- メンタル不全はパワハラが多い.労働相談でも解雇関連は減り,いじめ・嫌がらせに関する相談が右上がりに伸びている.労働施策総合推進法でパワハラを防止するために必要な措置を講じることが事業主の義務になっており,大企業では2020年,中小企業では2022年からである.
- 介護は感情労働で,これまで利用者本位を優先して,職員の安全と安心にあまり関心が払われてこなかった.
- 介護110番という相談窓口を神奈川県介護福祉士会で開設している.最初は資格の取り方などが相談で寄せられていたが,最近はハラスメントに関する相談が多い.また最近はいろいろと要求が多い利用者などへの対応,その対応に上司が話を聞いてくれないなどの相談も多い.果たして育成ができているのかが疑問.一生懸命教えたと話す上司,全然教わっていないという部下.
- 学生は施設の整備などのハード面,人材育成のシステムがあるか,そして人間関係が良いかどうかなどを基準に就労を選択している.
- 教える人材の育成がまず大事ではないか.翻って考えると,そこが全然進んでいないために離職者が増えているのではないか.福祉の仕事は好きだけど,法人や事務所には愛着心があまりない人も多い.事業所にエンゲージメントすることが大事ではないか.
- 取り組みとしては,生活支援のレベル向上,リスクマネジメント,そして職員を大事にするという組織風土である.
- ハラスメントやメンタルヘルス対応は組織的な対応が必要である.また産業医は小規模の所では任命しなくても良いことになっているが,休職者が出た場合,復職の判断を法人がしないといけないとき,産業医の助言は心強い.面接指導についても上司がつなぐ場合,産業医に相談してみたらと言える.
- 離職の原因はほとんどが人間関係であり,育成できずに余裕のない職場でみんながストレスを抱えているためと思われる.
- 希望と信頼が得られる職場,職員を大切にすれば利用者満足度も高まる.
社会福祉施設で労働災害を防ぐために(垰田和史)
- 労働災害の計画があって,2022年度は第13次労働災害防止計画があり,その重点事項に,災害の件数が増加傾向にあり減少がみられない業種への対応として社会福祉施設が始動対象業種として明示され,介護機器の導入,転倒災害の防止,腰痛の防止などが明記されている.
- 転倒ではコードに引っかかるとか濡れた床で滑るなど,動作の反復による腰痛,車いすへの移乗など.昔は運搬関係での腰痛が多かったがかなり改善されるようになっている.また製造業は組織的にかなりしっかりと労働災害の対策を取ったために減少できた.また製造業は従業員が50名以上いるところが多く,産業医の配置や職場の委員会の設置などが容易にできた.しかし,社会福祉施設は従業員が50枚未満の所が多く,法律に基づく強制力が機能しにくい.また意識も低いため各種の取り組みをしているのは約半数ほどとなっている.しかし,腰痛予防などに対しての意識は高くなっており,今後の取り組みが期待される.
NO MOREハラスメントを明確にする意識と行動(篠崎良勝)
- 利用者からのハラスメントを専門技能で解決していくことを強いる風潮がある.解決できない福祉職は専門職として落第のレッテルを貼られることになる.ましてやスケベじじいと叫んだり警察に通報してはいけないのである.
- しかし,警察に通報することは利用者を責め立てることではなく,加害者である利用者側に自分のした行為の責任を自覚してもらうことである.それが利用者側のためでもあり,福祉職を守ることでもある.しかし,福祉職は誠実義務(利用者側の立場に理解を示し,利用者への支援を行うこと)という職業倫理で抑制させてしまっていることは否定できない.
- 自分に非があるのでは無いかとか自己を否定したり必要以上に反省して事無かれとする場合があるが,そのハラスメント行為は援助者の心身に影を落とす.職場,管理職としては,そうしたハラスメントを受けた園舎への共感や言葉かけをすることでいったんは誠実義務から解放する必要がある.
- セカンドハラスメントとは,利用者からのハラスメントを上司などに相談した際,被害者が相談相手から責められたり(あなたの対応が悪いのでは…など),自尊心を傷つけられ自信を失わされるという二次被害を指す.
- ハラスメント事例を困難事例とゆがめ,あたかも美談であるかのように世間に広報する管理職には辟易とする.このような管理職は自分がセカンドハラスメントをしているとはまったく気づかず,自分はハラスメント対応ができていると思い違いをしていることが少なくない.
- ハラスメント被害者が管理職に相談すると言うことは,つらい体験を思い出し,言葉にしたくないことを言葉にすることになる.いくら相談しやすい職場環境作りに取り組んだとしても相談できない職員は必ずいると言うことを忘れてはいけない.だからこそ職員を気にかける職場の構築を目指してほしい.
参考資料
パワーハラスメント防止対策が義務化されて
介護職員が抱える施設内暴力の実態調査及び考察