2020.3
子どもの権利をいかに守るか—社会的養護のこれから
(座談会)社会的養護関係者に何が求められるか
- 2016年児童福祉法の改正により,社会的養護において家庭的養護を目指す方向性が強化された.具体的には,2017年[新しい社会的養護ビジョン]は,まず里親やファミリーホームで,そこでの養護が適当ではないなら乳児院や児童養護施設へと.しかも施設も家庭に近い環境(小規模化,地域分散化,高機能化)で…と注文がつく.また里親の数は少なく国連からもつつかれて里親の数を増やすように具体的な数値を元に全県で推進計画が作られることになっている.
- 乳児院ではこの10年で,一時保護委託児数が措置児童数を上回り増加傾向にある.また未成熟児を預かることも珍しくない.それでも半数は家庭に帰り,30%は児童養護施設へ.最近は里親も増えてきている.
- 児童養護も児相もビジョンの概論は賛成だが,現場に即していないのではないか.里親の人材育成と量の拡大は謳われているが,里親の努力に頼るだけではなく国として協力に里親を支援していく必要がある.具体的には,家族背景が複雑で心に深い傷を負った思春期前後の小学生や中学生を受け入れてきた専門家のいる児童養護施設でも養育が難しい子を里親がケアすることに対する懸念.
- 養子縁組を希望する里親は多いが,養育里親を希望する人はごく少数である.そのためマッチングが非常に難しい.
- 地域分散などは総論は良いが,そのためにベテランの職員があちこちに分散するため,人員配置的にも本園と分園のチーム養育でも問題がある.
- その他,地域化するためにセンターを立ち上げてアウトリーチなども行っている所もある.
- フォスタリングという新しいことが出ている.どうも里親を支援する言葉のようで,里親のリクルート、研修、支援、ケアを総称するよう.3歳未満の乳幼児は、およそ5年以内に里親委託率75%を達成する.3歳~就学前の子どもは,およそ7年以内に里親委託率75%を達成する.学童期以降の子どもは、およそ10年以内に里親委託率50%を達成するとか.現時点での里親委託率は20%弱…
- フォスタリング機能は乳児院や児童養護施設が行うべきで,児相はその余裕はない.しかし,里親委託や委託の解除は児相の仕事である.
- 子どもの立場では,よくしてくれる大人や里親にノーと言えないという遠慮がある.自分の気持ちを伝えることができる環境が必要である.また,言葉の背後にある気持ちを推測することも大事.また,社会的養護が必要な子どもはつらい思いをしているが,親も苦しんでいる.ダメ親と決めつけて切り捨てるのが良いとは言えない.親も子どもも一緒にケアしていくことが社会的養護の役割である.
- 子どもの最善の利益を守るためには,それぞれの機関のことをよく知らないと連携という言葉だけでは協力体制にはつながらない.無知が一番最善の利益を損なう事である.
- 里親もまた地域で支える体制が必要である.一般の家庭も含めて,子どもの成長に大事なのは,安心,安全,安定だと思う.その三つをバランス良く与えることができる場であれば,一時的にどれかが十分ではない状況に陥っても最後の拠り所として子どもたちの還る場所となり得る.しかし,虐待を受けた子どもの多くは,その全部が崩れ,還る場所を失っている.私は社会的養護はこの三つを確保する場所であるべきだと思っている.
以下,論点として
- 推進計画を作るにはどのような視点であるべきか.
- 乳幼児総合支援センターの設立について
- フォスタリングを行う上での課題
- 母子生活支援施設における家庭養育機能の活用
- 児童養護施設の地域分散化について
- 弁護士による子どもの意思決定支援について
- 子ども自身の声をどう捉えるのかについてであった.
その他
地域共生社会を推進するための最終とりまとめの紹介がある.