2020.12
摂食嚥下から考える食の意義とは
(対談)摂食嚥下支援の役割とは
- 摂食嚥下障害とは口腔機能の低下によって飲み込みなどが困難になること.食べる機能は比較的最後まで守られる.逆に言うと,摂食嚥下障害が起きたときはもう,人生の最終段階である場合が多い.
- 昔,歯があれば接触できると言うことで8020運動が生まれたが,実は歯があっても口が動かなければ食べられないことに気づいた.また摂食嚥下を特に話題にしたのが胃ろう造設の問題とリンクしていた.
- 脳梗塞などで胃ろうを入れた方が根気よくリハビリを続けた結果,食べられるようになり,胃ろうが外れるケースを見かけることがある.また何でもかんでも口から食べることが正しいとは言えず,口から食べられる状態ではないのにムリに食べているケースもある.リハビリ,食形態,食べ方,姿勢などあらゆる判断材料が加味される必要がある.それでも「被介護者が食べることは支える人を支える」とのこと.
- 摂食嚥下障害への支援は,低栄養,脱水,窒息,誤嚥,それから食べる意欲の喪失を防ぐことになり,また誤嚥性肺炎の予防にもなる.施設入所の場合は職員と家族の話し合いで取り組むことができるが,老老介護やひとり暮らしの場合は難しい.患者本人の能力ではなく,周囲の人の能力や思いなどの環境因子が大きく影響する.
- 地域の医療機関との連携や介護職を扱っている業者のマップづくりや食支援サポーターの養成などの紹介.
- 結局最終的には食べることができなくなっていく.その前にどのくらいがんばれたのか.専門職,家族共にその連携がとても大切である.施設としては,食べることをセールスポイントとする所が合ってもいいと思う.福祉職は医療職に遠慮することがあるけれど,気づいたことはどんどんと言ってほしいとのこと.
(インタビュー)人が生きていく上で食べることの意味
- 在宅医療を先駆的に行っている新田国夫先生へのインタビュー.
- 当時は脳卒中などで口から食事が取れなくなると経管栄養の点滴だけで生かされる,あるいは中心静脈栄養(IVH)を留置され苦しみながらなくなるのがスタンダードだった.いろいろな症例と付き合う中で,輸液の投与量が重要であることに気づいたとのこと.
- 胃ろうもやればやりっぱなしであったが,試しに食べさせてみるとパクパク食べることがあり,人間の食べる機能について何も分かっていないと思ったとのこと.
- 摂食嚥下昨日の評価法を確立するために様々な専門職と連携をしたこと.そして評価表を作った後にそれを活かしてリハビリをする人の養成もしていった.
- 現在は,脳卒中でもリハビリ次第では口から食べられるようになるし,胃ろうも一時的にして口から食べられるようにすることもできてきた.しかし,2014年の診療報酬改定で胃ろう造設術の点数が低くなり,IVHの設置に戻ってしまった.また食べることよりもいきなり看取りの話になっていたりとちぐはぐになっている.
- オーラルフレイルとは,加齢による衰えの一つ,嚥下機能の低下,滑舌が悪なるなど口に関する機能の低下.→その予防のために歯科医が口のストレッチなど取り組んでいる.
- 最後まで食べるには,本人にも家族にも医師にも覚悟は必要である.食べることだけではないが,当事者全員の納得があって初めて,その人にとって良い死が在る.