2020.11
コロナ禍における福祉の現状と対応
新型コロナウィルスと福祉サービス(武居敏)
- これまで感染症予防をしてきた福祉施設ではあるが,この「新型」であり,治療も確立されていない中で,どの程度行うべきなのか.何が正解かまさに手探りの状態であった.もっとも参考になったのは,不幸にして感染者が出てしまった事業所の貴重な経験である.
- 今後行うべきは,感染症対策の基本(ゾーニング,換気の方法など)を護りながら,その上で,どこまで利用者の日常生活上の安全と快適性の調和を図ることである.
- コロナウィルスの対応などで医療機関の減収は大きく報道されているが,特養や在宅系の介護サービス事業所の減収も深刻である.特に通所では3分の2の事業所が30%以上減収したとか.
- またコロナ対策によるストレス,また介護職は在宅勤務ができないので,その職員自身の安全や家族の安全など.また離職者の増加もある.
- さらに保育所での感染者の発生が最も多い福祉事業所である.人材派遣など行政で連携して行っているが,やはり適時の検査や優先的な予防接種が望まれている.
- また感染が発生した事業所への苦情の電話などからその従事者や家族に対する差別的な扱いなど風評被害も大きな問題になっている.また事業所の名前を明かさずに公表したことによって,感染者を出していない施設にも非難の電話が来たこともあるとのこと.事業所としては,当事者とその関係者に注意喚起を促すことが最優先であり,それ以外の地域住民やメディアへの情報提供は判断が分かれる.
- 新型コロナの問題は国難である.財政もこの対策で国債発行がされその赤字は非常に大きい.またコロナの被害は社会的弱者にも大きな影響を及ぼしている.市区町村の社協による生活福祉資金貸付事業の対象を拡大し,5月から8月ですでに近年の一年間の貸し付け実績を超えている.このことから貧困層が拡大し,地域経済の落ち込みや体力のない中小企業は廃業せざるを得ないところも出てきている.
コロナ禍におけるリスクコミュニケーションと偏見・差別(武藤香織)
- コロナウィルスは,感染者は多くの代謝に感染させないが,一定の条件を満たした環境では飛沫や接触を通じて感染する.症状は無症状や軽症も多いが,高齢者は基礎疾患がある場合は重症化しやすい.
- この論者は偏見や差別に対してモニタリングをする立場の人だったので,メディアへ専門職の人がどう情報を発信したのか.メディアはどう受け取ったのか.そしてそれを受けた市民はどう思ったのかをまとめている.
- 福祉関係者から差別などをしないようにお願いすることは少なかったが,医療関係者者から要望書が出たこと.またメディアとの対話を通じて,エッセンシャルワーカーへ配慮した報道が増加して,施設内感染への報道の論調も穏やかになっていった.
- 偏見と差別とプライバシーに関するワーキンググループの発足,不評被害などのコミュニケーション対応支援サポート窓口を開設している.
- 論者の懸念は,利用者の面会禁止が長期化していることである.ひとたび施設内感染が起きた場合の社会からの批判への恐怖から,再度,門戸を開くことが難しいという意見を聞く.しかし,利用者の生活の質を向上させるためには,近しい人々との交流は不可欠である.施設内感染を発見し対応することを目指すと同時に,偏見や差別に対して現場から力強く反論してほしいとのこと.