2019.7
新時代の福祉を支える実践
座談会
- 日本社会では世界に類をみないスピードで高齢化になっている.2025年の団塊世代が75歳以上になり,2040年には団塊ジュニアが65歳以上になる.その一方で現役世代の数が急減.社会全体のセーフティーネット機能も脆弱になる.そのため,これまでの福祉の枠組みを超えた発想や従来の延長線上には無い新たな取り組みが求められる.
- 宮城の震災復興の資金を元手に,ワーカーズコープという組織を立ち上げて,共生型福祉の担い手づくりと,南三陸町からの被災求職者や生活困窮者に対する就労支援を行っている.具体的には,廃園になった幼稚園を活用して高齢者デイサービスや,障害児放課後デイ,就労支援B型など.また行政の依頼を受けてゴミ屋敷の片付け,介護保険でカバーできない高齢者の草むしり,人手の足りない中小企業の手伝い…など.
- 千葉(福祉楽団)の方で養豚を営んでいる就労支援事業所では,福祉とか障害者と行ったことをあまり表に出さず市場に出している.また地元の食材や電力を使うことで地元にお金が周る仕組みを徹底している.また林業についても,自伐型林業を行い,間伐を行って燃料の確保や薪を作っているとか.また,UR団地を活用して,子どもだけでは無く孤立している高齢者や大人も一緒にご飯が食べられる食堂を開設したりしている.
- 秋田の鹿角市(愛生会)での高齢者,児童,障害といった枠にはまらない日々の困難に悩む住民からのニーズに応えたいという,対象を限定しないユニバーサルサービス型事業について.特養の入所者に出している健康的な食事を弁当にして,シングルマザーなど仕事が多忙で作れない人に提供.また特養の洗濯機能を就労支援B型として洗濯代行サービスにして地域に開放するなど.ショートステイも介護保険適用外でも地域住民に開放している.老人福祉センターでの温泉の開放など,福祉と意識しないで使っている人たちがたくさんいる.
- ワーカーズコープは,ひきこもりととか高校中退など信用されない属性だったし,最初は地域に貢献と言うよりもワーカーズコープに仕事があるからという理由であった.それでも草むしりなど小さな事から住民に感謝されたり,一緒に働くことで心を通わせるようになった.
- 昔は,福祉の支援される側とする側がハッキリと分かれていたが,こうした取り組みから,される側がする側になったりしている.あるいはする側がされる側になっている.熱意,おもいやり,個性を尊重など,福祉とはこういうモノだという価値観があるが,それが時代と主にそぐわない場合もあるし,状況に応じて変わっていく必要がある.
- その一方で,社会福祉法人は理不尽な理由でつらい思いをしている人がいない地域を作っていく責任がある.制度化するように働きかけるのでは無く,あまり制度化しない方が法律の行間に自由を見いだし,創意工夫のある実践が可能となる.
- また,最近は福祉分野の時間軸も短くなっている.しかし,長期中期的な視点で事業の展開を俯瞰し,それを明日からの行動に落とし込む視座も大切であると思う.このままではいけないから何とかしなければ,というよりも,そこに楽しさを見いだして自然体で取り組むことで,新しい福祉の概念が作られていく.
その他,レポートでは,加害者家族のサポートをしているNPO(World Open Heart),ホームレス支援をしている団体(Home Door),インターネット(SNS)で気軽に子どもの生きづらさを相談できるようにしたNPO(3Keys),ICTの実践を取り入れた施設の報告となっている.