2018.6
子どもの育ちと教育・福祉
鼎談(ていだん)教育と福祉の現場の連携をいかに進めるか
- 教育と福祉は同じようなものだと思っていたけれど,違う方向を向いている.だから,虐待の予防などもうまく機能していないのではないか.例えばスクールソーシャルワーカーと教員の連携とか…うまくいっていないケースもある.学校現場では,不登校,いじめ,虐待が非常に増えている.
- 学校教員のカリキュラムには,社会的養護に関するカリキュラムはない.教員になって何年経っても児童養護施設を知らない人は結構いる.また学校教員は一年スパンで考えるが福祉は,これまでの生育歴で考えるので,話し合っても課題の捉え方が違う.教育は学ばせることが基本だが,福祉は人を育てることであり視点の相違である.
- 主語が違う.学校関係者は学校を,福祉は人を主語にして語る.それぞれの立場で話し合っても主語が違えばまったく意味が違ったものになり理解は進まない.
- 学校としては,その子の課題を俯瞰できるシートを元にチームで話し合うこと.そして,その課題をどのように連携するのか,社会資源や連携先の情報が分かりやすい形で視覚化されることが大事である(保育の便利帳みたいなもの).またそうした資源について,スクールソーシャルワーカーが率先してほしいが,週一回の活動だったり,嘱託職員でしかなかったりとあまり活躍していないのが現状である.
- ある学校では年間2000人近くの連絡無しの欠席があり,校長先生が家庭訪問をしているという.このように教師は丸抱えをするか丸投げをするかのどちらかになっている.他の機関につなげてもそこで関係を切るのではなく,関わる「のりしろ」を残しておくことが必要である.
- 鼎談(ていだん)の一人である,山野則子先生は,スクールソーシャルワーカーのことをずいぶんと研究している人.また,虐待も含めて精力的に論文を書いている.この鼎談(ていだん)でも盛んにコラボレーションを力説している(あとスクリーニングシートの活用も).
- スクールソーシャルワーカーはもっと社協の社会資源とかも利用しながら幅広く,子どもの虐待の背景にある生活困窮へのアプローチなども必要であると思う.
- 山口では,小・中学校と地域住民が力を合わせて学校運営に取り組む仕組みである,コミュニティスクールが充実している.
- 教師は,次につないでいくのが仕事なんだという認識が必要で,逆に,仕事では無いと思っているから遠慮をしている.役割がハッキリしている.あるいはどこにつなげばいいというのが明確であれば,その全体像が見えることでそれぞれが役割を担ってくれる.自分の役割がわかり,個々の工夫を知ることで自然発生的にいろいろなことが生まれてくる.そういう風に地域が元気になれば気になる子が支援につながる率がとても高くなる.
教育と福祉をどうつなぐか(野尻紀恵)
- 教育福祉という分野からスクールソーシャルワーカーの役割について論じている.
- 高度成長期から現代の家族・労働・教育の関係について素描しているが割愛する.
- 経済的に困窮することで,子どもの学習面とか学校への不適応などいろいろと発達において支障が出ることを教育福祉としている.教育の中に潜在する福祉問題を考えることがあまりコレまで顧みられなかったとのこと.教育は生活と地続きになっていて切り分けられないとする発想.それを具現化するのが,スクールソーシャルワーカーであると.
- 2016年に成立した「子どもの貧困対策推進大綱」:PDFでは,学校をプラットフォームとするとなっている.〜マクロの実践:教育政策へのソーシャルワーク
- メゾ実践としては,子どもを中心とした学校の基盤づくりや地域と学校をつなぐ取り組みが紹介されている.
- ミクロ実践は,教育者は学校で教えながら家庭のこととかよく知っているので,スクールソーシャルワーカーと連携していくこと.エンパワメントアプローチをすること.