2017.7
子どもの権利を守る
インタビュー 子どもの権利とは何か(山崎美貴子)
2017年に児童福祉法が改正され,児童の権利に関する条約の精神にのっとりという一文が第一条に明記されたという意味では画期的な改正だったとのこと.権利条約では生きる権利,育つ権利,守られる権利,参加する権利という四つの柱がある.
日本の状況について,6人に1人が貧困と言われ,相対的貧困率も16%と高い傾向にある.また虐待件数も年々増えている.制度が整備されてきたにもかかわらずその制度につながってこないことが大きな課題となっている.現在は生き方が多様化しており,モデルとなる家族世帯が描きにくい.そのため対象から漏れる人々が増えてきている.そうした漏れた人々が孤立化している.
今回の改正は大改正と言って良く,要点としては,
- 理念が明確化された
- 児童虐待の発生予防
- 児童虐待発生時の迅速で的確な対応
- 被虐待児童への自立支援である.
また保護者も一緒にみていこうとする理念が大きく取り上げられ,児童の保護者も支援しなければならないと義務として明記された.
ファミリーソーシャルワーカーを養護施設では取り入れているが,今後は保育所などでも設置が望まれるのではないか.
今回の児童福祉法改正では,母子保健法や子ども・子育て支援法,児童虐待防止法など制度を連動させている気配がするが,法律だけでは無くシステムとして必要な人たちに切れ目無い支援をしていってほしいと思う.そのためにはコーディネーターの養成は急務だと思う.
児童福祉法改正のポイントと課題(才村純)
法改正のいきさつとか閣議決定の流れは省略.
- 責任の所在について,国,都道府県,市町村がバラバラであったが明確になった.特に市町村の相談窓口が第一義的窓口,都道府県の児相が後方支援などとなり,市町村の役割が重要視されるようになる.
- 児童の権利条約も基づき,子どもの権利保障が前面に出た.
- 児童虐待の発生予防は,通報義務の強化,子育て世代包括支援センターの設置を務めることとなる.
- 施設の小規模化,里親やファミリーホームへの重点的な施策へ移行する.過程適業後の推進に重点が置かれ,法的根拠を与えられた.
- 児童相談所の体制強化などでは,児童心理司,意志,保健師への指導教育を担当する児童福祉司(スーパーバイザー),弁護士を置くこととされるとともに配置基準については,虐待件数などを勘案して定めることになる.特別区には児童相談所を置くことができるとされた.
- 親子関係再構築の支援として,分離後,家庭復帰してまもなく虐待が行われることを鑑みて,児相が地域の関係機関と連携し,定期的な児童の安全確認,保護者への相談支援を実施されることになる.
- 要保護児童対策地域協議会について,専門職の配置が義務づけられる.
課題としては児相には介入機能とその後の支援機能と相矛盾する機能が併存している.このため介入後の支援を考慮して立ち入り調査や職権保護などの介入をちゅうちょしたりことが危惧される.分離するべきであるが,では支援はどこが担うのかが法的に位置づけられていない.
戦後の社会的養護と子どもの権利の系譜(土屋敦)
児童福祉法制定から70年がたって子どもの養護に関する認識が大きく変わったことについて,
- 戦災孤児収容から始まった戦後の社会的養護
- 戦災孤児は当時12万人を超えていたとされる.この孤児たちの収容がきんきつの課題であった.
- 高度成長期における家族問題の激変と社会的養護の再編
- 児童憲章や児童権利宣言などを経て,一般家庭の児童問題に目を向け始めたのが高度成長期であった.この頃には戦災孤児は社会に出てほぼ退所している.人口流出や貧困,核家族化などによる社会状況の変化で,養護すべき子どもの質が変化している.
- 子どもの権利条約と虐待増加時代の社会的養護
- コインロッカー・ベイビーズなどの子捨て事件などが社会問題になっていた.80年代にはベビーホテル事件,90年代には虐待がクローズアップされる.
- その間,国連では国際児童年とすることが決議,89年には子どもの権利条約が国連総会で採択され,94年に日本も批准する.