2015.5
高齢者の住まい
インタビュー 住まい−それは生活の基礎
- 2025年団塊の世代が後期高齢者になり,都市部ではかなりそんな孤立高齢者が増えることが予想される.その時,施設や居住系や住宅系サービスもまだまだ不足している.また住み替えも考慮していかないと行けない.
- これまで持ち家政策を重視し,高齢者の9割は持ち家に住んでいる.しかし,人生90年時代になると持ち家に住んでいても介護や生活支援の必要性から転居が必要な場合がある.そのため持ち家で最後まで暮らし続けるという幻想は成立しなくなりつつある.
- 要介護度が上がってから特養に入所するケースが典型的であったが,雪寄せが大変とか買いものが大変といった生活支援の問題でマンションとかサ高住に住み替えるケースが増えてもいる.
- オランダのように住宅を社会共通資本として捉えて整備することで,誰もが住居を手に入れやすくしている.しかし,日本では家を商品として取り上げ,家を買えない人にのみ公営住宅を提供し,かつ生活保護世帯には手厚くすると言う普遍的な家賃補助制度は発展してこなかった.
- 国交省と厚労省の住宅関係の史的展開について概説している.中でも低所得者向けの養護老人ホームや軽費老人ホームは,公営住宅や住宅扶助のような住宅を手当てするだけでは暮らしが成り立たないそういう人が確実に増えている.
- サ高住の定義は,1)賃貸契約に基づくバリアフリー住宅であること.2)安否確認や生活相談などの基本サービスを附帯していること.3)ほとんどの住宅で食事サービスを附帯していること.4)介護と医療は建物の内外の事業所から居宅サービスとして届けられることとなっている.日本においては,オールインパッケージが多いが,本来であれば,4)が分離していることで透明性とか選択性が担保されると言える.
- 地域包括ケアシステムにおいては,拠点作りとかいろいろと住宅を整備したりとやらないといけないことがたくさんある.また高齢者だけ集まっていいわけではなく,さまざまな世代が混在して活発な町づくりが求められると.
住み慣れた地域で暮らし続ける(野口定久)
- 高齢者とくに,マンションなどでは管理ができなくてスラム化が進行している.また,リバースモーゲージは現実には応用しがたい状況になっている.都市部では孤立している単身世帯が多く,所得が低いが故にサ高住に住み替えもできない状況の人が多い.
- 地域福祉計画には,普遍的な目的があり,それが安全,安心,快適である.安全とは減災のシステム,安心とは地域包括ケアシステムなどである.快適とはソーシャルキャピタルを指し,コミュニティのネットワークを強め,精神的な絆を強めるようなことを意味する.
- その意味で「住まい」には,安心,安全,快適が詰まっていないと行けない.
- 居住福祉社会とは,単に地域性とか,共同関心性とか外存的に規定する物では無く,地域社会の中で阻害されている人々を受け入れる価値と社会的態度から成り立っている.
低所得者の住まい(道中隆)
- 格差社会から生じる貧困は,住まいという環境の脆弱(ぜいじゃく)性に最も端的に表れることから,まず,低所得者の住まいをどのように考えるかが大事である.その意味で,住まいは支援を要する人に対する福祉サービス支援の基点となる.
- いったん仕事を失うと同時に住居も失うとニーズが潜在化し,公的支援は届きにくくなる.生活困窮者自立支援法では,家賃相当の住宅確保給付金を支給するなど,これまでになかったいわゆる中間セーフティネットとして構築された.
- ホームレスはもとより,精神科病院で長期入院し,帰来先のない高齢者や生活保護受給者は住居という受け皿がないため社会的入院を余儀なくされている.またただ居住するだけではなく,健康,生活,労働,社会関係の基点となっており,家は人権の要と言われる.
- 非正規雇用が37%と急増し,働けども食べられないワーキングプアが増大して,貧困や格差が拡大した.住まいは,生活上の必要品目に関わるもので,生活の最後の砦であり,それを相対値で決めてはならない.
- 家賃の実勢価格に見合わない劣悪な居住環境であるにも関わらず,低所得者,高齢者等の社会的弱者を対象に高額な家賃で利益を得る悪質な貧困ビジネスに対応するためには,最低居住面積に基づく適正な家賃設定が必要となる.
孤独死を考える(結城康博)
- 孤立死対策では,「松戸市常盤平団地」が有名らしい.
- 見守り活動は主に65歳以上であるが,むしろ65歳以下の単身男性世帯においての孤独死が問題となっている.特に定職に付いていないとか…7割は男性で,そのうち2〜3割は65歳以下,かつ50代が多いという.高齢者も同様であり,三世代世帯はむしろ少数である.
- 結婚したことがない人や離婚後ひとりで暮らしている人が増加している.熟年離婚もほぼ横ばいであり,高齢者のひとり暮らしも死別だけが要因ではなくなっている.
- 孤立死について,自己責任とか自分のことだからとやかく言われたくないという人がいる.しかし,自分が亡くなった後の,遺体処理や後始末まで責任を持つべきであるという考えに立てば,あまりに無責任なことである.また第一発見者となる人の心理的なショックは計り知れない.
急増する空き家と政策対応(平山洋介)
- 空き家は住宅市場の円滑な成立のためには不可欠である.空き家があって初めて住み替えが可能になるからである.しかし,空き家の過剰は資源労使を意味する.放置空き家は,防犯,防災,景観に関連する外部不経済を発生させる.
- 少子高齢化が空き家を生んでいる.高齢者が亡くなったり施設に入ると空き家できる.そこにたくさん子どもがいれば誰かが使うかも知れないけれど,少子化により使う人がいないというループ.
- もはや新規建設の抑制とか,ストック重視による市場形成で空き家増加の歯止めをかける必要があるが,これまで景気回復に住宅促進を行ってきた伝統から,なかなか抑制とかストック中とはならなく,消費の対象としての住まいとなっている.
- 住宅ストックのリフォームと流通規模は,拡大し合う関係を持つ.しかし,中古流通のシステムが未発達であり,住宅売却と移転を予定せず,住宅修復改善のための投資を選ばない.もし発達していれば,売却を見越したリフォームが行われることで活性化する.高齢者が大きな家から小さな家に住み替えることを予定した,リフォームやストック住宅の活用は必要である.
- 放置空き家を除去し,同時に使用可能な空き家の有効利用を進めることが課題になる.2014年に創設された空き家対策特措法ができ,市町村は空き家など対策計画を策定することになった.また著しく放置されて不適切なものには,特定空き家などと定義され,その所有者などに自治体は除去,修繕などの措置を執るように助言,指導,勧告,命令し,さらに所有者の命令不履行または所有者不明の場合は,行政代執行を実施できるとされた.
- 空き家が過剰であっても,住まい確保に苦労する人にとって住宅不足は依然として解消していない.地方圏では,空き家バンクを作る自治体が増えている.移住者を受け入れる素地になっている.
- 結構,いろいろと政策があるのがよく分かる内容になっている.