2015.2
障害児への支援を考える
これからの障害児支援(柏女霊峰)
- 成人との整合化が重視された改革により,子ども一般施策との融合が求められるものの狭義の子ども家庭福祉との乖離(かいり)が続いている.
- 2012年の児童福祉法改正により,児童発達支援センター,保育所など訪問支援,放課後デイサービス,障害児に固有のサービス利用には障害児相談支援事業所によるケアプランの作成が前置される.利用者支援事業所と相談支援事業の連携強化が必要.
- その他,いろいろとごちゃごちゃ書いているけれど,児童福祉と障害者総合支援法と両輪で動いていて,障害児固有の政策としては先に見る障害児相談支援事業とか障害児放課後ディサービスとかであり,あと保育所とでも受け入れましょうとかのインクルーシブな考えを推進するものである.
子どもは「小さな障害者」ではない(中村尚子)
- 「今後の障害児支援のあり方」へのコメント.
- 地域療育のネットワークの構築のために,近いところで療育が受けるようにするため児童発達支援センターを設置すること.通園施設の拡充で通える範囲を近くすること.しかし,国の政策は提案されず,地域療育のための社会資源の整備は自治体に委ねられ,かなり格差を生むことになる.
- 実際に通園施設は不足しており偏在しており,傷害保険福祉圏域に全くない地域が存在している.
- 療育のアクセスとして,障害児支援利用計画案を立てることが必要になった.しかし成人とは違い,まだ障害が確定していない児童の場合,親の悩みと寄り添い遊びや集団での活動の中で子どもの様子をじっくりと観察すると言ったことが必要である.利用計画作成は,障害受容が曖昧な幼児期には利用のためのハードルが高いなどの課題がある.成人と混ぜるのは無理があるのでは無いか.
- 一般施策を利用することが推奨され,保育所や幼稚園に行きながら専門家による支援を受けるシステムを新しく作った.児童発達支援センターなどが後方支援と呼んで一層推奨している.それが保育所など訪問支援事業である.しかし,この事業を受けるには保護者の申請による支給決定が必要であり使い勝手が良くないことが課題になっている.
放課後などデイサービスの現状と課題(原田徹)
地域により格差があり,放課後は福祉の問題,放課後は教育の問題と責任の所在が吹くと教育の間でキャッチボールされ,窓口すら示さないケースも多く見られた.
放課後デイはもともと障害児学童などを行っていた事業者のほか,介護事業やまったく初めて参入する事業所も多い.また,一つだけの事業所だけを利用している子どもは10%程度,他は複数の事業所を利用.親や事業所の都合に左右されているのではないか.また偏在と不足がある.
職員配置は10対2とかなり少なく,対応し切れていないことが課題.定員数は10人程度であるが増やそうとすると報酬単価が下がるという制度上の問題点があり.低リスク,高リターンとか障害の知識は必要ないとする放課後デイの企業セミナーが全国的に開催しているという…子どもにニーズに基づくことなのか一考を要する.
制度的には学校行事やインフルエンザによる予防などで学級閉鎖などがあるなどデイ利用に影響が出て,報酬収入は減額になるなど経営に不安定要素がある.自治体にも温度差があり,外遊び禁止とか日数制限とかある.送迎加算も同じスタッフが歩いて送ると認められなかったり,50キロ先の利用者も同じ送迎加算だったりする.10対2の職員配置基準では,職員が集まらないとか専門的知識を持った人が来ないなどの問題もある.
子どもの社会性は,放課後に育つ.そのためには充実が求められる.
インタビュー 障害児支援のあり方を語る
- 1981年の国際障害者年を境に障害者への見方ががらりと変わった.
- それは障害者の身体の中に障害があるから,社会の中に障害があると考えられ,バリアフリーなどが推進された.そのためリハビリ至上主義(身体を治してから社会に出なさい)はだいぶ軽減されていくことになる.
- 身体障害は見える障害であるが,聴覚障害や精神障害などは見えにくい障害であり,周りと同じように扱われるという苦労がある.
- 子どもは親だけでは無く,たくさんの大人たちに頼ってようやく育っていく.
- 今の福祉はメニューは増えたけれど,全てが縦割りになっていて,どこかに抱え込まれてしまって閉塞(へいそく)感があるように感じる.風通しの良さと連携が重要.
- 障害の定義は時代の影響を受ける.昔は歩き方が変とか,手先が不器用という診断で脳性マヒが増えた.現在は,集団生活になじめない,言うことを聞かないことが問題視されている.その背景には産業構造が製造業からサービスに変わり,社会が求める人間像も変わったためである.かつての脳性マヒと同じように,子どもの中に障害があると思いすぎているのではないか.多動な子どもは経済的に困窮している家庭に多い.それは切羽詰まった生活をしているためじっとすることが戸ができずにいる.これは子どもの問題では無く,社会的な経済的支援のなさや貧困問題である.
- 連携は,目の前のケースが連携のハブになってくれる.だからどれだけ多くのケースを共同で見られるかが重要である.
- 障害者は健常者よりも依存する手段や人が少ない.自立を目指すあまり依存する先を減らすことは,なけなしの依存先まで奪ってしまいかねない.