2013.1
社会保障と財源
インタビュー 図表から読み解くこれからの社会保障と財源
- 社会保障は生活の安定を目的としたセーフティネットである.保険料を払うことで維持されることから雇用に力点を置いた仕組み作りが為された.そのため社会保障は退職後の生活保障という意味合いが強くなった.
- 1973年は福祉元年と言われた年で,高齢者の医療費無料化が実施され,年金の水準も大幅に引き上げられ,そのことで社会保障費の給付がグッと増えたことになる.そして退職後の生活の安定という意味合いの強かった社会保障費の給付は天井知らずとなった.
- 雇用に関しては非正規雇用の増大などの揺らぎで納付が減少して行っている.そして,雇用や子育て支援なども本来社会保障のカテゴリーであるが,年金給付に大きく食われていて十分な対策がとれない状況になっている.
- 保険料納付は逆進性が高く雇用が不安定化してくると納付が難しい人が増えていくことになる.
- 社会保障は,貯金箱機能とロビンフット機能があり,貯金箱は負担した分なにか困ったときは取り出せるようにすること.ロビンフットは富裕層が多く納めて低所得者へと再分配する機能である.どちらかでは無く,偏ってはいけないと言うこと.
- また所得の再分配機能には,困窮者だけに限定する選別主義と限定しない普遍主義がある.日本は65歳向けの支出が現役世代の支出よりも7倍も高い.失業,子育て,病気などに困ったときに年齢にかかわらず給付するものであるという制度の見直しが必要である.
- 日本は税に対する不信は強いが,保険料の負担については何かあったときに困るからと言う理由で保険料を上げてもそんなに不信に思われない所がある.
- 社会保障費は基本的に税金,保険料,そして自己負担であるが,中には赤字国債を財源に充てている.国債の発行は国の借金であり,歳入が減ると将来的に次世代に借金を背負わせることになる.よって消費税を上げて財源を確保していくことが求められるが,財政の帳尻を合わせることばかり考えていては,将来の現役世代は税を納める意欲がなくなってしまう.現役世代が今以上に息も絶え絶えになって税金も保険料も払えなくなってしまったら社会保障どころか日本が破綻してしまう.
- 少子高齢化,労働の流動化,未婚率の上昇や年金の未納の問題,貯蓄の少なく,単独高齢者予備軍なとなる若者が増えている.特に非正規雇用が全体の35%までに増えている.しかし,年収200万未満の階層は,福祉の負担のための負担増は認めていない.つまり福祉の充実を望むはずの人たちがそれを望んでいない.結局,現行の社会保障に対する信頼が無いと言うことではないか.
- 雇用と子育て支援をしっかりやっていけば経済が回り低所得者対策に回すお金を減らせる可能性がある.考えようによっては,そこまで考えて支援しないといけないほど,雇用関係はまずい状況にあると考えられる.
- 女性の社会参加や就労がすすめば雇用関係や経済環境はかなり改善される.子育てや介護で離職すること無く,介護職の確保,介護人材の離職を防ぐような取り組みが求められる.
社会保障費支出の国際比較(勝又幸子)
- 日本は他の国と比べて高齢者への給付は決して多い物では無い.
- 諸外国と比べ,日本は年金支出が大きく,失業や住宅などへの支出は低い.
- 家族への支出はアメリカと同じくらい低く,他の先進国は比較して充実している.
- 淡々と統計について述べているが,私見もかなり入り込み結局何が言いたいのかよく分からない内容となっている.
これからの社会保障のゆくえ(山崎泰彦)
社会保障・税一体改革法案が可決されている.問題意識の高さや緊急性を考えると,三党合意は評価できるが,関連法案がまだまだ山積みであり具体的な実施には至っていない.社会保障改革では,短時間労働者の健康保険・厚生年金の適用拡大が限定され,高所得者の年金給付の見直し,マクロ経済スライドの検討,標準報酬の引き上げの検討,年金支給開始年齢の引き上げの検討など,給付の重点化,効率化における課題とされている事項が軒並み先送り.また消費税増税分のウチ4%は借金の返済で,中身へは1%に過ぎない.