2009.7
現代の貧困にどう立ち向かうのか
数値で見る現代日本の貧困(後藤道夫)
貧困世帯は1998年頃から2005年まで急増し、その後高止まりしている。しかし、日本政府は1965年から公式の貧困統計を発表していない。
- 少なくても数の上でワーキングプア世帯が日本の貧困世帯の中心である。この結果は労働力を持つ男性がいる世帯が大きな規模で貧困に陥ることはないというこれまでの日本社会の常識と食い違っている。
- 年金・恩給が主な世帯が急増した。貧困率は変わらないが、総数は増えている。
- 農業・自営業世帯はその総数の急速な減少に歯止めがかからず、貧困世帯率も増えている。
- その他の収入が主な世帯が大きく増えており、収入は極めて低く、貧困率が以上に高い。雇用保険も生活保護も受給できない長期失業者が個々に大きく含まれている。
この貧困を急増させた労働市場の変化としては、フルタイムでなんとか自分一人で生活できる程度の賃金をもらう非正規雇用の急増、正規雇用でも低処遇の賃金しか貰えない労働者が増加することにある。ことに零細企業の低処遇は知られていたが、近年では大企業でも低処遇の人々が増えている。
方策としては、失業対策をしっかりとしないと行けないはずなのに、雇用保険制度への未加入、自己都合退職者への保障の低さ、給付額の少なさ、長期失業に対応していないこと、住宅喪失で離職票を受け取れない場合がある。酷い労働条件の仕事を労働市場から排除して、労働市場を健全な状態に保つことが大切である。
インタビュー(岩田正美)
- ある時から日本において貧困はなくなったといわれたが、厳密には社会福祉が経済的に福祉の対象になるわけではないけれど、社会的な支援が必要だというように高齢者などへの普遍的なものへとシフトして、貧困というコードが見失われた。
- 保険だけではどうしようもなくて、予防、救済、保険と扶助をセットで考える必要がある。
- 貧困が固定的なものなのか、流動的なものなのかという視点、そして、経済的困窮によって社会的な排除のシステムが働き出す。
- 固定された貧困者のライフデザインやゴールは何処にあるのかが不明であるが故に社会福祉関係者はどうしていいか分からない。あるいは縦割りに対応してしまう。
- メインストリームに包括されずに職を転々とする、そうした独自の生活構造を持つような人は制度のことを知らないし、制度に乗っていくことはできない。そして、福祉従事者もまたそうした人々の生活を想像できない。メインストリームとは違う生活をしていてもその人なりに生きてきたことを尊重し、けれどもホームレスという状態は絶対解決すべき問題で、家は人間の生活にとって不可欠だと思いますが、同時に地域関係あるいは社会関係も不可欠である。
この当時、リーマンショックなどで非常に失業率が高かった時期であり、また派遣村などの取り組みもあり、住宅の確保やセーフティネット施策などが進められてきた時期でもある。また、子供の貧困もかなり取り上げられるようになっている。インタビューでは、少子化対策で、親や国のための施策よりも、貧困にあえがないように、子供が豊かに暮らせるような施策こそが大切であるというメッセージは大変良かった。
2015.4.7