2007.2
これからの社会福祉士・介護福祉士
インタビューでは、京極高宣
論点では、
江草安彦「介護ニーズの変化と介護福祉士に求められる専門性」
白沢政和「社会福祉士制度見直しの現状と今後の課題」
石橋真二「介護の中核を担う介護福祉士を目指して」
村尾俊明「社会福祉士の役割と今後の課題」
座談会は堀田力、高橋紘士など
メールマガジンで、この特集を主に、社会福祉士でまとめたものをそのまま載せ、後半は、介護福祉士について補足をする。
●社会福祉士成立の背景
そもそも社会福祉士及び介護福祉士法が制定されるまで(20年前)、主要な社会福祉の担い手は社会福祉主事と保母でした。当時の社会的な風潮として「福祉の現場に国家資格はいらない」「資格を持つと自己主張の強い職員が増える」「給料が上がったら困る」といったネガティブな意見があって、厚生省も 資格化にあまり乗り気ではありませんでした。
その後寮母の位置づけをしっかりしようとする動きもありましたが?相談業務を一種、ケアワーカーを二種、学会などからの反対もあって成立しませんでした。その後、シルバーサービスの進展と共に、質を担保する専門職の必要性から、1987年に現法律が制定されました。
またその背景には、1986年に東京で開催されたICSW会議(国際社会福祉会議)において「日本の社会福祉は発展してきたけれども、福祉人材に関しては、国家資格が全くない」という矛盾が指摘され、外圧的な空気が強まっていたこともありました。
●なぜ見直されるのか
介護福祉士に比べて、社会福祉士は幅広いジェネリスト的な資格であるため、後で出来たPSW資格と比べて、逆に専門性に特化した者が無いという問題が指摘されています。どのような仕事で活躍してもらうか、行政や福祉の現場でその方向が明確にされてこなかったし、教育する側も現場との結びつきが薄かった面もありました。
社会福祉士と一言でいっても、福祉事務所、児童相談所、シルバーサービス、障害者施設、老人ホーム、病院などそれぞれの現場でも違ってきますし、経営者側にも「採用したけれど、どういう風に活用していいのか分からない」という問題も出ています。
また「やりがいはあるし、この仕事が好きだけれども収入が少なすぎて続かない」というケースもあるのが現実です。資格が出来た当初は、多少待遇が上がったのですが、その後は、不況かで他の就職先がないから福祉へと言う流れの中で、待遇も横這いの状況が続きました。今後は、景気が上向きになるに連れ、現在は福祉分野に人が集まらなくなっています。福祉人材確保のためには、資格取得など前向きな人をきちんと評価して待遇をあげていく努力が必要と言えます。
さらには、社会福祉制度が措置から契約の時代を迎え、利用者本位のサービス提供が求められるようになる。そのためには権利擁護や苦情解決などの専門知識を有する人材が必要になりました。そのためには、高度な知識を習得するための教育体系の見直しや実習のあり方などを見直す必要が出てきました。
あるいは、社会福祉士を相談業務と位置づけて、その職域の狭さが問題となってきました。特に三科目主事と言われる社会福祉主事による行政の相談援助は、質の低下が懸念され、実務能力の高い社会福祉士を社会に輩出すると同時に、その職域の拡大や待遇改善が求められています。
●社会福祉士のあり方検討について
2006年9月20日に社会保障審議会福祉部会で検討が始まり、5回の審議の結果、「介護福祉士制度及び社会福祉士制度のあり方に関する意見」が公表されました。その後、社会福祉士会が3000人を対象にした現況調査を行いました。
●検討の内容
検討は多岐に及びますが、現状の課題では、社会福祉士の登録者が8万人を越えているに関わらず、社会福祉士会の会員は2万3千人程度であることや社会福祉士の業務目標が明確ではないことが上げられています。
今後の課題として、社会福祉士養成(養成校と大学の合格率の開き、実習の質の担保など)の問題、社会福祉士の社会的役割の明確化などが挙げられています。
要望として、社会福祉士が活躍できる職域の拡大、支援機能の強化などが挙げられています。
●具体的な内容として
これからの社会福祉士の新たに期待される役割として審議会でまとめられております。
大きく、
- 新しい行政ニーズへの対応(福祉計画や事業計画への参画など)、
- 地域を基盤にした相談業務(地域包括支援、障害者自立相談支援、ホームレス支援、就労支援)、
- サービスの利用支援(地域福祉権利擁護、成年後見、苦情解決、第三者評価)とまとめられています。
●提案として
これまもた多岐に渡りますが、めぼしいモノをピックアップすれば、
- 社会福祉士の定義として「相談業務」の他、「社会資源の開発・調整及び運営支援」「運営管理」などを加えるようにする。
- 社会福祉主事の段階的廃止、社会福祉士の配置基準の明確化と報酬加算。あるいは、福祉行政における任用の促進のため、社会福祉士を任用資格として位置づけていく。
- あるいは、施設長、生活指導員なども社会福祉主事とは別個に質の担保のために社会福祉士をキャリアパスとして念頭に置く。
- 実習は資格取得者?しかも研修を終了した者が行うのが望ましい。あるいは受け入れた施設への一定の費用加算
- 社会福祉士の生涯を通じた能力開発とキャリアアップを支援していくため、体系的な研修制度の充実と、より専門的な知識及び技能を有する社会福祉士を専門社会福祉士(仮称)として認定する仕組みの検討を行う。
介護福祉士編
介護福祉士が成立するにもいくつかの対立があった。一つが看護からで、本来介護は看護師の業務領域で、介護福祉士のような新しい資格は困る。もう一つが、家政婦協会からで、資格レベルが高すぎ、自分たちの働く場が減ってしまうである。しかし、20年を経て、福祉サービスの質が上がってきている。その一つに、介護領域での専門書がたくさん出たことである。それまで介護は資格不問な為ほとんどなかったため、売れなかった。あと、資格が出来たことで、仕事に脚光が浴び、若い人材が大量に現場に流入して、雰囲気もずいぶん明るくなった。介護福祉士については、現場のニーズも高く、非常に活用されている。
介護福祉士の見直されるポイントは、ずばり認知症や終末期高齢者に対する専門的な関わり方にある。また、専門介護福祉士を設立し、介護チームの中心メンバー養成が求められている。
ちなみに資格取得者は54万人いる。
2007.10.16