2006.12
障害のある人と就労
松矢勝宏「障害者と就労」
障害者雇用の進展は、1960年の身体障害者雇用促進法の制定に始まるが、1976年の改正による身体障害者の雇用義務化が最初の大きな画期であった。次に、1987年に身体障害者雇用促進法が改正され、障害者雇用法になった。それによって、知的障害者の雇用率カウントがはじまった。1997年の法改正を経て、身障と知障を算定の基礎に置く1.8%の時代が来る。さらに2005年では精神障害者雇用率カウントである。また、障害者自立支援法の制定もあり、福祉と雇用政策の連携による就労移行の課題が施策の中心に設定される。
雇用促進に関する支援策などの具体化
1. 就労支援センター構想の具体化
- センターが介在することで、障害者のみならず、企業側も安心して雇用に取り組み事が出来る
- 定着に失敗した人もセンターの支援で再チャレンジできる。
- 加齢等で作業能力が低下した人については福祉就労へのハッピーリタイヤも実現する
- 就業・生活支援センターは2007年度の概算要求によって160を予定している。
2. ジョブコーチ制度の採用と普及
1990年に地域障害者職業センターで試行された職業開発援助事業が実績を上げ、2002年の法改正で定着支援までを行う。ジョブコーチでの定着率は80%である。
3. 福祉就労、在宅就業から一般就労にいたる多様な就業形態の採用
- 1992年の法改正で20時間から30時間未満の短時間労働を常用労働者と見なした。雇用された重度の身障と知障を1人分にカウントする制度は、重度障害者の一般雇用の促進に大きく役立った。2005年の改正で、精神障害者について重度障害の条件なしに特例化し、0.5人分としてカウントすることになった。
- また、試行雇用事業(トライアル雇用)も就業形態の多様化の一つになる。トライアルはテイン枠が在れば何度でも試行できるため、福祉就労と一般就労を繋ぐ就業形態と言っていい。
- 在宅重度障害者の就業機会の拡充策〜在宅就業支援団体を介在させ、障害者納付金制度を活用し、企業からの仕事の発注を促進する。
- ハローワークが福祉施設などと連携し、就業を希望する個々の障害者に応じた支援計画に基づいて、一貫して就労支援を行うモデル事業が2005年度から実施されている。
施策の展開と障害者の雇用状況
高度成長期は、雇用従業員56人から99人規模の製造業が受け皿となっていた。バブル崩壊後はかなり低迷している。さらに低調なのが、100から299人の企業である。中小企業の雇用率改善が大きな課題である。一方、1000人以上の大企業は、毎年のように実雇用率を上げている。
しかし、
- ワークシェアリングによる仕事の受託と事務補助の拡充と適正化
- (高齢者の)介護補助・保育補助を障害者が行うモデル事業がある。
- 裏方から接客への転換〜キャリアの形成
など発展してきている。
あとは、政策提言〜突き詰めると予算の増額や企業努力と言ったことであった。
東馬場良文「障害者の就労支援における課題」
平成17年度障害者求職者数は14万6679名、就職件数3万8882名で約10万人の障害者に対して、経済保護、失業対策、職業リハなど多くの機能と役割を果たしてきたのが授産施設であった。
就職に際する問題点は、
- 生活施設による抱え込み(定員確保など)
- 支援者が就労とか労働とか他分野であると思いこんで熱心ではない。雇用対策と福祉施策の連携が上手くいかない。
- 企業側で受け入れたことがないために消極的になる。
- 生活支援まで企業が手を貸さないし、無理がある。などなど
就労支援を支える福祉の役割
- 就労が出来る生活基盤の支援(金銭、交友、健康、衛生など)
- 離職時の受け入れ機能、再チャレンジ機能(適職を捜す期間や可能性を追求する期間)
- 継続的な日本語版保護雇用(就労継続事業A型は最低賃金の保障と利用料を払うという矛盾、B型は、雇用契約は結ばないが、目標工賃設定が定められる。)
- 地域ネットワーク構築(他業種や一般企業、自治会からPTAまで、地域社会との連携により、商売の種を広げていく)
舘暁夫「精神障害者の就業促進の現状と課題」
2006年の「改正障害者雇用促進法」では、精神の法定雇用率への特例適用などが盛り込まれている。しかし、一般企業への就職は、身障37万人、知障11万に比べ、精神は1万3千程度である。その他、福祉的就労は多いが、企業の壁は厚いことが統計上はなされる。
先に述べたが、特例と言っても、企業に雇用の義務がない。障害の把握は、手帳により行う(手帳の所持がない障害者は適用されない)。週30時間未満の短時間労働者を0.5%のハーフカウントにする(超短期労働であっても雇用と見なす)程度である。
輪島忍「企業に求められる障害者雇用の視点」
ダブルカウントとは、重度障害者1人を2人雇ったこととしてカウントする方法。普通はシングルであるが、雇用促進のために数の水増しあるいは、重度者を雇うことをねらいとしている。
雇用率を達成しない企業についての社名報告などの罰則・指導についての表がある。
あと、自立支援法で加速していくが、どの作業が合うかなど企業側でのミスマッチを防ぐ取り組みが求められる。