磐  井  神  社 
(2007.12.11)

 
磐井神社は、鈴石や烏石、磐井の井戸などで知られている。 創建の時期は定かではないが、延喜式(延喜5年に醍醐天皇の勅により編集された制度集)の神名帳(神社の一覧)に当神社の名が記載されているというから、 延喜年間(901年−921年)にはすでに存在していたことは確からしい。 かつては東京湾の浜までがこの神社の境内で、沖合に鳥居があったという記録もあるという。

 鈴石(すずいし)は神功皇后が長門の国の浦の浜でこの石を発見し、紆余曲折を経てこの社に納められたものだといわれ、大田区の文化財に指定されている。 転がすと鈴の音がするというので江戸初期の頃に有名になり、鈴が森の地名はこの名に因んだものだと伝えられる。

烏石(からすいし)は、 山の形をした自然石の上部に、墨で書いたような烏の形をした模様があるところからこの名が付けられた。 もとは鷹石と呼ばれて麻布にあったが、松下烏石という人が移した。 松下烏石の宣伝もあって有名になり、特に江戸文人に好まれて鑑賞のために訪れる者が後を絶たなかったという。 この石も大田区の文化財で、現在は鈴石ともに社務所に保管されている。

磐井の井戸の水は万病に効く薬水とされ、 心正しい人には清水だが、邪心のある人には塩水となるそうである。海がすぐそばだから時には塩水が混じったとしてもおかしくはない。 もとは神社境内にあったが、第一京浜国道の拡幅で境内の一部が削り取られ、今は境内から外れて歩道の端に取り残されていて、 東京国際女子マラソンの時にはその前を選手たちが駆け抜けていく。大田区の文化財である。

 その他にも、松下烏石が烏石を奉納した由来を刻んだ 烏石碑や、 文人たちが使用済みの筆を埋めた供養塚(何れも大田区の文化財)、東海七福神の一つの笠島弁財天、樹齢は分からないが幹回りが数メートルはあると思われる イチョウの古木などが境内にある。

 近くにはお七地蔵の密厳院、ちょっと離れて品川水族館、平和島競艇場、大井競馬場がある。
 
参考資料:学生社刊 大田区史跡散歩


所 在 地 東京都大田区大森北2-20-8
交   通 JR京浜東北線大森駅下車、徒歩15分 (地図を参照)
    京浜急行線大森海岸駅下車、徒歩10分 (地図を参照)