@診察を受ける決心
平成10年7月下旬。尋常ではない生理痛にみまわれる。
以前から毎月鎮痛剤が必要であったがこの年の5月からはその鎮痛剤も効かなくなるような状態になっていた。
暑い日でもホッカイロをおなかと腰に入れ、冷え対策は万全のはず。
けれど、7月は生理痛で初めて仕事を休むこととなった。
ベッドに横になり眠ろうとしても痛みで眠れない。
いつもはシャワーをおなかに当てると嘘のように痛みが消えたのに今回は効果が全くない。
おなかを切り開いて臓器をえぐりだしたい衝動に駆られる。
死んだほうが楽になれると本気で考える。
……病院へ行こう。
それでも、婦人科の病院に行くのは抵抗があった。
10年前に婦人科の医師から言われた言葉が頭の隅から離れない。
生理痛の事で相談した時
「鎮痛剤で治るのならいいほうだよ。もっと大変な人だっているんだから。」と言われる。
婦人科へ行ってまた同じように、我慢しなければならない事を医師から告げられたらどうしよう……。
そんな恐怖心がわたしの決心を鈍らせていた。
この他にも小学5年生の時に学校で生理の教育フィルムを見せられた時の状況も影響していると思う。
あの時受けた異常な雰囲気の中での生理教育で、生理は隠すもの、恥ずかしいもの、そして生理は我慢するものとインプットされてしまった。
思いあぐね別のアプローチ方法を考える。
数年前に雑誌でみたA医大付属東洋医学研究所を思い出す。
東洋医学だったら生理痛に対して別の見方をしてくれるかもしれないという思いと、自分の持っている自然治癒能力のようなもので治せるのなら治したいという気持ちからこの病院に行くことを決める。
A東洋医学の治療
平成10年8月5日
担当医のK先生はまず症状を詳しく聞いてくれた。
話を聞いてもらったというだけで気持ちがとても軽くなる。
それからおなかの触診。
たぶん子宮内膜症ではないかとのこと。
血液検査で確定診断はできないけれど子宮内膜症が疑わしいかどうかはわかるので血液検査をすることに。
(血液検査の結果、やはり子宮内膜症が疑わしいことが判明。CA125が53。)
「けれど内膜症だとわかっても痛みを取るためには手術をするか妊娠するしかないんですよね。
漢方薬で生理痛が治る人はたくさんいます。痛みを和らげるように治療をしましょう」と言われる。
「治る」……わたしは医師からのこのことばをずっと待っていた気がする。
思わず目が潤んでしまう。うるうる……。
まずは漢方薬の桂枝茯苓丸をしばらく服用することになる。
2週間で痛みがなくなった人もいるとの事。
しかし残念ながらわたしには効果はあまりない。
次に、芍薬甘草湯といっしょに服用。しかし同じ結果。
(個人差があるのですべての生理痛に効果がないわけではなくすぐに痛みが和らぐ人もいるとのこと。)
漢方薬を飲み始めて2ヶ月たってもあまり痛みが改善しないため、K先生から「婦人科の先生に一度見てもらいましょう」と提案される。
この頃からお灸も始める。健康維持のためチュウカンと足三里に。
生理や頭痛の時はこの他にも三陰交、合谷、太衝、曲池にも。
わたしの生理痛にはあまり効果がみられないが健康維持にはなっているような気がする。
B子宮内膜症の臨床診断と手術の決心
平成10年10月8日
東洋医学研究所の婦人科のMu先生の診察を受ける。
超音波の内診の結果、子宮内膜症で左卵巣に6cm位のチョコレート嚢腫ができていることが判明。
わたしが今後妊娠を望んでいる事から、Mu先生は腹腔鏡下手術でチョコレート嚢腫を取る事を勧める。(機能温存手術)
手術をすれば痛みがとれ、妊娠する確率もあがる事、また腹腔鏡下手術は患者の体への負担が開腹手術よりずっと軽く1週間で退院できる事などの説明をうける。
痛みがなくなるという言葉からわたしは抵抗なく手術を受ける決心をその場でする。
夫や両親はこの決断に驚いていた。
ただ、腹腔鏡下手術の設備がある病院や経験のある医師が限られているとの事。
先生が勧めてくれたB大付属病院は手術を受けるまで6ヶ月待たなければならない事やわたしの家からは遠い事などの問題点がある。
子宮内膜症や腹腔鏡下手術の勉強と、家の近くで手術が可能な病院を探すことが次の診察までの課題となる。
平成10年10月22日
この日の診察までの2週間の間、わたしは本やホームページで子宮内膜症に関する事を勉強。
手術の外にもホルモン剤の薬物療法があることを知る。
偽閉経や偽妊娠の状態を作るわけだから生理痛がなくなるのは納得。
しかし副作用があること、チョコレート嚢腫の根本的な治療にならないことなどから薬物療法を受ける気にはなれない。
わたしにとっては不自然な行為に思える。
手術で病巣を取ってもらうほうがより自然なかたちに思える。
わたしの決心はまったく揺らがない。
手術をする病院に関しては家から近い病院で腹腔鏡下手術ができるところをいくつか探してMu先生に提案したが医師の技術によって結果が左右される手術であることから、なかなか納得してくれない。
最終的にはMu先生の
「もし、自分の妻があなたの立場だったらB大付属病院に行かせます。」
という言葉で、B大付属病院に行く事を決心。
同じ日、K先生に手術をする事を伝えると
「手術をしても治らない場合もあるし、再発もするそうだから漢方のほうも続けましょう。」と言われる。
再発に関しては覚悟していたが手術をしても治らないという言葉はショック。
しかし、痛みがとれる可能性があるならば手術を受けたいと思う。
C大学病院での診察
平成10年10月28日
紹介状を持ってB大付属病院へ。
まず、研修医と思われる若い医師から問診を受ける。担当医に最初から話を聞いて欲しいと思うが大学病院だから仕方がないか?
次に、教授の診察。いきなり教授の顔も見ないうちに下着を脱いで内診台に上がるように言われびっくり!
(しかも待合室と下着を脱ぐ場所はカーテン1枚の仕切りのみ・・・なんでわざわざ遠くから来てこんな所で診察受けなきゃなんないの!と悲しくなる)
しぶしぶ内診台に上がる。
Mu先生の内診を受けていたので、もう1度受けるのは抵抗があったが、結果的にはセカンドオピニオンができた事になる。
「手術を受けたほうがいいですか」と聞くと腹腔鏡下手術の説明書を渡される。
説明書には手術のこと、診察から入院、退院までの流れ等が書かれていた。
最後に担当のMo先生の診察をうける。
超音波写真と図を使い、わたしのおなかの中のようすの説明。
子宮内膜症のチョコレート嚢腫が左卵巣にあること、子宮がかなり後屈しているので他の臓器との癒着がありそうなこと。
また経血量が多い事から子宮腺筋症の疑いもある事、子宮腺筋症は子宮摘出をしない限り治しようがない事などの説明を受ける。
そして、
「痛みを取る事を目標に治療をしましょう」と言ってくださる。ありがたい。
手術の日を決める。
手術はもうすでにたくさん予約が入っていて一番早い日でも5ヶ月後の3月29日。
5ヶ月も待つ事はわたしにとって大変な事。でも仕方がない。
手術は3月29日に決定。
入院は前の週の金曜日の3月26日、退院は4月2日となる。
次に手術を待つ間の5ヶ月間にどのような治療をするか。
「どうしますか?」とMo先生に聞かれ、
ホルモン療法は副作用があるし感覚的に抵抗があって受けたくないと考えていたので、
「東洋医学研究所で治療をしたい」と伝える。
Mo先生は了解してくださる。
それから、子宮腺筋症であるかどうかの確認のためMRIの検査を受ける事に。
この検査も予約が必要であるため改めて検査を受けに来る事になった。
MRI検査の予約をした後でその日が生理の真っ只中である事に気がつく。
変更してもらう事も考えるが漢方薬のおかげか鎮痛剤も効くようになっていたので何とかなるだろうとタカをくくっていた……。
平成10年11月9日
予定通り生理になる。
でかける時に痛みがひどければ検査日を変更してもらおうと思うが鎮痛剤で痛みは治まっていたので出かける。
ところがMRIの検査室に行く頃に徐々に痛みがやってきて検査を受けている頃はひどい痛みに。
MRIの検査は大きな機械の真ん中の空洞部分に仰向けになった状態で入れられ、体の断面を撮影するもの。
15分程度で終わるがおなかの痛みはますますひどくなっていた。
帰りの電車の中で地獄をみる。
座席に座って眠ろうとするが痛みがひどく眠れない!
鎮痛剤がまた効かなくなってしまった。
平成10年11月25日
B大付属病院、Mo先生の診察。
「MRI検査の結果、子宮腺筋症と疑われるようなものは見あたらないですね。ただ出血量が多いというのが少し気になりますが・・・。」
Mo先生にそういわれ、ほっとする。
腺筋症がなければ腹腔鏡下手術で内膜症の病巣を取ってもらえばいい。
ただ、子宮と他の臓器の癒着によりかなり子宮が後屈しているとのこと。
その癒着も手術ではがしてもらう事に。
前回の生理で市販の鎮痛剤がまた効かなくなってしまったので座薬(ボルタレンサポ50mg)を処方してもらうことにする。
そして後は手術を待つばかり。
D手術を待つ間
12月、1月上旬の生理も相変わらず。
座薬を入れてしばらくすると痛みは和らぐ。
ただいつも座薬と相性がよかったわけではなく座薬を入れたとたんに下痢状態になり座薬を出してしまった事も何度か。
10月から生理が終わるころに偏頭痛と吐き気、嘔吐がおきていたがそれも続いていた。
平成11年1月14日
東洋医学研究所でK先生の診察。
前回の生理痛がひどく、また市販の鎮痛剤が効かなくなってしまったことをK先生に 伝えると桂枝茯苓丸と呉茱萸湯の組み合わせを処方される。
呉茱萸湯は漢方薬の中でも特に飲みずらい薬。でもがんばって飲む事にする。
すると、1月下旬と2月の生理は今までよりも軽くなる!
もちろん鎮痛剤は飲みつづけていたが座薬は使わずに済んだ。
偏頭痛と吐き気もあったがだいぶ軽くなっていた。
平成11年3月10日
久しぶりにB大付属病院のMo先生の診察。
漢方薬をかえてみたら1月と2月の生理痛が軽くなった事を伝えると信じられないと思われた様子。
手術前最後の診察なので手術の承諾書を渡される。
Mo先生にいくつか質問。
「入院中も漢方薬を飲みたいのですが。」
「ぜんぜんかまいません。」
「退院後はどのくらいで普通の生活に戻れますか?」
「hanaさん次第です。入院中はベッドの上でほとんどすごすので退院後すぐは体がしんどいでしょうが 手術の傷に関してはまったく問題ありません。
自分で大丈夫と思ったらいつでもかまいません。」
この他に再発のことも聞こうと思うが手術する前から再発のことを考えても意味がないと思いやめる。
その後、手術前の検査。手術に影響のある症状の有無の検査。
心電図、胸部X線撮影、血液検査、尿検査。
血液検査のために腕と耳たぶから血液を取る時にチクッとするぐらいであとは全く痛みの伴わない検査。
平成11年3月17日
電話で手術前の検査の結果を聞く。
何の問題もなく手術ができるとのこと。
「手術まで体調を崩さないように気をつけてください」
とMo先生に言われる。
手術前最後の生理は前回、前々回に比べてすこしきつい生理。
せっかく漢方薬が効きだしたと思ったのに・・・。
けれど手術さえ受ければ憂鬱な生理を迎えなくて済むんだ…と希望を持つ。
入院直前にそれまでも何度か見ていた腹腔鏡下手術に関するホームページの製作者がMo先生と判明。
厚かましくメールを送る。
すると、お返事メールが届いた!文章からMo先生の人柄が偲ばれうれしくなる。