PUMAN Robot-Simulator for Direct3D チュートリアル1

(ロボットティーチング編)


はじめに

 バーチャルリアリティー(VR)はすでに社会に浸透している言葉です。現実世界の雰囲気を数値モデル化しコンピュータで擬似的な信号として人間の五感に与えることで、コンピュータの用意する仮想空間への臨場感を高めるといった技術全般をVR技術といいます。その主要な技術となるのがリアルタイム3DCGで、近年のコンピュータ性能の向上により、TVCMやゲームをとおして日常的に目にするまでになりました。そしてVRを応用技術とする全く新しい研究や商品づくりが活発になってきました。

 ここでは操作が複雑で高価な産業6軸ロボットを3DCGで作成することで、誰もがWindowsソフトと同様の感覚でマウス操作し、いくら無茶な操作練習してもけして破損することのないバーチャルロボットを登場させました。さらに操作に機敏に反応してくれるユーザーとコンピュータとのインタラクティブな環境は、工場での生産計画検討に積極的にユーザーを参加させます。またCADレベルの非常に高精度な描画計算を行うため、シミュレーションを行うロボット工学の研究者にとっても有用なツールとなり得るでしょう。

 PUMANはロボットシミュレータに限定されない自由度の高い3次元モーション作成システムをとっていますが、本書は「ロボットティーチング編」として、まずは実ロボットそのままの教示方法を学んでいただきます。 続編として、「ロボットシミュレーション編」「人体モデルアニメーション編」を検討中です。

「PUMAN Robot-Simulator」作者
堀ノ内 貴志


本書の使い方


■目次■

画面説明

基本操作


画面説明

上がPUMAN ver.0.95の動作画面です。特徴として、


基本操作

バーチャルロボット

 産業用ロボットのアームは、複数の節をもち、その節と節の結合部である関節が回転または直動することで、アーム手先の位置決めを行えるようになっています。PUMAN Robot-Simulatorが対象とするのは、基本的に垂直多関節型ロボットといわれる全てを回転関節で構成されるロボット(下図参照)で、設置面積の割に最も大きな動作範囲をとれる特徴があります。 

 ロボットはその手先に、溶接ガンやスプレーガン、チャックハンドを取り付けて生産活動を行わせます。たとえば立方体のワーク(製品)を溶接加工する場合を考えると、ワークの角に溶接ガンの先端を合わせ、決まった方向から溶接を行おうとする場合、3次元ではX,Y,Z軸方向の移動量と、手先姿勢Xr,Yr,Zrといった回転量を満たす必要があります。つまり制御量は6つになり、この手先位置姿勢を実現する垂直多関節型ロボットは6自由度(6関節)が必要です。PUMANはこの6自由度ロボットを、仮想現実(Virtual-Realiity)空間に再現しました。今後これをバーチャルロボットと呼ぶことにします。

産業用ロボット
ISO(国際標準化機構)はManupilating-Industrial-Robotを「自動制御された再プログラム可能な、多用途で、いくつかの自由度を有するマニピュレーション機能をもつ機械」と取り決めている。
鉄腕アトムのような人型とはほど遠い姿を有するが人間の作業を代行できる。

ガン、チャックハンド
日本の自動車工場では、ロボット手先に溶接ガンを取り付けスポット溶接する光景がよくみられる。こちらは高精度の繰り返し加工作業を目的としたもの。
人間が重量ワークを運搬するといったハンドリング作業により起こる肉体的負担を軽減するため、ロボット手先にワークを掴ませるハンドをオプションとして取り付ける。

人工現実感(Virtual Reality)
実としてそこにないものを人工的な仮想物に置き換え、 人間に体感させることで臨場感を高める技術全般。 3DCGによる視覚、3Dサウンドによる聴覚、 疑似芳香による嗅覚、力フィードバックによる触覚など。

3次元の概念

 バーチャルロボットはコンピュータで用意した仮想3次元空間で動作するロボットです。この空間では動きの全てを3次元データで指令します。

 左の画像の左端の物体は基本的な座標系を表します。赤がX軸緑がY軸青がZ軸を指していて、それぞれの軸についたリング状の物が軸回転方向を指しています。この座標系の位置姿勢データをもとにロボットは制御されます。


 ここで仮想空間を構成する座標系を説明します。

  1. ワールド座標系…全ての基準となる座標系。バーチャル空間の中心を指します。
  2. ベース座標系…ロボットのベース(土台)の中心を指します。ロボットのベースにコンベアなどの駆動装置がなければ、大抵ワールド座標系と一致させる。
  3. ハンド座標系…ロボット手先の3次元的な位置姿勢を表します。PUMANはこの位置姿勢データを元にロボットの制御を行うことができます。
  4. ツール座標系…ロボット手先に加工器(ツール)を取り付けた場合、実際にワークに接触するのはツール先端であり制御すべき対象も同じでなければいけません。多くのロボットはツール座標系のデータをもとに制御されます。
  5. カメラ座標系…自分の目線を指しています。
  6. ライト座標系…ロボットを照らすライトの向きや位置を指しています。
  7. センサ座標系…視覚、力覚センサを設置した場合に用います。

 

ロボットコントローラ

 バーチャルロボットを操作するコントローラをロボットコントローラウインドウと呼びます。実ロボットのティーチングペンダントにあたるものですが、機能を限定しボタン数を最小限に抑えました。

 ロボットコントローラ(以下RCは、4つのボタン群に分類されます。上から、

  1. 関節回転ボタン群…1から6の数字が、ロボットの関節J1からJ6に対応しており、"+","0","-"ボタンでその回転速度を指定します。
  2. 手先回転ボタン群…Rx,Ry,Rz がロボット手先姿勢をあらわす回転軸の回転に対応しており、"+","0","-"ボタンでその回転速度を指定します。
  3. 手先移動ボタン群…X,Y,Z がロボット手先位置の移動方向に対応しており、"+","0","-"ボタンでその回転速度を指定します。
  4. 編集ボタン群…ロボットの動作教示の際、その教示情報を編集するのに用いる。詳細は後述の「ステップの編集操作」を参照。


RCを呼び出す

メニューバーのMotion -> Robotコントロールを選択します。


関節を回転させる

関節J1に対応する関節回転ボタンのうち"+"をクリックする(RCの最上段左のボタン)。ロボットの関節J1がじわじわと回転を始めます。ここで再度"+"ボタンを押すと、徐々に回転速度を増していきます。回転を止めたいときは、"0"ボタンを押すと急停止します。減速したければ"-"ボタンを押してください。
静止した状態で"-"ボタンを押すと、"+"とは逆方向に回転を始めます。


手先を回転させる

ロボットの手先を3次元で絶対座標系で回転させます。

 

ティーチングペンダント
ロボットに動作教示を行うための操作ボックスのこと。実際のものは非常停止ボタンやコマンド入力を行えるようボタン数が多く操作手順が複雑。

 

 

 

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