血染の鉢巻
周南市回天記念館へ寄贈
平成16年 9月 2日
中國新聞
「回天」訓練員平和訴え 血染めの鉢巻き寄贈
千葉の峯さん 記念館きょうから展示
体当たりで敵艦を攻撃した人間魚雷「回天」に乗り込む寸前に終戦を迎えた、千葉県本埜村
の峯眞佐雄さん(80)が、当時の女学生から受け取った血染めの鉢巻きを、周南市大津島
の回天記念館に寄贈した。初出撃から六十年の節目を機に「平和の尊さを感じてほしい」と
贈る決心をした。記念館は二日から展示する。
鉢巻きは、動員された呉海軍工廠(しょう)で回天の部品製造をしていた、広島県立呉第一
高等女学校四年の五人が一九四五年一月、死を決意した搭乗員の武運を祈願して作った。峯
さんを含め、大津島の回天基地で訓練中の五人に一本ずつ贈られた。
着物の裏地を使った長さ九十センチ、幅十二センチ。女学生五人が小指をカミソリで切り、
血で染めた日の丸が中央にある。周りに署名とともに「轟沈(ごうちん)」「一発必中」と
いった寄せ書きが鮮明に残る。
峯さんは一九四五年八月、出撃を控えて千葉県大原町に移動。しかし、搭乗予定の回天が輸
送中に潜水艦の爆撃を受け、そのまま終戦を迎えた。
鉢巻きは半紙に包み、海軍時代の書類などともに机の引き出しに保存。家族にも打ち明けな
かったという。「生き残っているのが申し訳ない気がして、人前に出せなかった」と思いを
話す。
峯さんは毎年十一月、回天の遺族らが大津島で開く慰霊祭に参列。偶然、鉢巻きが話題にな
り、遺族からも寄贈を勧められて「当時の状況を考えてもらえるなら」と決めた。
長男の会社員峯一央さん(48)=大阪府高石市=から鉢巻きを受け取った、記念館の小川
宣館長(74)は「多くの人を巻き込んだ戦争だったことを示す証拠。大切に展示した
い」と話している。
鉢巻きを確かめる小川館長。血染めの日の丸などがくっきりと残る。
更新日:2004/09/19