『ふしぎ魔法ファンファンファーマシィー』全48話のひみつ #4

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#40『まじょかいぎ』(98/12/06)
演出・今沢哲男
作画監督・杉本道明

 『ファンファン』30分スペシャルの第3弾。現代の世界各国の魔女のファッションの「それらしさ(笑)」はヴィジュアル的になかなかよろしい。もちろん(?)アマネも再登場。
 魔女の集会に呼んでもらえなくてすっかりいじけてしまっている「わるい魔女(笑)」の凝り固まった心をぽぷりとアマネがときほぐす、という話なのだが、そのくだりの描写がいまひとつ浅かったのがちょっと気になった。普段ならともかく、30分も尺があったんだから、もうちょっとそのくだりに時間を割いてもよかったように思えるんだけど……。


#41『みずうみのひみつ』(98/12/12)
演出・小坂春女
作画監督・爲我井克美

 にこにこ銀座のレクリエーションで湖にスケートにやってきたぽぷりは湖の底から何者かの「視線」を感じるが……。
 なかなかべたべたのタイトル(笑)だったりするけど(笑)、出てくるのはXXX星人とかじゃなくて(笑)、人魚。
 余談だが、今回は花屋のお兄さんとコンビニのお姉さんが二人でスケートをしている姿なども見ることができる。


#42『サーカスがやってきた』(98/12/19)
演出・葛西 治
作画監督・進藤満尾

 TVシリーズ最後の原作脚色話は、毎年にこにこ銀座にやってくるサーカス一座の腕の悪い手品師とふきこさんの大人のロマンス、といった風情。こういう話もなかなか悪くはないなあ。


#43『ほんのなかのぼうけん』(98/12/26)
演出・五十嵐卓哉
作画監督・伊藤郁子

 シリーズ最後の『ファンファン』30分スペシャル。
 古本屋さんで何も文章が書かれていない不思議な絵本を見つけたぽぷりはページを繰るうちに本の中の世界に取り込まれてしまう。同じ世界に迷い込んでいたアマネと協力して元の世界に戻る方法を探るぽぷりだが……。
 まあ、メインアイデアは『はてしない物語』(というか『ネバー・エンディング・ストーリー』か(笑))だけど、今回は『ファンファン』ではこれまでにも語られてきた「こころ」についての物語の、たぶん集大成ではなかろうか。ところどころ、もうちょっと「間」を使ってもいいんじゃないかと思うような展開急ぎすぎな部分もあったけど、なんだか、じ〜んとしてしまった。
 今回も、心理描写的なシークエンスに一部『エXァ』っぽいと感じる演出があったけど、それはまあ、ああいうちょっと観念的というか、抽象的な描写がアニメにおいてごく普遍的なものとなっている、ということなのかもしれない。そうだとするならば、『エXァ』という作品が周辺に与えた影響の中でも、これは最もポジティブなものといっていいんじゃないだろうか。
 なお、#20『ぽぷりのぼうけん』で登場した空中島が意外なところで再登場するというのもちょっとポイント。
 作画監督の伊藤郁子氏にも例によって拍手。


#44『ひとりぼっちのかげぼうし』(99/01/09)
演出・貝澤幸男
作画監督・宮原直樹

 公園で同級生の友だちやなつみちゃんと石蹴りをして遊んでいたぽぷりは帰り道で自分の影がなくなっているのに気がつくが……。
 今回は、子供たちの影と遊ぶのが好きな、公園に住む影法師が、淋しさのあまりぽぷりの影をさらってしまう、という話。ラルウの魔法で影法師の心の世界に入ったぽぷりの描写が「2次元」なタッチでなかなか新鮮。もともと2次元である筈のアニメの世界で2次元の描写というのも考えてみるとメタ(笑)な話だが、CGによる微妙なパースの変化でそれがなかなかいい感じに表現されている。CG加工の使い方としては簡潔かつ効果的でマル。
 淡々として心にしみる演出には、前回に引き続きまたしても目頭を熱くしてしまう。


#45『かぜにのって』(99/01/16)
演出・今沢哲男
作画監督・中田正彦

 魔法の種が残り少なくなったぽぷりは魔法を使うのを控えよう、と思っていたのだが、ある夜、アルデルの小瓶が突然光り出す。どうやら、魔法が自分から生まれたがっているようなのだが……。
 「おねだり」をしていたのはピンチイ。どうやら、南へとわたっていく同族の風の精霊の群れと一緒に飛びたがっていたらしい。ピンチイの同族が大挙して南へ渡っていくのは、ヴィジュアル的になかなか楽しいというか、圧巻といえば圧巻(笑)。人語を解する風の老精霊もなかなかいい味だしている。
 そして、クライマックスはぽぷりとピンチイの初めての意志疎通(?)。片言ながら、「もっととびたい」と語りかけてくれたピンチイに感動するぽぷり。つっても、意志疎通はできてもあいかわらずピンチイは気まぐれ全開なんだけどね(笑)。


#46『ぽぷりのポケット』(99/01/23)
演出・小坂春女
作画監督・宮原直樹

 前回使い切ってしまった魔法の種をもらおうとファンファンファーマシィーにやってきたぽぷりだが、残念ながらふきこさんはお留守。と、そこに一人の男の子が訪ねてくるが……。
 物語終盤になって初めて明かされる「ぽぷり」の名前の秘密。それは、ぽぷりと父親との大切な想い出……。
 それにしても今回は、周囲を自分のペースに巻き込んで行くぽぷりのキャラクター全開の話である。やっぱり、90年代のアン・シャーリーではある。
 なお、今回は冬の精霊にまつわるエピソードでもある。


#47『ながれぼしにおねがい』(99/01/30)
演出・貝澤幸男
作画監督・杉本道明

 ある夜、巨大な流れ星にぽぷりが願いをかけたら、なんと翌朝には願いがかなってしまう(笑)。ぽぷりの願いはもちろん「パパと一緒に暮らしたい」だったのだけど、それは、にこにこ銀座からの引越を意味していた。
 願いがかなったときのことを考えてはいなかった(当たり前だが(笑))ぽぷりは大ショック。同級生やにこにこ銀座の人たちの前ではわざと明るくふるまうが、ぽぷりのその虚勢を前に淋しそうななつみちゃん……。
 そしてぽぷりは、お茶の用意をしてぽぷりを待つふきこさんの前には顔を見せないまま、こっそりアルデルの小瓶を返してしまうのだが……。


#48『にこにこぎんざにさようなら』(99/02/06)
演出・貝澤幸男
作画監督・伊藤郁子

 にこにこ銀座を去らなくてはならないショックのためか、かつて体感していた筈の「魔法はどこにでもある」という認識を忘れてしまったぽぷりに、1年間を共にした精霊たちが語りかける(まさにそのことこそがぽぷり自身の魔女としての成長の証しでもある)。魔女の自覚を新たにしたぽぷりの手にふきこさんからアルデルの小瓶が再び手渡され、にこにこ銀座中の人たちがひとりまたひとりとぽぷりとの別れを惜しむ大団円。そして、ぽぷりの去ったにこにこ銀座ではまた新しい小さな魔女が……。本当に気持ちのいいラスト。1年間安定したテンションを保ち続けた全てのスタッフに拍手。
 シリーズを通して描かれた「女の子は誰でも魔女になれる」というテーゼは、「人間は誰でもウルトラマンになれる」というのと、根っこは同じもの。しかしこれは、子供に向けて作る作品にとっては、永遠のテーマではないだろうか。小中千昭氏に関していえば、この1年間『ファンファン』と『ウルトラマンガイア』でそのテーゼを同時に追及していたことになるが、作品としては『ファンファン』の方が綺麗にまとまっている……というのは1年間全話脚本という形式上、当然といえば当然のことではあるが、そういう点でも『ファンファン』は文句なし、小中千昭氏の代表作といっていいと思う。
 初挑戦の少女向け魔法ものというジャンルで、新しいヴィジョンを提示することに成功した小中千昭氏には、最後に改めて大拍手を送りたい。


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