お楽しみはこれからだッ!!
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第58回 “橋本みつる再臨!”
 掲載誌 糸納豆EXPRESS Vol.23. No.2.(通巻第40号)
 編集/発行 たこいきおし/蛸井潔
 発行日 2005/10/08


 唐突ではあるが、橋本みつるファンのきみたちに最新情報を公開しよう(笑)! いや、橋本みつるファンでない人もいるとは思うが、まあ、それはそれとして、今回のテーマは「橋本みつる再臨!」ということで、これが勝利の鍵だッ(笑)!!

 気が付いたら傍にいたとか
 友達だったのに急に、とか
 いつのまにか大人に、とか
 笑える
 まるで普通の女の子の事みたい

 このモノローグは新書館ウィングス2005年9月号に掲載の、橋本みつる最新作「流星」より。

 糸納豆誌上では既報の通り、橋本みつるが丸4年の沈黙を破って第34回ウィングス新人賞にトップ入選したのが2004年1月、投稿作がウィングスに掲載されたのが同年3月。その後、7月には唐突に白泉社から『橋本みつる作品集GET DOWN』が発売されたりはしたが、ウィングス誌上でも、復刊ドットコムでも動きらしい動きはなく、ファンとしては、どっちつかずの想いをさせられていたところであったので、今回のウィングスでの活動再開には非常に心強い想いをした。

 まあ、周辺事情はそのくらいにして(笑)、今回は最新作の紹介に力を入れることにしたい。いや、これまで「お楽しみ〜」で橋本みつるをとりあげる場合、周辺事情ばかりで作品内容に触れる前に終わってしまうケースが多かったので(笑)。

 放課後の教室でなんとなく怪談話をしていた主人公、慧は、小学生の頃、目の前に降りてきた光の塊が人の姿に変貌して走り去るのを見た、という体験談を披露した。その帰り道、幼なじみの少女密水(みつみ)は、その時降りてきたのは自分である、という告白をする。半信半疑だった慧だが、実際に密水が目の前で光に戻って消失するのを見せられては信じないわけにもいかない。そうして、「秘密」を共有することとなった二人には、お互い、今までには抱いていなかった淡い感情が芽生え始めるが、密水はドキドキすると光の姿に戻ってしまうため、慧は密水の手に触れることすらできない。そんなある日、密水は父親の仕事の都合で転校することになった、というのだが……。

 作中で、密水の正体などが語られることはない。密水は人の姿になる以前の記憶はおぼろげで、時々光になって消えたりするもののあくまで普通の少女として描かれている。ふと手が触れたりするとぱっと手を放すとか、そんな恋愛初期のドキドキ感と密水の「消失」は同じレベルなのである。

 5年後、大学生になって夏休みに帰省した慧は、偶然密水と再会する。恋愛を意識し始めた頃にお互いの不器用さから気まずくなった幼なじみが冷却期間を経てお互いの想いを再確認する、と要約してしまうと、ごく普通の恋愛物語なのであるが、そのことを当の慧本人が自覚する、というのが引用のモノローグである。

 橋本みつる作品の中では大傑作というほどではないが、このクラスの作品が年に1回読めるならば、ファン冥利に尽きるというものである。なにはともあれ、ウィングス要チェックだッ!!


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