お楽しみはこれからだッ!!
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第25回 “ちゅど──ん(笑)”
 掲載誌 平岩徹夫結婚ファンジン“ROCKET!!”
 編集/発行 たこいきおし/蛸井潔
 発行日 1993/3/20


 “お楽しみはこれからだッ!!”第25回は平岩徹夫結婚ファンジン“ロケット!!”からお送りします。平岩、平岩、平岩と平岩にあったテーマを考えてみたんだけど、平岩といったらこれはもう、ロケット、ヒコーキ、メカ、爆発(笑)。

 てな訳で(笑)、今回のテーマは“ちゅど──ん(笑)”、ということでいってみたいと思います。

「請求書を水増ししとけばよかったね。
 損しちゃった」
「ハハハ。
 ちげえねえ」

 おやおやいきなりアニメ『紅の豚』のセリフかな、と思った人、残念でした。本コラムは“マンガの名セリフ”なので、これは『紅の豚』の原作ということになっている宮崎駿の超短編マンが「飛行艇時代」から(笑)。

 しかし『紅の豚』はよかったなあ。あれを観ると結局宮崎駿の映画はヒコーキが飛んで、かわいい女の子がいれば他はなにもいらない、ということがよくわかる(笑)。文明批判とか環境問題とか少女の自立(笑)とかは、つけ足しみたいなものだね。と、いう訳で、僕の個人的宮崎駿作品ベスト3(月並かなあ(笑))。

 『となりのトトロ
 『ルパン3世・カリオストロの城
 『紅の豚

 ま、はその時の気分で順位が逆転するんだけど(笑)、12の間はもっとはっきり落差(ギャップ)がある。ベスト1に推すよーな作品じゃあないわな(笑)。


 あれれれ。結局アニメの話で1ページつぶしちゃったなあ(笑)。話を戻すと、『紅の豚』原作の「飛行艇時代」はモデルグラフィックス誌に宮崎駿が不定期でポツポツと発表した『宮崎駿の雑想ノート』の中の一編。現在は「飛行艇時代」だけまとめたムック本と、「飛行艇時代」を除く全作品と描き下ろし作品で構成した『宮崎駿の雑想ノート』の2冊に分けて刊行されている。

 2冊に分けられてるのはある意味で大正解。『雑想ノート』の方に収められた作品群と比べると「飛行艇時代」はすこーし異質な感じがするから。しかし『紅の豚』がなかったらこんな代物が1冊の本として刊行されることはなかったに違いない。そーゆー意味では、『雑想ノート』を出版させてしまった、ってことが映画『紅の豚』の最大の功績かもしれない(笑)。

 因みに、本日の新郎、平岩に言わせるとこの『雑想ノート』は「92年のベスト!」なんだそうだ。いや、その気持ちはわかるなあ(笑)。

「ひとつだけりこうになったぞ。
 戦争がおわって俺が金持ちになってもポルシェには絶対に乗らんからな」
「アッ。いえてる。
 ぼくもそうします」

 この会話は『雑想ノート』の中の描き下ろしの一編。「豚の虎」より。“天才”ポルシェ博士が一瞬のヒラメキで作ってしまったポルシェのティーガー戦車はいざ動かしてみるとまったく使い物にならない欠陥戦車(笑)。オクラ入りのこの戦車を引っぱり出してきた老大尉ドランシがソ連との戦いに赴く、という話なんだけど、トラブルだらけの機体は整備兵の尽力なしには1mだって動きゃしない(笑)。整備兵の方はまったくもっていい迷惑(笑)。ソ連軍との交戦中も修理の手を休めることはできないのだ(笑)。

 で、戦い(と、いうほど立派なもんでもないんだけど(笑))終わって生還したドランシと整備兵長ハンスの会話がコレである(笑)。

 『雑想ノート』には他にも、太平洋戦争末期、沿岸の哨戒に駆り出された漁船のエピソード「最貧前線」とかがあって、割と全体として“最下層の目から見た戦争”という視点で一致しているところがある。まあ、“戦争嫌いのミリタリーマニア”という宮崎駿らしい視点のとり方ではある。

 『雑想ノート』の中でも初期のものはマンガじゃなくて絵入りエッセイという形式なんだけど、むしろこっちの方が宮崎駿の趣味が強く出ている、って気がする。『ナウシカ』がヒットしてからの宮崎駿って、インタビューとか読んでもどっか苛立ってるみたいで楽しそうじゃない。だからこーゆー本人が楽しんで描いてるよーなものを読むと、こっちもホッとするんだよね。

 さて、最後になったけど、本日の新郎新婦のゴールイン(?)の会話を再録してこの稿を締めることにしたい。なんでも郷里のクラス会で久し振りに再会した後、電話で話してた時の会話だそうで、ロマンチックとかいうんじゃ全然ないんだけど、実にハマってる感じがして、いい会話じゃないかと思う。

「えー。こーんな田舎に嫁さん来てくれる女の子なんていないよー」
「……行ってもいいよ」
「えっ。そりゃ。どうも」


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