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第2回 “意味もなく強気なヤツ”
 掲載誌 Deja vu 3.5
 編集/発行 たこいきおし/東北大学SF研究会
 発行日 1989/3/27


 名セリフといえば荒木節ッ! 荒木節といえば『ジョジョの奇妙な冒険』ッ!! と、いう訳で好評でも何でもないこのコラム、二回目もやはり『ジョジョ』ネタから始めたいと思います。

 さて、今回のテーマは“意味もなく強気なヤツ”ということで……。

「だが我がドイツの医学薬学は世界一ィィィ! できんことはないイイィ〜〜〜ッ!!」

 これがァァ、第二部のォォ、中でもォォ、世界一ィィ(笑)、と言われる、“世界平和と人類救済のために日夜闘う正義の使者”ナチスドイツ将校シュトロハイム少佐(サイボーグになったら二階級特進で大佐になりましたが)の決めゼリフ。それにしてもあんなサイボーグを1930年代に実用化していたナチスが何故に世界制服を果たせなかったのか、甚だ疑問に思ってしまう今日この頃でした。

「ちょいと右脚がギクシャクするがァァァァァ、オレの体は修理は完了ォォォォォ。そしてくらえッ新しい対吸血鬼兵器! 紫外線照射装置ィィィィィィィィ!!」
「小型化に成功したのは我々SPW
(スピードワゴン)財団なのに………。うぬぼれの強い男だな」

 しかしもうすぐ第二次大戦が始まろうという1938年にナチスドイツとアメリカ人がスイスの山ん中で手を取り合っている姿というのはなかなか大ボケである。大体このSPW(スピードワゴン)財団特別科学戦闘隊(笑)ってのはってのは何なんだろうね(笑)。ただ背中に紫外燈しょってるだけの連中なんだけどねェ(笑)。


 因みに今年1989年2月7日はジョナサン・ジョースターの百周忌にあたります。ま、どうでもいいっていやどうでもいいことですが。

 さて、それでは次。

「究極の超絶美形主人公D・S(ダーク・シュナイダー)
 鋼鉄の不死身大火山大噴火的嵐を呼んで今! 復活!!!!」

 とりあえず第一巻を第一刷で持っていると自慢できるのではないかという『BASTARD!!』ですが、この見事なまでに自信過剰自意識過剰な大口をたたくD・S(ダーク・シュナイダー)のルーツを僕はつい最近発見しました。

「お待っとはんでした。男・岩鬼燃えて炎の大参上」

 そお! D・S(ダーク・シュナイダー)のルーツはかの『ドカベン』の岩鬼“岩鬼火山爆発”正美だったのです! ま、岩鬼の場合は本人の自己認識と周囲の客観的評価の間にズレがあって、そのズレが『ドカベン』の中ではギャグメーカーとして岩鬼を位置づけしていた訳なんですが、岩鬼をもっとアナーキーにして美形にして女好きにして無敵の魔法使いに仕立て上げれば絶対D・S(ダーク・シュナイダー)になります。(それだけ違えばただの別人だという説もありますが……)

 あ、信じてないな(笑)。

 それでは次の台詞を見よ。

「ヘッ、みすぼらしく無力なテメェら一般大衆と……神より選ばれたこのまばゆいばかりの美貌を持つ英雄! 男D・Sとではスケールが違う!! スケールが!!!!」

 いやー、“男D・S(ダーク・シュナイダー)”ときたもんだ。この1989年の現代にあってよもやこんな古風な表現に出くわすとは思わなかったことであるよなあ(笑)。


「だーいじょうぶ!
 まーかせて!」

 と、いう訳で鳥坂であります。“意味もなく強気なヤツ”というテーマを扱うならば、こいつを避けて通る訳にはいきますまい。裏付けのないプライドと根拠のない自信に満ちあふれた男、男子たるものかくありたいものであります(笑)。

 世の中には“座右の書”という言葉がありますが、僕にとっては『究極超人あ〜る』全九巻はまさにそのもの。従って、『あ〜る』の名台詞は僕の“座右銘”といって過言ではない訳でして、中でも修士(マスター)の二年間、幾度かくじけそうになった僕に勇気(笑)を与えてくれた力強い台詞がこれです。

「しかし少年よ、これだけは覚えておきたまえ。
 人間負けてしまったら負けだぞ!」

 いやあ、奥が深い(笑)。

 この含蓄の深い台詞を胸に秘めた僕は、教授の“院生は実験のみに青春を賭けよ”との圧力(プレッシャー)の前に屈する事なく、修士(マスター)二年の去年一年間に、まず12ページの個人誌を発行し、次にダイバージェンス16号の四色刷表紙イラストを描き上げ、さらに84ページの厚さを誇るダテコン・アフター・レポート“魔獣鶴亀伝”を完成させ、なおかつ五×嵐耕小川宏子結婚ファンジン“うれしいがらし物語”36ページまで速攻で作り上げてしまった。あまつさえ400字詰原稿用紙135枚に及ぶ修士論文をもちゃんと書き上げたというのであるから、この台詞のご利益がいかに甚大なものであったかがわかっていただけるでありませう。

 しかしまあ、そういった事とは全く関係なく、『あ〜る』の中で最高の(まぬけな)名台詞はというと、僕はこれだと思う次第であります。

「鳥坂さんがいなくなれば………この光画部は名実ともにわたしの天下。
 わたしの天下となった以上……西園寺まりいの前に光画部はひとたまりもないであろう!」


 最後は話をがらっと変えて少女マンガの話でもしてみたいと思いまふ。

 白泉社というのも、まあ流石は集英社から分かれて出来た会社だけの事はあってなかなかに商魂たくましい訳で、特に花ゆめの場合、新人に三回くらいの短期連載をやらせてみて人気が出るとシリーズ化して延々と続けさせるというあたり、まるで少年ジャンプの商法(モード)を見ているようではあります。

 おかげで最近は一年中『ここはグリーン・ウッド』しか描いていない那州雪絵ですが、せめて一年一本でもいいから他の話も読ませていただきたい。別にSFじゃなくてもいいから。(去年花ゆめに載った「紅茶の騎士」は未完だったし……)

「一人でいればこわいよ。だけどこうやってみんなでいればこわくない。
 だってあたし、乃梨ちゃんも結実ちゃんも涼子ちゃんもみんな好きだもの。
 幽霊だってかまわないもの──!」

 と、いう訳で『G・W(グリーン・ウッド)』以外の短編からいい台詞を探してみたらデビュー作の「誰か─STRANGER」になってしまいました。「冒険者たち」なんかも好きなんですがね(ともに『G・W』1巻に収録)。

 「誰か─」は現代版座敷童の物語で、春休みにとある専門学校の女子寮に居残った女の子三人が百物語(正確には三物語だけど)をやって呼霊に成功してしまうんだけど、一人増えて四人になった彼女たちはもといた三人が誰と誰で、新しく増えた一人(幽霊)が誰なのかわからなくなってしまう。確かに一人増えてるのに知らない顔がない!

 で、互いに互いを疑いあって疑心暗鬼。その末に主人公かおるがこう言う訳です。

 じ──ん(感動している)。

 那州雪絵には民話ネタでもう一編、タイトルもそのものズバリ「雪女」というのがありますが(『フラワー=デストロイヤー』に収録)、こちらも実にいい話で。何というか、民話的要素のアレンジの仕方が巧みで、しかも現代的なのが魅力です。

 しかし白泉社、売れ線のシリーズものや長編の単行本化は異常に速いくせに単発の短編、中編に対する扱いは最低で、雑誌に一度載ったきり闇に埋もれている作品のいかに多いことか。くぼた尚子なんてLaLaに発表した作品の半分も単行本になってないんじゃないかという有様だし、成田美名子のような売れっ子にしてからが、『あいつ』連載終了直後に発表した二年四組シリーズの二作目「二年四組その逆襲」がようやく収録されたのは驚くなかれ『CIPHER』の三巻目の巻末だったりする。(絵柄及び内容のミスマッチなことはなはだしい!)

 まったく読者をバカにしているというか何というか、何にしろ何とかして欲しいものではあります。


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