コラム(4)


【木製機キ107】

日本の木製機開発は、全てが泥縄だったわけではありません。木製機開発に関しては、戦前から研究していた中島の井上真六技師がいました。
戦時中の「航空朝日」に、井上技師が木製機での使用に適した満州の木材の植生について記述した記事がありました。号数は忘れましたが、航空図書館で閲覧することができますので、興味がある方は探してみてはいかがでしょう。

井上技師は中島を退社後、陸軍機向け木製機の開発を目的とした富士飛行機を設立。しかし海軍が富士飛行機を指定工場としたため、退社して東京航空機に入社。ここで開発したのが、キ番号でキ106の次となる、全木製練習機のキ107でした。
かつて、試作のみで終わったという情報が多かったのですが、実際には新潟の村上(木工業の盛んな町ですね)で量産に入っていたそうです。40機以上が完成しましたが、実際に訓練に用いられたのはごく一部だったようです。
結局、戦前から木製機の必要性を研究してきた井上技師の努力は実質的には実ることはありませんでした。それはある意味では、パイロットを志望した若者の犠牲が少なくなったという事かもしれません…。


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