コラム(3)


【キ84の弟たち】

今回は、日本機に関する話。大戦後期、資源不足が予測される中、キ84・四式戦闘機の生産を維持・拡大するために企画された機体についてです。
まあ、これをわざわざ読んでおられる方ならご存知であろうことばかりですが、おさらいと言うことでw

○立川・キ106:四式戦を全木製化した機体。
○中島・キ113:胴体前半の骨組み等が鋼製、表皮はジュラルミン製、胴体後半は木製。
○中島・キ84U:後部胴体と翼端を木製化した機体に立川飛行機が着けた仮称。

結局、これらの機体は実戦に間に合いませんでした。
航空機設計者であった鳥養鶴雄氏も、「木製機を作ることではなく、飛行機を沢山作ることが大事。翼桁などは軽金属を使っても良かったのでは(大意)」と書かれていますが、まあその通りだと思います。
ちなみに、翼桁うんぬんは飛行艇「蒼空」についての話ですが、木材と金属をつなぐ接着剤が、木材同士の接着剤より更に難しいという問題もあったようです…閑話休題。
少しでも早く、軽金属を節約した機体を戦場に送り出す、その観点から考えれば、こういう流れの方が…と妄想したのがこちら。

○キ106:胴体後部木製化の試作機
○キ84U:キ106に準じ、後部胴体を木製化した機体の仮称。
○キ113:キ84の胴体前半鋼製化の試作機
 鋼材も不足した時は、エンジンカウル、主脚カバー、動翼骨組みのみ鋼製化に留める。
○キ84U:キ113に準じ、一部鋼製化した機体の仮称

もちろん、実際にはそうではなかった理由が在る筈です。
全木製機が第一線で使用可能なら、アルミ系資源は大きく節約できますし、モスキートの活躍を見て、その可能性は高いと思われたのでしょう。
もし部分木製化では、木工工場を利用してその部分を作成しても、結局は中島など既存の最終組立工場に持ってこなくてはならない。全木製化の場合、今まで航空機産業と縁の無かった企業に新工場を設立させることで、日本全体の生産能力を向上させる事が出来る訳ですね。
実際、キ106の生産は、立川の他に、富山の呉羽、北海道の王子という二つの新設航空機製造会社で生産を始めていました。
それでも、木金鋼混合のキ86Uの事を夢想してしまいます。


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