終らない戦争(隠匿された毒ガス兵器)  

相模海軍工廠・寒川と平塚にあった秘密毒ガス工場 No.6

―  遺棄毒ガスによる深刻な健康被害 ― 


北(プロデューサー)



 海軍の秘密毒ガス工場(相模海軍工廠・寒川、海軍技術研究所・平塚)では最大3000名以上の徴用工、動員学徒、女子挺身隊、そして朝鮮から強制連行された人たちが毒ガスを含む化学戦の製造に従事させられ毒ガス等に被災した。しかしながら多くの被災者の状況は今もって不明のままである。被災者は慢性気管支炎、肺がん等の疾病に苦しみ続け、無念の想いで死亡しているのが現状です。そして毒ガス工場で製造された兵器としての毒ガス弾、その原材料は戦後隠匿、遺棄され、国内はもとより、中国大陸で多くの被害者をうみだしている。中国では2003年8月チチハル市の工事現場で、びらん性毒ガス、イペリット(マスタード)入りのドラム缶5個が掘り出され、その漏洩により1人が死亡43人が負傷するという大惨事が起き、被害者は日本政府に対し恒久的な医療保障を求め提訴も視野に入れ政府に責任ある対応を求める(東京新聞6月28日付)としている。チチハル事故の被害者の約7割が10代から30代で将来の症状悪化におびえながら生活している。中国大陸に遺棄した毒ガスは200万発以上、遺棄毒ガスによる被害者は2,000人以上にのぼる。

 ―  寒川、平塚、神栖での健康被害は ―

 私達はことあるごとに寒川(建設現場作業員11名負傷)、平塚(3名負傷)、茨城県神栖町(毒ガス成分に汚染された井戸水を飲用し、慢性有機ヒ素中毒になった135名に健康手帳交付、被害を訴える住民は数百名に及ぶ)の健康被害の詳細を公表する様求めてきましたが、「個人のプライバシーの問題」としてとりあわれず、寒川、平塚は「快方に向っている」と言われ続け、更に神栖町の「汚染米」に関しては「安全」とされてきた。しかしながら事実は異なっていた。
 土壌、地下水が毒ガス成分で汚染され、そこからとれる農作物は当然汚染される。
 2004年9月神栖町の農業井戸と2004年産米の一部から有機ヒ素が検出され、出荷自粛。しかし2003年米は「安全」とされ無検査で流通していた。この段階で周辺井戸は毒ガスの嘔吐剤(あか・2号特薬)の成分ジフェニールシアンアルシン酸に高濃度で汚染されており、農作物への影響が考えられてしかるべきだった。結果2005年5月神栖産米を食べた41人から有機ヒ素が検出され、健康被害の拡大をまねいている。有機ヒ素はわずかな量でも長期間摂取すると遺伝子(DNA)に作用し発ガンのリスクが高くなる。中枢神経障害、小脳失調、脳血流低下の症状が神栖町の生体影響では顕著であり、汚染が低濃度で現在症状がなかったとしても、経過観察が必要だし、未認定の数百名の地域住民を無視する環境省の認定制度は論外である。平塚の場合30年前まではほとんどの家庭で井戸水を飲んでいた。地下水、土壌の汚染が確認された今、過去にさかのぼって健康調査が必要とされている。
 2002年9月25日〜30日にかけて国交省さがみ縦貫道建設現場(寒川町)で作業員11名がびらん性毒ガス・イペリット(マスタード)と催涙ガス・クロルアセトフェノンの入ったビール瓶(キリンビールと書かれている)の破壊により被災した。発表は11月、被災者は10日後に病院へ、皮膚のびらん、のどの痛みが激しくなるも対症療法のみで毒ガスが原因とされ治療が始まったのは1ケ月後、しかし、イペリットの治療法は現在に至るもなし。1年後も改善されず(11名のうち2名は染色体異常が認められ)2年間再発、軽快を繰り返している。「イペリットは発ガン性、催奇形性、慢性気管支炎などの後遺症の発生の報告があり、radiomimetic とも言われ、その作用は放射性に擬似し、染色体異常などが発生する報告がある」(日本学術会議2005年、3、23報告書)何故この様な重大な健康被害を隠すのか。
 平塚で負傷した3名はどうなのか?シアン化水素(青酸)による呼吸器障害と塩素ガス(ホスゲン)による遅発性呼吸障害と医師によって所見が分かれている。何故なのか
 想定される毒ガス成分のみの検査(発見された385本(2004.3.22記者発表)のうち101本からシアン化水素(青酸)検出)で不明の284本は無害化処理として内容も確認せず破壊処理されたため。この3名に今後どの様な症状が出るのか、国はどう対処するのか。責任は重大である。

戻る