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川原は生きている


小林



平塚市博物館に入り、最初に目に付く展示が相模川の川原を再現したこの「川原は生きている」のジオラマです。手前のボタンを押すと、コアジサシの鳴き声や展示の説明がランプで示されます。平塚市博物館のテ ーマは、相模川の自然と文化です。相模川は、かつて水量の多い豊かな自然を誇る川でした。現在は、寒川取水堰まで海水が逆流する直線的な川になりました。本来の川は蛇行することで、様々な環境を作り出していました。水中は淵と瀬という深い部分と浅い部分があり、陸は石のごろごろした乾燥した砂礫地やじめじめした湿地、自然堤防の土手、水際など多様な環境で川は構成されます。生物は、そうした様々な環境で上手に生きています。環境と生物は、密接な関係にあります。また、川の上流の源流域、中流、下流、河口でも環境が変わります。
ところで、展示の砂礫地のような殺伐とした環境を見て皆さんはどう思われるでしょう。いい環境だと思いますか。環境の復元や創造など、昨今環境配慮が話題になりビオトープや緑化などの呼びかが見られます。しかし、環境にはすでにその土地の特性があります。地理的、気候的、地質的、歴史的などの特性、それと人や生物との係わりなどで環境は決まります。そうした環境要因を考えることなく緑化やビオトープを作るのは、環境に配慮したとは言えません。つまりこうした砂礫地は人間から見ると何の価値もないように見えますが、そこに生きる生物にとっては重要ですし、このような環境こそが川という自然条件の中で生物の多様性が保たれた環境と言えるのです。
さて、ジオラマに目を向けてみましょう。上空では、コアジサシが飛び交っています。川原では、コチドリ、イカルチドリ、コアジサシ、カワラヨモギ、テリハノイバラ、カワラニガナなどの生物が紹介されています。川原で生きる生物は、乾燥や外敵から発見されやすい、貧栄養などの川原の環境に生きるために工夫をしています。カワラバッタは、川原に似た色でカムフラージュをしています。これはコチドリの雛もです。カワラノギクは、相模川や多摩川、静岡県の一部の地域でしか見られない稀少な植物です。カワラノギクの他にも、川原の生物のいくつかは神奈川県レッドデータリストに記載される危機的な状況になりました。
また展示の鳥は、バードカービング(木彫りし着色)で原寸大に作られています。多く見られるコアジサシは夏鳥と言い、ツバメのように春になると南の地方から渡ってくる鳥です。野外で見るとツバメを白くして、少し大きくした感じです。川や海で、小魚をダイビングして捕まえます。地元では、アユサシと呼ばれていました。神奈川県では、酒匂川と相模川の中州、東京湾の埋め立て地で繁殖します。魚をくわえた雄のコアジサシが雌に渡そうとしているのは、求愛給餌と言いプロポーズです。コアジサシは、中州で集団繁殖することで外敵に備えています。また、コチドリがけがをしたふりをして外敵の目を引き付け雛から遠ざけようとしているのは、擬傷と言う行動です。
この展示を見たら、次は野外に出かけ実物のコアジサシに出会ってください。

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