平面上に幾つかの点があって、これらの点をなめらかにつなぐ曲線を求めることを 補間といいます。つまり本来1つの曲線で表されるはずが、部分的な点しか分かって いないとき、これらを元に不足した間の点を補って曲線を近似するのが補間です。 ここでは最も簡単な線形補間を取り上げます。線形補間とは、点を折れ線で結ぶこ とです。折れ線で近似とは何とも知恵のない話にみえますが、画像処理では強力な働 きをすることを以下で見てゆきます。 2点間を線分で結んだとき途中の点は内分点になります。内分点は高校の数学で学 びます。 この基礎事項が、画像の拡大・縮小を始め様々な画像処理で使われるアルゴリズム の原理の1つです。内分点 まずは、内分点を求める式を導いておきます。
上の図で、点A、Bを p:(1-p) に内分する点Cは次のようにして求まります。 ただし、pは0〜1までの数です。 この式は、2つの点A、Bの座標値を (1-p):p の割合で混ぜると点Cの座標値が 求まるという見方をすることもできます。この様な立場をとると、座標点だけではな く座標ごとに値をもつ場の量に対しても使えます。 例えば、大気の温度を地上からの高さ h の関数 T(h) で表すと、高さの差δが十分 に小さい2点間では、比 p:(1-p) に内分する高さの温度は T = (1-p) T(h) + p T(h+δ) と線形近似することができます。 これから考えるのは、画素(ピクセル)からなる座標での色データの関数を考えて、 i行j列の画素の色すなわちRGB値(Rは赤、Gは緑、Bは青の0〜255の階調)を φ= φ(i,j), と書くことにします。画像の拡大(双線形補間) 画像を拡大する場合を考えます。幅を zx倍、高さを zy倍すると、画像の画素数は拡大 した分増えますので、画素に隙間ができる格好になります。この隙間を補間して埋めるこ とを考えます。 それには、拡大した画像の座標値(i,j)から元の画像の対応する座標値(x,y)を座標変換 して求めます。変換は単なるスケール変換なので、拡大した倍率で割れば元の座標が求ま って(つまり逆変換を行う)、 x = i/zx, y = j/zy. で与えられます。ここで (i,j) は画素の座標値なので整数値ですが、(x,y) は実数値にな ることに注意しましょう。このとき、元の画像で (x,y) を囲む4つの画素の座標値を求め ます。 上の図に示すように、 m <= x < m+1, n <= y < n+1, という関係を満たす整数 m,n を求めます。 つまり、m は x の小数を切り捨てた整数値で、n は y の小数を切り捨てた整数値です。 次に、点(x,y)の色φ(x,y)をこの点を囲む4つの画素の色 φ(m,n), φ(m+1,n), φ(m,n+1), φ(m+1,n+1) を使って、次のようにして線形補間して求めます。 これを双線形補間法といいます。以上で点(x,y)の色φ(x,y)すなわち拡大した画像での 点(i,j)の色φ(i,j)が求まりました。後はプログラムの実装です。
プログラム例 完全なプログラムを示します。このプログラムは、Windows 95/98/2000 用の基本グラ フィックス・クラスライブラリ GLIBW32 (ver 1.33以上)を使っています。 また、このプログラムは画像の拡大と縮小の両方ができます。
// scale.cpp (c) Yamada, K #include "glibw32.h" const int Xsize = 320, Ysize = 290; // ビットマップのサイズ void scale(GRAPH&, GRAPH&, double, double); void table(GRAPH& , int, int, int [2][2], int [2][2], int [2][2]); int main() { ginit(2*Xsize, Ysize); // グラフィクス・ウィンドウを開く loadbmp("loadbmp.bmp"); // ビットマップのロード GRAPH g1,g2; g1.window(0, 0, Xsize-1, Ysize-1); // ロードした画像の座標 g1.view(0, 0, Xsize -1, Ysize-1); g2.window(0, 0, Xsize-1, Ysize-1); // マッピングを行う座標 g2.view(Xsize, 0, 2*Xsize-1, Ysize-1); // g1のピクセルをスキャンして、g2にマッピング scale(g1, g2, 2.0, 2.0); // 2×2倍に拡大する gend(); // グラフィクス終了 return 0; } // オブジェクトg1の画像を拡大・縮小してオブジェクトg2にマッピング // zx :幅の拡大・縮小率 // zy :高さの拡大・縮小率 void scale(GRAPH& g1, GRAPH& g2, double zx, double zy) { int xs = Xsize/2; int ys = Ysize/2; int m,n; int R[2][2], G[2][2], B[2][2], r, g, b; //RGB値 double x, y, p, q; for(int i = -xs; i < xs; i++){ x = i/zx; if(x > 0) m = (int)x; else m = (int)(x-1); p = x - m; if(p==1){ p=0; m=m+1; } for(int j = -ys; j < ys; j++){ y = j/zy; if(y > 0) n = (int)y; else n = (int)(y-1); q = y - n; if(q==1){ q=0; n=n+1; } if((m >= -xs) && (m < xs) && (n >= -ys) && (n < ys)){ // 双線形補間 table(g1, m+xs, n+ys, R, G, B); r = (int)((1.0-q)*( (1.0-p)*R[0][0]+p*R[1][0] ) + q*( (1.0-p)*R[0][1] + p*R[1][1]) ); g = (int)((1.0-q)*( (1.0-p)*G[0][0]+p*G[1][0] ) + q*( (1.0-p)*G[0][1] + p*G[1][1]) ); b = (int)((1.0-q)*( (1.0-p)*B[0][0]+p*B[1][0] ) + q*( (1.0-p)*B[0][1] + p*B[1][1]) ); } else{ r = g = b = 0; } // 値が範囲外 if( r < 0 ) r = 0; if( r > 255) r = 255; if( g < 0 ) g = 0; if( g > 255) g = 255; if( b < 0 ) b = 0; if( b > 255) b = 255; g2.pset(i+xs, j+ys, RGB(r,g,b)); // 補間した色で点を打つ } } } // (x,y)の周辺4画素の色を求める void table(GRAPH& g, int x, int y, int R[2][2], int G[2][2], int B[2][2]) { COLORREF crf[2][2]; // COLORREFはRGB値を4バイト整数で記憶するマクロ型 for(int i = 0; i < 2; i++) for(int j = 0; j < 2; j++){ g.getpixel(x+i, y+j, crf[i][j]); // 座標点の色を読み出す R[i][j] = GetRValue(crf[i][j]); // R色の階調を取り出す G[i][j] = GetGValue(crf[i][j]); // G色の階調を取り出す B[i][j] = GetBValue(crf[i][j]); // B色の階調を取り出す } } |
実行結果 プログラムを実行した結果を下に示します。2×2倍に拡大した場合です。 拡大した画像は、なめらかに色調が変化していて上手くいっています。 縮小した結果を下に示します。 縮小の場合も、上手く描かれていて成功といえるでしょう。
以上、画像の拡大・縮小の実行ファイルとソースファイルのダウンロードはこちらです、
画像の拡大と縮小
実行ファイル、ソース・ファイルと画像ファイル Windows 95/98/2000 上で動作します。 |
scale.lzh (205KB) |
* このソフトウェアはウィルス検査を行っています。 * ファイルは吉崎栄泰氏による LHA (Copyright(c)1988-92 H.Yoshizaki)を 使って圧縮しています。更に進んで 以上のことが理解できれば、いろいろな画像変形も同じ手法でできます。要は、 元の画像と変形した画像との間で座標変換を正しく定義することです。上の拡大・ 縮小プログラムでいえば、(i,j)から(x,y)への逆変換です。 以下の例は実行結果だけを示します。プログラミングの演習問題として挑戦し てみてください。 1つ目は画像を45°回転したものです。 回転の場合も補間してマッピングする必要があります。単純に座標点を回転させる だけだと画素に穴が空いてしまうでしょう。 2つ目の例は、CGの分野でテクスチャマッピング(texture mapping)と呼ばれ るテクニックの典型です。 下は、背景画像を半球面上に貼り付けて、それを背景に射影するプログラムの実行 結果です。MS Windows のスクリーンセーバーで、こんなのがディスプレイ内をうろ うろと動き回るのがあるでしょう。 高度な処理を行っている様にみえますが、拡大・縮小プログラムと本質的に同じ です。違うのは座標変換のところだけです。実質的には数行程度書き換えるだけで す。 この概念を理解するには、平面に描かれた世界地図から地球儀を描くことを考え ることです。 平面の世界地図は緯度と経度の角度で描かれています。この2つの角度は3次元 空間の球面上では極座標の2つの角度に対応しています。従って直角座標から、極 座標への変換を定義して、その逆変換を行って描きます。 == 変換 ==> 上の右図は、そのようにして左の地図を球面に貼り付けて描いた地球儀です。 分かってみると「なあんだ」というようなプログラムです。 次のページで簡単に解説します。
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