開発の経過
実験は430MHz帯で行うことになりました。当時はまだこのバンドはがらがらで他に迷惑がかからないのと、JR1SOPが当時はまだ珍しかった430MHZ帯の送信機をはじめ、BIRDの通過形電力計やアッテネーターなど高性能の測定器を提供してくれたからです。
また実験の場所はJH1ECWが自宅の庭を提供してくれました。
1972年9月10日、最初に行った実験は次のようなものでした。
2エレメントでいろいろなマッチングを試したのですがSWRが下がらないので、まずは単純な1エレメントダブルループの性質を調べようということになりました。430MHz用の1辺1/4λのシングルエレメントダブルループを作り、ガンママッチをはじめ、さまざまな給電法で試してみましたが、どうしてもSWRが2.2までしか下がりませんでした。
しかしとにかく指向性だけでも調べてみることにしました。すると、サイドにものすごく切れるところがあるのと、マッチングがとれていないにも関わらず、フロントではダイポール比で9dBという予想外のゲインがあることが解りました。
しかし、次のミーティングにFCZが朗報をもたらしました。まん中のエレメントをスライドさせてみたらSWRが下がるポイントがあったというのです。FCZは自宅でも2mで実験を重ねていたのです。(残念ながら私はHFの機械しか持っていなかったので自宅では実験ができませんでした。)
私はこの方法はあまり好きではありませんでした。1辺が1/4λで給電点が真ん中にあるときが最もゲインが高いはずだからです。しかし、他にSWRを下げる方法が見つからない以上、この方法でさまざまなサイズについてデータをとろうということになりました。
そこで、今度は同じ1エレメントダブルループでも幅を変えて、さまざまなバリエーションを作り、最もSWRが下がったところでビームパターンやゲインを測ってみようということになりました。
高さはみな1/2λで幅が、0.25λ、0.22λ、0.15λ、0.08λと4つのアンテナを作って11月12日、2度目の実験が行なわれました。
マッチングは真ん中のエレメントをスライドするという方法で取り、ゲイン(ダイポール比)と指向性を測定しました。その結果わかったことは、幅が狭いものほど下のところでマッチングがとれるということと、幅0.15λのものが最もSWRが低く、1.2まで下がることでした。LC成分が0のとき50Ω(伝送路のインピーダンス)に近いインピーダンスになるのでしょう。
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