愛と恋愛

　愛と恋愛は似て非なるものである。どこが似ててどこが異なるのかを明らかにしたい。愛とは他者の幸福を思いやることである。その人の幸福とは何か、どうすれば人は幸福になれるかを考え、そうなるベく行動することが愛である。そこには何の見返りも期待しない、そういうものである。したがって全き善とされる。

　恋愛はどうか。愛する人の幸福を思いやるのは「愛」と同じである。だが恋愛の場合は相手の人にも同じ愛を自分に向けてくれなくてはいやだ―という感情が伴う。その人の愛を独占したいと思うのである。これはそうなることによって自分が幸福になるからである。つまりエゴなのである。このエゴが交じってくるという点が「愛」とは決定的に異なる。「恋は邪（よこしま）なもの」と言われるのはそのためであろう。愛は全く非難されることはない。が、恋はそれが相思相愛となったときのみ完成される愛であり、非常に限定された愛なのである。

　したがってこれがうまくいかない場合、つまり片思いの場合、多くは悲劇となる。「振られた女は男を憎む」、これはかなり確からしいことのように思われるが、それは恋愛が純枠な愛とは異なる証拠ではないだろうか。

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