唐招提寺


平成23年、奈良に旅行したときに書いたものです。


 今回の旅行で一番印象深かった場所、それは唐招提寺です。

 今まで、何度も奈良には来たことがありましたが、唐招提寺を訪れたのは今回が初めてでした。入口で拝観料を払い、門を入ると、そこには森閑とした森に囲まれた別世界というか、異空間が広がっていて、何か特別な場所だなという思いが私を包みました。人があまりいないということもありますが、それだけではもちろん説明がつくものではありません。「神(かむ)宿る場所」という言葉があります。心が落ち着いて、神と話ができるような気がする場所とでも言うのでしょう、ここはまさにそんな感じがする場所です。

 以前、新潟の弥彦神社に行った時もそんな気がしたのを覚えています。神社というのは、まさに神と対話をするための場所で、昔からいろんな人が何か特別な思いを抱いたからこそ、そこを「神宿る場所」として祀ったものなのでしょう。

 そうしてみると、唐招提寺も、寺ではありますが、神に通ずるスポットと言えるような気がします。

 金堂に歩を進めると、中から大きな三体の仏像が姿を現します。中央には盧舎那仏、右に薬師如来、左には千手観音が立っています。何の飾り気もなく安置されたこれらの仏像たちは、時間に追われてせわしく通り過ぎていく私達を前にして、悠久の時の流れを見つめ続けているように、静かに佇んでいるのでした。

 ずっとそこに留まっていたいという思いを抱きつつ、門をあとにしたのでした。


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