山の戦略

孫子曰く、彼を知り己を知れば百戦殆(あや)うからず。(謀攻篇)

計画・準備

勝兵は先ず勝ちて而る後に戦いを求め、
敗兵は先ず戦いて而る後に勝ちを求む。(軍形篇)

予測せよ。備えよ。

目的を明確にしよう。
その目的に沿った判断をしよう。

危険を予測しよう。
危険箇所はどこか?
どのような場合に撤退するか?
どこで、どのような"ミス"を犯しやすいか?
事故った時、どのようにして被害を最小限に食い止めるか?
シュミレーションしてみよう。

常に予測不可能な領域が存在する。(だから面白い)
そして、予測不可能な事項は何か把握しよう。


山行

兵の形は水に象(かたど)る。
水の形は高きを避けて下(ひく)きに趨(おもむ)き、
兵の形は実を避けて虚を撃つ。
水は地に因りて流れを制し、兵は敵に因りて勝ちを制す。
故に兵に常勢無く、水に常形無し。 (虚実篇)

状況を把握しよう。
時間と場所により状況は変化する。 時間と場所により可能な事、不可能な事、やりづらくなる事、等が変化していく。
タイミングを逃さないようにしよう。

先を読もう。
この先は、尾根? 樹林帯? 岩場? ガレ場?
そして、気象条件はどうなる?
冬なら雪質はどうなる?

より有利な状況を作り出そう。


認識・解釈

的確な判断のために"確実な要素"と"不確実な要素"を分けて考えよう。
確実な要素:手持ちの装備、現在の気象条件、等。
不確実な要素:明日の天気、これから行く場所の様子、人の心理、等。

ある現象(出来事)からの解釈は一つだけとは限らない。
新しい解釈を試みよう。
再解釈を可能にする為に現象(出来事)と解釈を区別しよう。


法則・理論

原因があれば結果がある。
原因と結果は法則で結ばれる。

[原因] → |
          |--- [法則] ---→ [結果]
[条件] → |

不十分な情報を基に判断せざる得ない場合がある。(むしろ十分な情報を得られる事は稀ではないだろうか。)


ゲーデルの不完全性定理

[クイズ]
ある島には、本当の事しか言わない人(騎士)と嘘しか言わない人(奇人)が住んでいます。 それ以外の人(本当の事を言ったり、嘘を言ったりする人)はいません。 また、騎士と奇人は外見から区別できません。

さて、あなたは島の王宮に行きたいのですが、二手の別れ道に来ました。 どちらに行けばいいのか分からないので、そこに立っていた島の住人に道を尋ねる事にした。 彼はお城への道を知っているはずだったが、彼が騎士なのか奇人なのか分かりません。 あなたは彼に"はい"か"いいえ"で答えられるたった一つの質問で、どちらの道に行くべきか知る事ができます。 どのような質問をすればいいのでしょう?

[ヒント]
どちらの道に行くべきか知る事ができた後も彼が騎士なのか奇人なのか知る事はできません。


[答]
「あなたは左の道が王宮へ行く道だと主張するタイプ(騎士か奇人)の人ですか?」 もし答えが「はい」なら左の道へ、「いいえ」なら右の道へ行けばいいのです。

答えが「はい」であったとしよう。 もし彼が騎士ならば真実を言ったのであり、彼は左の道が王宮に通じることを主張するタイプの人である。 つまり、左の道を行けばよい。 一方、もし彼が奇人ならば、彼の答えは嘘であり、彼は左の道が王宮に通じることを主張するタイプではない。 つまり彼と反対のタイプの人、すなわち騎士だけが左の道が王宮へ通じると主張することになる。 騎士がそう主張することは実際にそうだということであるから、左の道はたしかに王宮へ通じることになる。 したがって、「はい」という答えが本当でも嘘でも、左の道は王宮に続くことがわかる。

今度は、住人の答えが「いいえ」だったとしよう。 もし彼が真実を告げる人なら、彼は本当に左の道が王宮に通じると主張するタイプではないことになり、奇人だけがそのような主張をすることになる。 奇人がそう主張のであるから、それは嘘であり、左の道は王宮に通じないことになる。 一方、もし彼が嘘を言っているのであれば、彼は本当は左の道が王宮に続くと主張することになる。(なぜなら彼はそうしないと言ったのだから)。 しかし彼は奇人であることから、彼の主張は嘘であり、左の道は王宮に通じないことにになる。 したがって、もし答えが「いいえ」ならば、それが本当か嘘かにかかわらず、右の道を行けば王宮に着けることがわかる。

無限のパラドックス   パズルで学ぶカントールとゲーデル
レイモンド・スマリヤン 著 長尾確 訳   白揚社 
から引用

こういう論理は判らない事項を組入れて考える時に役に立つと思う。 この本(無限のパラドックス)は他にも論理パズルが載っていて面白かったです。
また、次の様なことも書いてありました。

完璧な理論学者とは、ある問題が与えられたら、もしその問題を解くのに十分な情報が与えられたときは、十分な情報があることを知っていて問題を解くことができて、もし十分な情報が与えられていなければ、情報が十分ではないことを知っている人のことだ。

つまり、ある現象を理解できない場合、ある程度予想をつけて、「どんな情報があれば何が分かるのか?」と考えるのは現象を理解するのに有効な第一歩だと思う。

不完全性定理とこのパズルが関係あるのかよく分からなかったが、不完全性定理が何なのかちょっと説明します。 数学の定理なのですが、"数学の公理系は不完全"という内容です。

  1. 自然数、整数、有理数、実数のそれぞれの無限集合の大きさは同じか?
    感想: そんな事よく考える気になったなー。無限なんだからどれも同じじゃない?
  2. 自然数と1対1の対応をする事により、"整数と有理数の無限集合"は"自然数の無限集合"と同じ大きさ(大きさは無限なので"濃度"と言っていた)であることが分かった。
    そして、"有理数の無限集合"は"自然数の無限集合"よりも大きい事が分かった。
    "有理数の無限集合">"自然数の無限集合"
    感想: "整数と有理数の無限集合"は"自然数の無限集合"と同じ大きさという所まで解ったがそれ以上は解らなかった。

    その後いろいろ調べてみて多少解ってきた。
    「べき集合」がどのようなものか。
    「元の集合」と「べき集合」の大きさの関係。
    "自然数の無限集合"の「べき集合」が"有理数の無限集合"である。
    等が少しづつ解ってきた。

  3. それでは"自然数の無限集合"と"有理数の無限集合"の間の大きさの無限集合は存在するのか? (連続体仮説)
    これは未だ解決していない。 現在の数学の公理系からでは証明も反証も出来ない事が解っている。 つまり真か偽か特定できないという事。
    感想: 証明してあったがさっぱり解らなかった。しかし"数学の問題が数学で解く事ができない(今の所)"と証明されたのはスゴイと思った。
  4. 結論: 自然数論を含む述語論理の体系Zは、もし無矛盾ならば、形式的に不完全である。
    感想: よく分からないが、スゴイ。 最も理論的と思っていた数学が"不完全"と証明されてしまったのは驚きだ。 「人間の知性のある限界が示された」といわれる。

Link
数学基礎論史  
孫子の兵法 完全版  

興味のある人は次の本を読んでみて下さい。