ホイール・アライメントの測定

簡単な道具で測定できる

車の足回りの話を始めると、最初に登場するのがホイール・アライメントです。簡単に言ってしまうと、タイヤがどっちを向いているかということで、適正でないと、真っ直ぐ走らなかったり、コーナリングが不安定になったり、タイヤが片減りしたりします。ホイール・アライメントは、カーショップやタイヤショップに行けば正確に測定してくれますが、測定料+調整料で4輪で2万円はするそうです。ホイールを新調したときなどは安心の為に測定した方が良さそうですが、普段の点検には高すぎます。せめて、大きくずれたかどうか、自分で簡単に測定できれば安心です。そこで、簡単な道具で可能なSW20のアライメントの測定の方法を紹介しましょう。

注意 : アライメントの測定の前には、タイヤの空気圧の確認をしておきましょう。

トーの測定 2000.1.14
車高の測定 2000.1.28
キャンバーの測定 2000.1.28
サイドスリップとは何? 2000.1.15
キャスターとは何? 2000.1.28

最終更新日:2000.1.28


トーの測定

トーの測定

トーの測り方

アライメントで代表的なのはトーと呼ばれるもので、車の上からタイヤを見たとき、前方が狭まったハの字になっている状態をトーイン、逆ハの字になってる状態をトーアウトといいます。トーインの状態では直進安定性が良くなり、トーアウトでは不安定、逆言えば曲がりやすくなります。普通の車は、大抵僅かにトーインに設定します。SW20の場合は、ミドシップということでスピンしやすいため、後輪のトーは大きめにトーインしています。

測定方法は左右のタイヤの距離を測ることで行います。タイヤを上から見たときの前方側(A)と、後方側(B)の間の距離を測り、その差(B−A)が何mmあったかで示します。前が狭ければ(結果が+なら)トーインということになります。2型のSW20の前輪は1±2mmのトーイン、後輪は6±2mmのトーインにするように規定されています。

では、実際の測定法を紹介しましょう。まず、測定するまえにサスペンションをなじませて(大きく上下にゆする)直進で5mほど手押しで前に進めます。

次は、糸がついたオモリを2つ用意します。オモリはできるだけ小型で重いものが、糸は細くて柔らかい物が良いです。オモリの下部はとがった形状であれば更に良いでしょう。私は手持ちの電子部品の抵抗器(3W)を使って製作しましたが、少々軽いので釣りのオモリなんかの方がベターです。ポイントは糸を回した時にオモリがふらつかないで回るように製作することです。オモリがふらつくようでは、測定の度に違う結果がでてきます。少なくても1mmの精度で測定できなくてはなりませんから、最低0.3mmの精度は欲しいところです。

測定に使ったオモリ

そのオモリを下の写真(撮影のため、ハンドルを一杯に切った状態だが、実際には直進状態にしておく)のようにタイヤの前方の中心にマジックか何かで印を付けます。メジャーでタイヤの高さを測定し、その半分の高さ(正確には車重でタイヤがへこむので半分より少なめ)の部分に印をつけると良いでしょう。そして、ここにテープでオモリのついた糸を貼り付けます。オモリが路面ぎりぎりになる高さに糸を調整します。これを左右両輪共に取り付け、オモリとオモリの間の距離をメジャーで測定します。私はスチール製の巻尺を使いました。前輪だけでなく後輪もいっしょに測定しておくと手間が省けます。

オモリの取り付け

次は車をタイヤ半回転分手押しで前に進めます。ちょうど半回転分車を進めるのは少し難しいかもしれません。タイヤのサイドウオールにテープでも貼り付けて、テープを見ながらゆっくり手押しするとい良いでしょう。進み過ぎたら始めからやり直しです。最終的には先につけた印が、前と同じ高さになるまで動かします。SW20は前後のタイヤの径が異なるので、タイヤの後方側は前後輪いっしょに測定するのは無理なようです。動かした後は、タイヤの後方側にオモリを取り付け同じように距離を測定します。トーの計算は、「後方の距離ー前方の距離」です。これが+ならばトーインということになります。

SW20(2型NA)の測定結果(2000.1.14)

前輪・前方の距離 1472mm
前輪・後方の距離 1471mm
後輪・前方の距離 1434mm
後輪・後方の距離 1440mm

2000.1.14に測定した結果は、前輪は1471mm-1472mm=-1mmとなり、僅かにトーアウトしていました。一応規定の範囲内には入っているようです。逆に後輪は1440mm-1434mm=6mmということで、規定ピッタリのトーインとなっていました。この日は風が強く、オモリがふらついて測定がやっかいでした。どの程度の精度で計れているかわかりませんが、両輪ともに規定に近い値でしたので、ほぼ正しいように思えます。新車時からずっと放置してあったのならズレていそうですから、恐らく中古車屋か、修理の時にディーラーが調整しなおしたのではないかと思えます。ちなみに、主要緒元では、前輪軸距が1470mm、後輪軸距が1450mmということになっていますので、後輪の軸距が短すぎるのが気になります。うまくタイヤの中心を見つけられなかっただけかもしれませんが・・・


車高の測定

正確には、車高はホイール・アライメントではありませんが、密接に関係してくるパラメータの1つです。MR2の整備解説書には車高の測定方法も書かれています。もっとも測定はできても調整はできない項目です。測定個所は以下の図のようにロワーアームの取り付けボルトの頭の中心から路面までの距離を測定します。規定(2型)ではフロントが217mm、リアが193mmということになっています。

フロントの車高測定
リアの車高測定
車高の実測結果(2000.1.14)
左・前輪 204mm
右・前輪 206mm
左・後輪 162mm
右・後輪 174mm

2000.1.14に実測してみると、前輪は10mm程度、後輪に至っては2〜30mmも車高が落ちているようです。これでは、ずいぶんキャンパが付いてしまっているように思えますが、トーは規定値なのでトーだけ強制的に調整されたように思えます。タイヤも内減りが激しく、外側が5〜7部山なのに対して内側はスリップサインぎりぎりの2〜3部山といったところです。ローダウン・スプリングが入っていたのか、それとも経たって車高が落ちたのか不明ですが、特に後輪は早めに対処しないといけなさそうです。

2000.1.21にも測定してみました。前回の測定では、前輪と後輪の差がありすぎ妙でしたし、タイヤの空気圧が後輪で0.3ほど少なく誤差がでた可能性が考えられました。しかし、結果には大きな差はありませんでした。左右差については、測定した駐車場の路面が僅かに傾いている為か、車の方向を変えて測定してみると左右差は軽減されました。ただ、左側は少し低めなのは変わりません。それ以上に、高さは170mm前後と前回同様です。今回もリア・トランクの荷物はそのままに測定しましたが、さほど重い物が入っているわけではないので、大差は無いでしょう。やはり、後ろのサスの経たりは大きそうです。

2000.1.28には、フェンダとタイヤの上面の距離を測ってみることにしました。あまり厳密に測定したわけではありませんが、前輪は約5.5cmでした。それに比べ、後輪は左が4cm、右が3.5cmという結果です。先に車高を計った駐車場とは別の場所なので、路面の傾き具合が異なるので一概に言えませんが、やっぱり尻下がりで左右のバランスが悪くなってしまっているようです。


キャンバーの測定

キャンパー角は、タイヤを正面から見たとき、垂直方向にどれだけ傾いているかを示すものです。車の前からみて、タイヤがハの字になって傾いているものをネガキャンといいます。車がコーナーを曲がるときは、遠心力で外側のタイヤに車の荷重が掛かります。このときロールして車体が傾くため路面とタイヤの角度も変わります。ロールの角度とネガキャンの角度が合えば、荷重をタイヤの縦方向で支え易くなるため、より踏ん張りが利くわけです。では、キャンパーが多いほど良いかといえば、そうでもなく、直進状態ではタイヤの内側の角しか使えなくなるので、タイヤが内減りしたり、真っ直ぐ走らなくなったりします。

2型のSW20では、前輪のキャンバーは-1度00'±45'(左右差30')、後輪は-1度35'±45'(30')ということになっています。ただ、これを調整する手段はありませんし、測定も少し面倒そうです。また、何らかの原因で車高が下がると、キャンバは大きくなってきます。私の車は、タイヤの内減りが激しく、車高も落ちているようなので、キャンバーは大きめな気がします。(角度の「'」の単位は分です。1度=60分になります)

簡単なキャンバー測定

分度器と物差しを使って下の写真のような簡単なキャンパー測定器を作ってみました。構造は簡単で、物差しに分度器をセロテープでしっかり固定し、トーを図るときに使ったオモリを分度器の中心に貼り付けただけの構造です。これを、ハブの部分にあてがって測定します。ハブは、ホイールを取り付けるネジが付いている円盤部分です。ホイールのキャップをはずせば中心あたりを見ることができます。直径6cmほどのパイプを使えば理想的に計測できそうです。分度器での測定では、メモリが1度単位にしかついていませんので、さほどの精度は得られないと思いますから、まあ、気休め程度に考えておいたほうがよいでしょう。そのうち、もう少し精度が取れそうな測定器を作ってみるつもります。

キャンバーの測定結果
左・前輪 -1.0度
右・前輪 -1.7度
左・後輪 -2.0度
右・後輪 -2.5度

こんな測定方法で、云々言うのは問題かもしれませんが、おおまかなことは解ります。また、全体的に右が大きめになっているということは、おそらく路面が傾いているのではないかと思えます。このことから、前輪は双方とも1.3度程度、後輪は2.2度程度と考えられますが、後輪には車高から考えて左右差が有るものと思われます。基準値から考えると、少し多めのネガキャンが付いているようです。キャンバーは僅かな量でも、かなり乗り味が変わるそうですから、基準値に戻すと、かなり限界が低く感じられるようになるのかもしれません。


サイドスリップとは何? (工事中)

トーと似たものにサイドスリップというものがあります。これはタイヤがどっちを向いているかではなく、タイヤを転がすとどっちに向かって進んで行くかという測定方法です。実際上はトーと密接にかかわっていますが、キャンパーなども影響します。具体的には長細い板の上に、一輪だけタイヤを乗せて走らせます。板は左右方向に軽く動くようになっていて、タイヤが横方向に動こうとすれば板が横へズレるので、それを測定します。他の車輪は地面についているので動きませんから一輪だけが、どっちに向いて走ろうとするのか調べることができる仕組みです。1m走らせて何mmずれるか調べるのですがSW20は0〜3mm程度が正常とされています。

アイディア次第では、これも簡単な道具で測定できそうなので、そのうちやってみようと思います。


キャスターとは何?

車の直進性を決める要因の1つです。この角度が大きくなればなるほど、直進安定性が増し、少ないほど旋回能力が高まります。簡単な例としては、自転車のハンドルがそうで、ハンドルの取り付けは地面に対して垂直ではなく傾いています。さらに、タイヤの取り付けは前方へせり出しています。これで、自転車はハンドルを押さえつけなくても前方へハンドルが勝手に向いてくれるので、安心して乗っていられます。キャスター角が無ければ、少しハンドルを切っただけで簡単に曲がることができますが、ハンドルは放置すると、どんどん曲がる方へ勝手に動いてしまうので、今度はハンドルを戻すときに大きな力が必要になってしまいます。

SW20の1型は、このキャスターも変更することができたのですが、2型以降では調整することはできません。ちなみに、この調整には、前輪のストラッドバーと呼ばれる、サスペンションを後方から支えるシャフトの長さを調整することで行います。