猫とふな助

作  遠賀香月(おんがかつき)


 昔ある村に、大きな池があって、池の中には、魚たちが住んでいました。
 その魚たちの中で、ひときは大きな、ふな助というふなが、毎日毎日池のまん中を、ぐるぐる泳ぎ回っていました。
 これを見ていた、この池の近所の家に住む猫のニャー公は。
「いろいろな物を食べたが、あの大きなふな助は、さぞおいしだろうな、食べたいなあ!」と思った。
 毎日池の岸にきては、草むらにかくれて、ふな助の様子を見ていました。
 ところがふな助は、池の真ん中を、ぐるぐる回るだけで、幾らまっても、岸の方にはやってきません、岸のちかくに来るのは、小さな魚だけで、ニャー公はなんとか、おいしそうなふな助を、岸によぶ方法は無いかと、草むらの影で、考えておりますが、なかなか良い方法が、分かりません。
 そこへ灰色をした野うさぎが、向こうの草むらから、やってきました。
 猫のニャー公は、野うさぎを見て、知恵をかしてもらおうと。
 「うさぎさん! 私はあの大きなふなを、食べたいのだが、こっちにこさせる良い方法は、ないでしようか、考えてくれませんか?」 野うさぎは長い耳をたてて、聞いていましたが。
「私は草をたべているので、魚の事はしりません」と、そっけない返事をして、草むらの中に、消えていきました。
 困った猫は、いい知恵が浮かばないのが、悔しくなってきました。
 また、そこに同じ家に住んでいる、大きな犬の、太郎がやってきました。
 顔なじみの太郎に。
「太郎さん! 私はあの大きなふなの、ふな助がほしいんだが、池の真ん中にいて、こつちの岸に来ないんだ、岸に来させる良い方法は、無いだろうか? 」と、たのみました。 太郎は首をかしげて。
「そんなに欲しいのか? そうだなあ、それじゃ、ふな助が一番ほしいえさを、岸にまくといい」と、こたえました。
 ニヤー公は。
「そうかふな助が、岸に食べに来たとき、つかまえるといいなあ、どんな物が好きなんだろう? 」
 太郎は。
「人間はミミズで釣っているが、『ふ』が一番いいだろう」といって、しっぽをふって行ってしまいました。
「どうもありがとう」というと、さっそくニャー公は、餌の『ふ』を探しに行きました。 飼い主の台所から、こっそりと『ふ』を取ってきて、岸にばらまきました。
 ふな助が、きずいてくれるかと、岸の草かげで、じっと待ちました。
 すると、こぶなや、どじょうが来て、食べ始めました。ニャー公はこれはいけないと、魚たちを追いはらい、草むらにかくれていたのですが、又ふなや、どじょうが来て、全部食べてしまいました。
 ニャー公は残念でたまりませんが、どうしても、おいしそうなふな助を、食べて見たいと、思っておりました。
 そこにニヤー公の飼い主の主人が、長い釣竿を持って、池にやってきました。
 竿の糸の先に餌をつけ、池の魚釣りを始めました。
 ニャー公は。
「これは面白くなってきたぞ」と、
 主人のほうに甘えるように、近寄っていきました。あのふな助を、釣ってくれないかと、 じっと見ていました。
 主人は何匹かのふなを、釣りましたが、なかなかふな助は、釣針にかかってきません。ニャー公は、一寸心配になってきました。主人は頑張っています。そうしているとついに、あの大ふなのふな助が、釣針にかかって、引き寄せられました。
 ニャー公は。
「これは有り難い、いいごちそうだ」と、にんまりして、主人が魚を入れている、魚おけに近づいていきました。
 また、主人が釣りに、一生懸命になっているとき、そつといただこうと、思っていました。ところが、主人は大きなふなを釣ったので、大変喜んで、帰り支度をして、帰ろうとしています。
 ニャー公は何とか、横取りしようと、思っていたのが、それが出来なくなってしまいました。
 ニヤー公も、主人のあとについて、とぼとぼといっしょに帰りました。
 でもまだ、あきらめずに、チヤンスがあると思っていました。
 その日の夕方家族の食事が終わると、主人がニャー公を呼んだので、何だろうと行って見ると、食べ残りのあのふな助の、大きな骨をくれました。
 あれだけ欲しがっていた、ふな助なのに、骨だけの餌になって、ニャー公は、残念ではがゆくなったが、どうしようもなく、仕方が無いと思い、又いいこともあると思って、骨だけでも食べられたので、辛抱することにしました。



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