地球は星だった

作  遠賀香月(おんがかつき)


 夏の、蒸し暑い夜、夕食も済まして、暑くて眠れそうもない、おじいさんと、孫の純君は、縁側で、涼んでいました。
 おじいさんは、夜空をみ上げながら。
「今夜の夜空の星も綺麗だね、明日も暑いぞ、いい天気じゃ」と、いいました。
 純君は、夜空を見上げて
「うん」と、何気なく答えた。
 純君が住んでいる町は、山々に囲まれて、周囲は暗く空気は澄んでいて、夜空の星は、都会と比べられない程、無数の星が、きらきらと輝いている。
おじいさんは、星の話をしだした。
「純、あの星は何か知っているか?」
「どれよ?」
沢山の星の中から、探し出すのは、容易でなかった。
 おじいさんは。
「星を探すのは、小さな星が集まっている、天の川に沿って、みていくといい、そして一番輝いている、一等星を探しだして、みていくと、解りやすい」
「あの小さな星が、集まっている所だろう?」「そうだ、沢山の星が川のようにあるのが、天の川だ。天の川の中で、北の方にある一等星が、頭の部分で、五つの星が、十字形に並んでいるだろう、あれが白鳥座だ」
「縦に四つ、横に四つ、並んでいるの?」
「そうだ、その南に天の川をはさんで、両側にある一等星で、東側はわし座で、西側はこと座だよ」  純君は一等星を探した。
「真ん中にあるのは?」
「うしかい座で、その南側にあるのが、おとめ座だ」
「それでも、どんな形か解りにくいな!」「うん、星座の中には、二等星も、三等星も、あるからね、どの星と、どの星を、一緒にしたのか解りにくい」
 純君は、なんべんか、星の話を聞いたことはあるが、おぼろにしか覚えていなかった。 おじいさんは。
「こっちに、みえているのが、おおぐま座で、二等星がひしゃくの様に、輝いている先にあるのが、北極星だ、覚えていると、どちらが北か解りやすい」と、おじいさんは、寄ってきて、指をさして教えた。
「北極星は、こぐま座になるが、二等星だら解りやすい」
 純君は、どうやら解ってきたようだ。
「じや、夜中にあの星をみつけると、方角が解るんだね」
「そう、道に迷わずに済むんだ」
純君は、一つ物知りになったような気がした。「北極星近くに、カシオペアがある、その他にへび座や、からす座など、たくさんの星座がある、なかなか覚えられないがね」
 おじいさんも、大まかにしか覚えていない。 純君は、今まで、ぼんやりとみていた夜空に、興味が湧いてきた。
 おじいさんは。
「地球も、月も、太陽も、皆あの星のようなものだ」と、つけ加えていった。
 純君は、一瞬どきっとした。
「なんで太陽が星なの、それに地球も?」おじいさんはどう説明していいか困った。 純君は、続けて。
「じゃ太陽星とか、地球星とか、どうしていわないの?」
「おじいさんも、それは知らない、大昔からあの星たちとは、別の世界と思っていたんだろう、それで、人間が、自分が住んで居るのを、地球といい、太陽も、月も、人間の生活に関係があるので、そう呼んでいるだけだ、宇宙には太陽や、月のような星が、沢山あるかも知れない」純君は、どうしても納得いかなかった、頭が冴えてきて、宇宙人や、UFOの話を聞いたことがある、夜空をみ上げながら、考え込んでしまった。
 暫くして家の奥の方から、おかあさんが。「じゆん!」
「はーい」
「そろそろ寝ないと、朝のラジオ体操に起きられないよ」と、寝るようにいった。
「うん、解っている」と、いったものの、眠られそうもない。
 純君は仕方なく布団の上に、横になった。 あれこれ考えているうち、眠ってしまった。 翌日も、昨夜の、おじいさんの言葉が、忘れられなかった。
 朝早くラジオ体操に行った。
 昼間は勉強したり、遊んだりお手伝いしたりして、やがて、夜がやってきました。
 夕食後、一人縁側に座って、涼みながら夜空を眺めて、星のことをぼんやり考えていた。「おーい純君!おーい純君」誰かが呼んでいるようだ。
 どうやら庭の方から、純君が生まれる前からある、庭石のようだ。
 古い大きな庭石は。
「ア、ハァハァハァ、何を考えているんだ? 君が住んで居る地球の事か? 昨夜のおじいさんとの話を、聞いていたよ、地球はやっぱり天体の星と同じだよ」と、いって笑っているようだ。
「庭石が、どうして知っているんだ?」偉そうにしているのが、純には気に入らなかった。
「俺を知っているか? 昔々山が崩れて、ばらばらになり、川に転がり落ちて、段々小さくなって、暫くいたんだが、人間がどういう気なのか、ここに運んできたんだ」と、説明してくれた。
「それでもただの石ではないか」
 庭石は。
「この俺も、小石や土なども、何億年前に地球の出来た頃からあるんだよ、どこからかやって来たもんでもない、いろいろ変化があったが、山や海だけが、地球を作っているんではない、俺たち全部が地球なのだ」
「それもそうや、山や岩も、それに海も全部地球なんだな」と、純君も、どうやら納得したようだ。
 庭石は。
「人間など動物や、植物は、後から出来たものだ、あまり勝手な事をして貰いたくない、余り地球を荒らさんで欲しい」と、不服そうであった。
 純君は、ロケットが打ち上げる、人工衛星を知っている。
「人工衛星も、星が、小さな星を作っているのか?」
 庭石は、迷惑そうに。
「そうだ、宇宙にごみを作っているんだ」
 でも純君は、将来人工衛星に乗って、星の地球を見てみたいと思った。



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この物語の著作権は遠賀香月が所有します。
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