Last Up Date 2000.08.01          

日記を物語る 2000年07月INDEXホームに戻る             


07月30日(日曜日)

完全オフ。書くことはありません。

07月31日(月曜日)

読書日記。石原千秋『教養としての大学受験国語』{ちくま新書.2000.07}。標題の「教養」は、文化、文明論としての「Culture」に限りなく近い「教養」なのですね。ちなみに、本書60頁に登場する石原さんの恩師の一人の美術史家で、聖徳太子伝研究で知られる、上原 和先生は僕の父ではありません。よく聞かれますので念のため。


07月01日(土曜日)

所沢市松井公民館で「古典に親しむ会」。あと一回で「薄雲」巻が読み終わります。

07月02日(日曜日)

大阪は東淀川区にある大阪成蹊女子短期大学で開催された、第20回日本文学協会研究発表大会に出席しました。僕もちょうど第10回目の大会が母校で行われたのを機にこの大会で発表させていただいたことがあります。あれからもう十年経ったのですね。古代後期の発表は『枕草子』『うつほ物語』『源氏物語』『松浦宮物語』とバランスよく並び、しかも力作ぞろいでした。また、名古屋・関西圏のみなさんと親しく酒を酌み交わし、旧交を暖めることが出来たのも大きな収穫であったことは申すまでもありません。

今回の会場校のホストである久保田孝夫さんから、『竹取物語』や『紫式部集』研究で知られる、南波浩先生の訃報が伝えられました{07月01日逝去、02日告別式}。僕も久保田さんの御配慮で、先生の90歳のお祝いに論文集を奉呈しようと計画していた矢先だったので、かえすがえすも残念です。また、先生の逝去で、『竹取物語』の古本研究は、僕がたった一人の研究者になってしまったことにもなります。1994年、同志社で行われた中古文学会で、先生に伝・後光厳院筆の『竹取物語』切の論文{「ぐんしょ」1994.10}をお渡しして励ましの言葉を頂戴したことが、よい思い出としてこの胸の中に刻み込まれてあります。合掌。

07月03日(月曜日)

清泉はあと二回を残すのみとなったけれども、前日の無理がたたって朝はなんとも言えず辛いものがありました。しかも原因不明の停電で冷房も効かないという状態。ただし古典演習のふたつの発表は、丁寧に調べてあってそんな諸事を忘れさせてくれる内容でした。でも「楼の上」巻の現代語訳にはみなさん苦労しているみたいですね。二時間目は薫香をテーマにじっさいに香を燻らせながら話してみました。ここも、冷房の効かない部屋だったので、むしろ雰囲気は味わってもらえたのかもしれません。

07月04日(火曜日)

土砂降り+雷雨の中、渋谷の國學院へ。『うつほ物語』の会、本日前期最終回。打ち上げもありましたが、終った頃には雨もすっかり上がっていました。

先月の青短の懇親会で声をかけていただいた紅野謙介さんのサイトをリンクしました。。紹介文も僕なりのエールで。「「日本近代文学」界を代表するスター研究者のサイト。語りはまさに爽快で、かつ何を書いても洗練された文章。僕にとって永遠の文学的憧憬として輝きつづけています」。

07月05日(水曜日)

先日約束していた、明治大学法学部のページの中の「論文演習」履修者、T君の自分史にカウンターを設置しました。よろぴく。

07月06日(木曜日)

快晴。実際東京にはないが、新東京国際空港{=成田空港}のそばにある東京成徳大学。国語科教育法。作品に惚れこんだ先生の授業は違いますね。やっぱり。「中世文学」はテキストの全文を読み終えました。慎み深い彼ら・彼女らからたくさん質問が出ました。テストが近いからかなあ。『源氏物語』の成立事情は抑えておいてください{この反則ネタは、このページを御覧のみなさんのためのサービスです}。

07月07日(金曜日)

明治大学法学部のページの「論文演習」のカウンター設置を機会に、次の論説文も気合を入れて添削してアップさせることになりました。青山は本日最終日。文学史は『伊勢物語』49段と『源氏物語』「総角」巻の匂宮と女一宮の「若草」の歌を解説しました。演習は薫を抱く『源氏物語絵巻』の場面の輪読。でも発表者はそのことは気づいていなかったようでしたが。

07月08日(土曜日)   37000カウント

久しぶりに完全オフの一日、上野の東京国立博物館の「平等院展」に行きました。目的は当然「雲中供養菩薩」。「琴」や「琵琶」を弾く菩薩は何度も回ってみました。琴の絃を受ける「龍池」の窪みはどれも五つ。つまり五絃の琴であることが判りました。会場に設置してあったパソコンでも画面を拡大して確認できました。

物語研究会の例会通知が届く。機関誌に掲載するためのアンケートはよく検討した内容だと思いました。ただし「研究者の責任」を問う、高尚なる設問も、学級会レベルの議論しか出来ない我がものけんではご愛嬌?。

昨年五月の火事の罹災者と火元の御遺族との合意書が届いたので家々を回りました。なかには「はじめまして」とご挨拶しながら署名をいただくこともありますが、僕の労をねぎらって何軒かの家でビールや菓子を頂戴する。こうした人情味がこの町には生きているのですね。

07月09日(日曜日)

午前中は琴のレッスン、午後は『うつほ物語』の勉強会。ただ少しずつ気分は夏休みモードに突入しつつありますが。

07月10日(月曜日)

清泉は本日最終回。中古文学概論は王朝人の暮らしについて。前期の感想・改善点には板書が見ずらかったことがあげられ、興味関心があった講義には、文化・風俗に関するものが挙げられていました。古典演習のふたつの発表は、「七夕」と「結婚」について。『うつほ物語』と『源氏物語』を比較検討するのにはなかなか着眼点がいいですね。こちらは前期レポート提出を課したのですが、印象に残った発表には@「薫香」、Aは同率で「俊蔭女と末摘花」と「陰陽道」が挙げられていました。確かに完成度が高かったし、昨年度の基礎演習よりハイ・グレードなテーマ設定に受講者のみなさんが満足していることが何よりうれしいことです。演習の定員を5名オーバーしてみなさんを受け入れましたが、今のところ成功と見てよいかと思います。

07月11日(火曜日)

火事の合意書を持って家々を回りました。またまた家でビールを頂戴する。酔っ払ったので更新は翌日になりました。

07月12日(水曜日)

昨年暮れ、国文学研究資料館で開催された「21世紀の『源氏物語』研究」の校正刷りが僕のところにも届きました。今月中に発行のようです。僕の発言部分はここを御覧ください

07月13日(木曜日)

東京成徳大学。国語科教育法はすべての模擬授業を終えました。後期は時間をたっぷりとって、やってもらう形に変更しました。「中世文学」はテスト。山をはずした皆さん、ご愁傷様です。

07月14日(金曜日)

明治大学法学部。「国語」は森鴎外シリーズのラストとして、『舞姫』を見ました。ただし、表示よりも長くて時間が足りなかったようですね。井の頭線の電車で移動して青山は定期試験。移動で開始時間に間に合わないと申告していたら、試験会場には教務部長がいらしていたく恐縮しました。欠席した学生さんの対応を話し合うため国文学研究室に出向くと、助手さんが笑顔で丁寧に対応してくださり、藤本勝義・小林正明両先生もいらして{おふたりともにキャンパスでお会いしたのは三年間お世話になって始めてです}、短時間ながら談笑することができました。講師室では井野葉子先生が宝塚の1000Days劇場で上演中の『あさきゆめみし〜源氏物語〜』を御覧になったようで、しかもこれがとてもよかったとのこと。光源氏が須磨から帰還し、紫の上が亡くなる場面まで構成されているようです。

リンクを二箇所追加しました。立命館大学『源氏物語』データベース「香のする花の庭 SCENTED FLOWER GARDEN」。御覧ください。

07月15日(土曜日)

横浜市立大学で物語研究会。発表には確かな充実感があり、特に阿部好臣さんのレポートは、今期サバァティカル中ということもあってか、木目細かな資料が用意されていて、みなさんいろいろな宝を得て家路についたことでしょう。それにしても金沢八景は遠いです。

07月16日(日曜日)

こんどは新宿で新<現場論>研究会あらため古代言説研究会。僕の大学の後輩である森脇祐治さんの「雪と献歳−文武天皇「詠雪」詩をめぐって」。久しぶりに漢詩中心の発表に僕の知的欲求は大いに満たされました。満足。参加者の感想はこちらの「とりあえず掲示板改」で御覧頂けます。

07月17日(月曜日)

火事の合意書は14軒中13軒まで合意していただきました。残るは一軒、唯一火災保険未加入で焼け出されたお宅だけになりました。みなさん火災保険にはかならず入りましょう。

リンクを二件追加しました。平安素材集・綺陽堂 「古代文学会のホームページ」

07月18日(火曜日)   38000カウント

終日、『狭衣物語』勉強。のべ10枚書きましたが、依頼はたしか06〜08枚だったと思います。どうしよう。「いろいろに重ねては着じ夜半の狭衣」。ちなみにこの物語、LYCOS Japanの検索では158件ヒットしました。大学の講義でもとりあげられているんですね。

07月19日(水曜日)

今日も『狭衣』学習中。引用した先行論文を読み返していたらほぼまる一日かかってしまいました。話題が乏しくてごめんなさい。この十日間に、ジャスト1000回のアクセスを頂戴しました。みなさん暇なんだねえ{これは僕なりの愛情表現ですのであしからず}。

おすすめサイトを紹介しておきます。河添房江さん・私の来た道「森の散歩道」2000円札流通の話題で盛り上がっています。

07月20日(木曜日)

海の日。本来なら大切にしている勉強会の予定が入っていたはずですが……。なぜか幹事さんからなしのつぶて。あれ〜〜。『狭衣』は擱筆しました。雑誌の発行を待って公開します。

07月21日(金曜日)

明治大学法学部。「論文演習」は、ひさしぶりに『日本語練習帳』の「敬語」を読みました。「国語」はテスト。まあ、みなさんの要領のいいのにはたまげましたぜ!!!。

07月22日(土曜日)

神田パンセで日本文学協会第三回委員会。日本学術振興会からの「日本文学」への出版助成金が全額カットされたことの他はいたって平穏に議題は進みました。ただし、二次会で近代文学部門のスター研究者「I」氏の日文協脱退を知る。学会とはかくも難しきものなりや。

07月23日(日曜日)

阿佐ヶ谷にある余明{ユーミン}先生{「中国音楽勉強会会報 1999.12.25」より}のスタジオで琴の稽古。琴の修行ということで、精神論もずいぶんと教授いただきます。年齢は先生が二つほど年長ですが、先生の超絶技巧を目の前で見せつけられると先生が「文人貴族」に見えたりしますね。ちなみに、先生は上海の中国音楽院のあと、東京藝術大学大学院を修了なさっています。

07月24日(月曜日)

清泉は講堂で中古文学概論の定期試験。試験勉強のシフトが出来ていない学生さんにはつらい内容だったようですね。真っ先に退出した人の答案は、……片面白紙でした。。。。「長谷川{政春}先生より大変で、今期いちばんむずかしい試験だった」と留学生が話してくれました。ふだんから、講義内容を把握しようとする姿勢が大切です。では、ごきげんよう。

07月25日(火曜日)

完全に夏休みになったと思いきや、他の仕事が午前中から入っていました。夕方、藤井貞和『折口信夫の詩の成立−詩/短歌/学』{中央公論新社・2000.06.25}をようやく購入出来ました。この夏は折口を学ぶ予定です。

07月26日(水曜日)

夏休み中とは言え、仕事のほうは、今日、明日がピーク。しばらく文学的話題に乏しい生活です。とは言っても、研究会関係の、無責任に放り出された仕事の後始末をしたりはしています。御立派な文学理論を振りかざす前に、世間の一般常識が通じる人間でありたい。

07月27日(木曜日)

「後深草院二条−中世の最も知的で魅力的な悪女について」。このページに登場する『とはずがたり』研究者の故・次田香澄先生には、大学院時代、講談社学術文庫の発行前後にこの日記を御講義賜りました。ただし、某教授の演習のあとの講義だったため、出席率はよくありませんでしたが。

07月28日(金曜日)   39000カウント

ときどき原稿の依頼を頂戴している国文学月刊誌から「21世紀の日本語研究」の一項目「テキストと文法」{20枚}の御指名。ミレニアムイヤー最後の特集らしいのだけれど、何を書けば良いのだろうか、ちょっぴり不安になりました。先行研究である工藤真由美『テンスアスペクト体系とテクスト』{ひつじ書房.1995}はさっそく本棚から取り出して読んでみましょう。藤井さんの一連の研究もまとまったかたちで読めるようになっているし。この夏は、まだ一度もお会いしていませんが僕の文章を読んでスカウトしてくださった先生を中心に、数人のベテランに混じって、初学者のための文学用語辞典を書き下ろす予定もあります。

07月29日(土曜日)

ひさしぶりにリンク集でお世話になっているみなさんのお部屋を訪問したら、夏休みや半閉鎖状態のサイトがいくつかありました。みなさんさまざまな事情があったり、ネットトラブルに巻き込まれたり、なんてこともあるみたい。先日、某短大の先生の独白録がカナリ強烈な学校経営批判だったため「大丈夫ですか?」お尋ねしたところ、「あれはストレス解消だよ」と笑い飛ばされたことがありました。僕の日記も、そんな側面もなきにしもあらずですが、読者の皆さんそのあたりの事情は斟酌くださり、ご批判はお手柔らかに、ということで。

午後、某女子大で、来年刊行予定の出版物の打ち合わせ。研究者には垂涎のテクストになりそうなので、僕が出版社に完成原稿を持って交渉してみることになりました。バカ売れしたら、「青山にでっかいビルを建てなくちゃ。。。。{もちろん、夢物語ですよ}」。帰りがけに立ち寄ったレストランでも、獲らぬ狸のなんとやらで盛り上がり、、、、いやあ今日は楽しかった。以上。


INDEX ホームに戻る