源融は「源氏物語」の主人公・光源氏のモデルだと考えられている。皇子でありながら臣籍に降下した境遇、嵯峨や宇治といったゆかりの地、そして類まれな美貌などの共通点から、江戸期の契沖や本居宣長も「光源氏は嵯峨天皇の皇子・源融をもととする」と書いている。 ただし、作者の紫式部自身はその点については明言していない。 華やかな世界を描いた「源氏物語」は、「宇治十帖」に至って静かな苦悩と救いを求める物語に転じる。物語の最後の舞台は、ここ宇治以外にはなかったと思う。 次へ