万葉集には仁徳天皇ご自身の歌はないが、磐姫皇后の仁徳天皇への相聞歌がある。 「君が行日長くなりぬ山尋ね迎へか行かむ待ちにか待たむ」(万葉集巻二 85) 「かくばかり恋ひつつあらずは高山の岩根し枕きて死なましものを」(同 86) 「ありつつも君をば待たむうちなびくわが黒髪に霜の置くまでに」(同 87) 「秋の田の穂の上に霧らふ朝がすみいずへの方にわが恋ひやまむ」(同 88) どれもいい歌だと思う。歌からは一途な思いが伝わってくる。特に、「わが恋ひやまむ」とは、強い表現だ。