鐘楼
The bell tower

菅原道真もこの鐘の音を聴いた。詩「不出門」では謹慎中の陋居での心境を詠っている。「都府楼は纔かに瓦色を看、観音寺は只鐘声を聽く」と。楼に登ってみる。国宝の梵鐘は西暦681年に筑前国糟屋郡多々良で鋳造された日本最古のものとか。古雅なかたちをしている。金網で囲まれているが、以前もそうだったかは思い出せない。後方は宝蔵で、平安から鎌倉の仏像などが展示されている。
 門を出でず

一たび謫落せられて柴荊に就きしより
万死兢兢たり跼蹐の情
都府楼は纔かに瓦色を看
観音寺は只鐘声を聴く
中懐好し孤雲を逐うて去り
外物相逢うて満月迎ふ
此の地身検繋無しと雖も
何為れぞ寸歩も門を出でて行かんや