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「聖母子像」1465ウフィッツィ美術館蔵部分
- なんと美しい女性でしょうか!こんなに美しい女性像は見たことがありません。そう思いませんか所長。
* カルメル会の修道僧であるフラ・フィリッポ・リッピの作品だな。確かにこの美しさは尋常じゃないね。
- だって同時代の画家達の絵の女性、ま、聖母像がほとんどですけど、は中世をひきずっているというか、なんというか、顔が怖いんですよね。
* そうかな。ネーデルランドのファン・デル・ウェイデンの作品なんて、今見ても美人だと思うが。それにしてもリッピのこの絵はそれらとは何か違う美を発しているとは私も感じるよ。ルネサンスがあるとすれば、その萌芽ともいうべき・・まいいか。リッピはよくドミニコ会の敬虔な修道僧フラ・アンジェリコと比較されることがある。それくらい悪徳を重ねたようだぞ。
- えっ、どんな悪さをしたのですか?
* もっとも有名なものは修道女ルクレツィア・ブーティとの駆け落ち(フィリッポ48才頃、ルクレツィア21才頃)であり、彼の描く聖母像にはルクレツィアの面影が宿ると言い伝えられている。しかもルクレツィアとは結婚していないんだ。その他にも気に入った女性を見かけると物を与えて自分のものにする、領収書を偽造して金をだましとる等、修道僧らしからぬさまざまな悪徳を重ねていたらしい。修道院も父親に入れられたものであり、もともと修道僧には向いていなかったんじゃないかな。
- ううむ、善人とはいえませんね・・。
* そんな悪評にもかかわらず彼はフィレンツェの名高い画家として工房を営んでいた。パトロンである老コジモ・デ・メディチや他の注文主も、彼のよからぬうわさについてはほとんど言及していない。この聖母像はメディチ家のポッジョ・インペリアーレ荘にあったものだが、どう思うねこの美しさは。弟子であるボッティチェリの美人画がいかにリッピの影響下にあるかよくわかろうというものだ。薄いベールの表現、淡くそまった頬、理想的輪郭等、美しい女性像とはどういったものかを、その性癖上知り尽くしていたと言えるんではないかな。
- 空気遠近法で表現された斬新な背景も、レオナルドのモナリザに先駆けるものと考えられるんじゃないですか。
* 確かにそうだ。ぼやあとした背景は遠くに見えるね。空気遠近法だ。コジモ・デ・メディチはこう言ったといわれている。彼に不徳があったとしても才能が帳消しにするであろうと・・。
- します!帳消しに。
* 君がしたってしょうがないだろ・・
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