題名の「ウリ・オモニ」は、韓国語で「わたしのお母さん」。亡き母への思慕と母からの魂の継承を象徴的な舞いに込めた身体表現作品です。
1998年3月に86歳で他界した金満里の母、金紅珠(キム・ホンジュ)は、韓国古典の歌、舞、楽器に秀で「至宝」と呼ばれた芸人であり、流転の運命を背負い日本への移住を余儀なくされながら、しかし、母国を侵略したその国にあって、民族の魂の芸能を、戦時中にさえも上演し続けた気骨の人でした。今回、本作によって、金満里は、母の古典芸能のスピリットを、自ら創造してきた態変の身体表現に取り込んでみようとしています。
さて、本作は、舞踏の大野一雄氏・大野慶人氏の監修を受けて創り上げました。大野一雄氏の代表作に「わたしのお母さん」がありますが、「女の側からの『わたしのお母さん』を創りましょう」ということで、監修を快諾していただきました。魂の舞踏家・大野一雄氏の世界観、「子宮」と「宇宙」が一体となっていくというビジョン、が盛り込まれて一層深い意味付けをいただきました。
すなわち、この作品において、3つのファクターが出会っているのです。金満里の独創が身障者の身体から取り出した特異な表現力と、韓国古典芸能の魂、そして大野一雄の舞踏の世界観が。