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少年サッカー指導コラム
サイドバックの面白さを見出してみよう

 前回のコラムに掲載しました、サイドバックについて、もう少し深く掘り下げてみましょう。

 皆さんのチームでは、サイドバックにどんな選手を起用していますでしょうか?前回のコラムにもあったような、サイドバックというポジションを蔑視するかのごとく、チームでサッカーが苦手な子に「おしつけ」ていなくはないでしょうか。
 また、チームの中でサッカーが得意な選手が気軽にサイドバックもやってみるそういう雰囲気作り、チーム作りは出来ているでしょうか。「サイドバックやってみなよ。」とコーチから指示してみて、その子が「よし、やってみようか。」と言える雰囲気はあるでしょうか。ミニゲームでリーダー格の子が、「俺もたまには(「たまに」では困るのですが・・・)サイドバックやってみるかな。」なんて言える環境作りを指導者はしているでしょうか。おそらく、現状ではなかなか出来ていないと思われます。

 もちろん、私の指導しているチームでも、なかなか難しいのが実情です。でも、結構いろんなメンバーがいろんなポジションを経験していますし、いわゆる市のトレセンに選ばれている子までもが、サイドバックを楽しんでプレーしています。

 では、なぜそれほどまでにみんなが敬遠し、蔑視してしまうポジションなのでしょうか。それにはどうやら指導者や周囲の大人が考えているポジションの概念とか、サッカーの質が関係しているように思われます。サイドバックそのものの役割が、とても限られたものになっているように思われるのです。相手の攻撃を押し返すだけの役割になってしまっているのです。また、そこにかかわる大人も子供も、その役割しか期待していなかったり、考えつかなかったりしているように思われます。
 そこで、ぜひ皆さんにご提案したい。もっとサイドバックにいろいろな役割を担ってもらうというのはいかがでしょうか。この役割について、最新のサッカー事情と重ね合わせて考えて見ましょう。

 今のサッカーは「コンパクトネス」と言われる、中盤のプレッシャーが非常に厳しいゲーム内容になっています。そのため、いかに早く、確実に、サイドや最終ラインの裏のスペースへ出て、そこからさらに早く、確実に攻撃できるかがカギになってきています。しかしながら、現状でも、小中学生のゲームにおいて質の低いサッカーをしているチームでは、そのコンパクトネスから抜け出せず、まさにペナルティエリアの幅の内側でサッカーをしています。つい先日の中学生の試合でも、そのような光景を見て、残念な思いをしたばかりでした。地元では強豪と言われるチームのプレーに、感嘆のため息が聞こえてきましたが、ただあこがれのように見ているようで、子供にも、指導者にも分析したり、チャレンジしてみようという意識は感じられなかったのかもしれません。

 話を戻しましょう。「コンパクトネス」から抜け出して攻撃するその一つの方法として、サイド攻撃を挙げましたが、そのようなプレッシャーを受ける中盤に比べて、かなり激しいフォアチェックをかけない限りは、サイドバックのポジションはプレッシャーを受けにくいポジションの一つなのです。そこでボールが落ち着きやすいポジションなのです。だからこそ、そのポジションにきちっとボールが扱える選手が入ると、ゲームが落ち着きやすくなるのです。だから、チームでも比較的技術の高い子にプレーしてもらおう、と私は提案するのです。リスク回避でただ弾き返す、あせって前へ前へと蹴ってしまうようなディフェンスラインからの意図の無いダイレクトプレー、いわゆるムダ蹴り、ドカ蹴りではなく、きちっとつないで見たり、意図的なダイレクトプレーをサイドバックから仕掛けてみるのです。中央からのパスで、フリーでボールを受けたときは、ラン・ウィズ・ザ・ボールでボールを持ち上がり、数的優位をつくって攻撃できれば、マン・ツー・マンやマーキングディフェンスを仕掛けてくる相手にとっても、つかまえにくく、より面白い攻撃が仕掛けられると思うのです。中盤の選手を追い越して、前線の攻撃に絡んでいくのです。中盤の選手や残ったディフェンスは「つるべの動き」「チェーンリアクション」あるいは、カバーに回る動きを覚えていけば攻撃と守備のバランス、ポジションチェンジなども身についていくのではないかと思います。

 個人技の面白さ、大切さを教えるためにも、サッカーの楽しさを教えるためにも、いろんなポジションを経験し、そのポジションの面白さを見いだし、基本となる戦術も自然と身につくきっかけを与えてあげられるよう、私たちは努力していきたいと思うのです。


コラム4月25日 サイドバックの面白さを見出してみよう
 
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