コラム目次へ

少年サッカー指導コラム
新たなコーチ活動の中で 成人用ゴールとコート

 実家のある、信州・松本に戻ってきて、すでに半年以上が過ぎました。少年サッカーのコーチも、昨年夏(8月位かな?)から続けていますが、この半年の間に気がついた点をいくつかお話ししていきたいと思います。
 まだ、トップページが永山F.C.のページだった頃、コメントにこういうことを書いたことがありました。
「初采配、3連敗。それ以上に松本市のサッカーにカルチャーショック・・・。」
「低学年(1・2・3年生)の大会に大人のゴール、大人のコート・・・これでは、何が楽しくて、いいサッカーか分かる前に、勝利至上主義やパチンコ・サッカーに浸ってしまうようになる訳ですねぇ・・・。」
 ちょっといい訳というか、愚痴のようなコメントでしたので、改めて、この真意についてお話ししていけたらと思っています。
 さて、私自身も、子供のころ、同じように、市内の少年団に属していましたが、その頃は、3年生からのスタートでした。また、低学年むけの試合・大会なども特に無かったと記憶しています。現在は、1年生も選手として所属出来、なおかつ、低学年向けのリーグ戦が市内では行われています。実際には冠大会ではないですから、練習試合に近いものなのですが、子供たちは、とても活き活きと試合に臨んでいました。
 こうした試合が行われることは決して悪いことではありません。それどころか、他チームとの試合によって、自分の技術を確認出来たり、相手チームの選手のプレーから学ぶなど、子供たちが収穫出来る要素は、練習とは違った刺激を受ける上でも、数多いと思います。
 ただ、残念なことに、そのせっかくの良い機会を、大会の内容のために質を落とさざるを得ないことになっているのです。それが、コメントにあったゴールとコートの件なのです。
 皮肉なことに、東京にいた頃は、場所の確保などの都合もあってか、小学生の大会には、小学生用のゴールと小学生用コートを用いることが非常に多かったのです。それが逆に、狭いゴールを狙う意識と、狭い局面を打開するような個人技を身につけるのに好都合であったように思うのです。事実、八王子など、場所が比較的確保出来るところでは、大人のコートを使って練習しているチームもあり、得てしてそういうチームでは、縦に早い、大味なゲーム展開をしていました。
 私が常々コラムで述べている内容の中では、「勝利至上主義より技術至上主義・楽しさ至上主義」というテーマが底辺に流れています。その点で、こちらに戻って来て、低学年むけの大会に、大人のゴールとコートを用いていたことは、とにかくショックで仕方がありませんでした。これでは、走れる子(足の早い子)、とにかく大きくキック出来る子が(勝つためには)チームとして優先されるのは必至です。周囲のコーチや父兄の声かけも、目を覆うものがありました。
「そこ!!蹴っとけ!!」「高く蹴ればキーパー届かないぞ!!」
もう、いい加減、そういうコーチングは止めましょうよ・・・子供たちがエポケー(思考停止)に陥るようなコーチングは・・・
もっと子供たちのやりたいこと、トライしてみようとするところを引き出すコーチングが出て来て欲しいものです。でも、それを阻害するのが、このセッティングなのかもしれないのです。
 私は、かつてチーム代表になぜ低学年の大会にまで、大人のコートやゴールを用いるのかと聞いたことがありました。その答えは、「全日本少年サッカー大会の大会規約に基づいて大人のゴール・コートを用いているから」とのことでした。では、その大会のお膝元である東京都で、地区予選や、各市の大会などで小学生用コートや小学生用ゴールを用いて行われているのはおかしいってことになるじゃないですか!!それどころか、都内の低学年向けの大会では、より狭いコートを用いるようになっているというのに・・・私は、出来ることならこういう批判はしたくは無いのですが、ただ規約に縛られていては、協会の方々も、技術委員も思考停止していると思わざるを得ません。
 コートの場合は、ある程度から狭くなると、なんでもかんでもやみくもにシュートばかり打つようになり、パス・ドリブルによるプレー、ゲームの組み立てが少なくなるのではという懸念がありますが、それでも、大人のコートを用いているよりは個人技への意識が高まるように思われます。また、大人のゴールを用いるよりは、小学生用ゴールの方が、指導者もやみくもに「強く・高く・大きく蹴れ、とにかく蹴れ」というような単一的な指導にはならないはずです。いかにしてゴールを奪うか、シュートをどう狙うか、それぞれの選手が工夫し、考えるプレーが出ることが、子供たちへのサッカーの指導には必要なのではないでしょうか。
 ちなみに、私の指導しているチームでは、小学生用ゴールを用いてシュート練習を行っています。正直なところ、それでも移動などが大変ですので(大人4人が必要な程重たい)、簡易ミニゴールが欲しいくらいです。その方が、さらにキックの精度、練習のレパートリー、子どもの自主性(練習のために自分たちで運ぶようになる?)など、子供たちにとってメリットが増えるものと思っています。まあ、予算の関係もあるので、なかなか難しいですが。・・・塩ビの太いパイプと、使い古した漁網でも使って自作しましょうかねぇ・・・。
 一コーチという立場ではありますが、このコートとゴールの件は市の協会にも粘り強く説得していきたいと思っています。その方が底辺の技術向上にはいいはずです。それだけではありません。ただ勝つだけのサッカーではなく、コーチや父兄の怒号が聞こえない、子供たちが楽しめるサッカーへ近づくきっかけになると信じています。

次回コラムでは、昨年末から今年正月にかけて行われた高校サッカー大会についてお話ししようと思います。


コラム4月5日 新たなコーチ活動の中で 成人用ゴールとコート
 
CopyRight M.Kobayashi 2000-2007