勝者のエスプリ

NHK出版協会編 1,500円(税別)215頁 1997年8月25日初版 ISBN4-14-080321-5 C0075
勝者のエスプリ  おすすめ書籍も、紹介しておきながら、説明のページもなく、ようやくご紹介できました。さて、この「勝者のエスプリ」(NHK出版)ですが、昨年始めまで、名古屋グランパスエイトの監督を務めていた、アーセン・ベンゲルの著書です。私も一ファンであるこのチームですが、この監督を務めるにあたって彼が直面した困難、日本人の気質、日本人指導者を育てていくにあたっての課題や、日本サッカーの発展のためのポイントなどを事細かに分析しています。まさに、彼の指導哲学を表した書籍であると言えます。
 彼は、クラブチームでサッカーをやりながら、大学では経済学を専攻していました。そうした彼に私は何だか親近感を覚えたものです。というのも私事で恐縮ですが、私も実は大学は経済学部に在籍していたのです。私の場合は、経営学の組織論・戦略論などを専攻していたのですが、サッカーと経済学に結びつきを見つけ、そこから論じていく切り口がとてもおもしろく、読み耽ってしまいました。
 彼はまた、勝利至上主義に対しての否定的見解を述べるとともに、日本サッカーが現在の学校教育によって影響を受ける部分や、学校教育の問題そのものにまで鋭く論じています。
 今ではイングランドのアーセナルにて有意義な監督生活を過ごしている彼ですが、決して日本サッカーに愛想を尽かして離れていったわけではありません。むしろ日本サッカーの可能性に大きな期待を寄せつつ、厳しい決断の上で日本を離れていったことが述べられています。
 彼の客観的な視点を私たち指導者がいかに率直に受け止められるか、そこに、日本サッカーの未来はかかっているのかも知れません。でも、彼は、その未来を楽観視しています。有り難くその厚意を受けてまた指導に励んでいきたいものです。

書籍案内3/16 「勝者のエスプリ」

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