高級カメラにとっての間違ったオートマチズム
   しかし、それは平凡なネガ以外についてはうまくいかない。つまり、濃度に関しては、白バックのネガは焼きすぎ、黒バックのネガは焼き不足になるというデンシテイフェリアが、また色に関しては、画面に強い色が含まれればその色が自動的に抑えられて補色方向に色が偏るというカラーフェリアが生じ、先の投書と同じ結果となる。  ゴルフボールを、背景の色紙を取り替えて写し、これを手補正なし(裏面の印字がオールN)の同時プリントに出せば、七色の背景を使えばボールが七色に変化した写真ができあがる。これで、プリント機械が何を行うかがよく理解できる。なお、私は、5、6年前から、この問題をアピールするために、この望ましくない調整原理を応用した<ゴルフボールシリーズ>をはじめとする、サービスプリントで構成した作品をつくりはじめた。(xxページ参照)  良心的なラボでは、その困った機械調整を修正するために、フェリアが出そうなネガに対しては、濃度調整ボタンと色調整ボタンを操作して、ユーザーが気に入るであろう調子に調節される。つまり、機械の自動調整を更に感覚で補正するという操作が加わえられる。したがって、ここでは勘がものをいうことになり、上手下手が生じ、注文するたびに色や濃度が違ってくることは避けられない。  したがって、現状では、ハイテクカメラの存在価値は、こと色と濃度に関しては、完全にゼロである。露出やフィルターの調節もまったく水の泡である。つまり、ハイテクカメラにとっては、現行のプリントシステムは、はじめから<間違ったオートマチズム>であったということである。少なくとも、失敗が救済できるシステムであっても、正しい撮影結果がだせるシステムではなかったということである。
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