ハイテクカメラには入射光測定の機構を
     このグレイバランスによって色の問題が解決したあとに生じた次の問題は、撮影時の露出であった。いうまでもなく、撮影時に正しい露出が与えられていれば、グレイバランスをとるだけでノーマルプリントができる。ところが、一般のTTLカメラは、反射光測定であるからカメラまかせでは、白いものは露出不足、黒いものは露出過度になり、正しい露出は与えられない。最近のマルチパターン測光カメラはそれを自動調整するとはいえ、TTLであるかぎり厳密な撮影をするには18%グレイカードを撮影位置に置いて測定するか入射光メーターが必要になる。  私は、グレイバランスのためにDFをつくったが、これならグレイカードでは問題になる表面反射光は生じない。携帯にも便利である。そして、このDFの光透過率をうまく調整すると、レンズ面にあてがったときに入射光メーターの結果にきわめて近い適正露出(18%グレイカードが再現できる露出)が判定できることがわかり、RWDFSとして実用化しこれを世に出した。(注7)  しかし、何でもそうであるが、出来てしまえばごく当たり前のことである。TTLカメラは反射光メーターそのものであるから、レンズ面に適当な透過率の拡散板を装着すれば入射光メーターになるのは理の当然である。だから、RWDFSさえあれば、Gネガづくりと同時に入射光測定ができるので一石二鳥なのであるが、ここではその宣伝を行うのが目的ではない。  結論をいえば、何故これまで、ハイテクカメラにTTL測光(反射光測定)とともに、露出決定の上できわめて重要な入射光測定の機能が付かなかったかということである。  やはり、これまでの写真術の技術思想は、<ほどほどのプリントができればいい>ということだったのであろうか。とすれば、ブラケッテイングや露出補正等は、何のためであろうか。またリバーサルだけを考えての機能であるとすると、正確な露出が必要なリバーサルこそ、入射光測定の機能が必要であろう。 いずれにしても、ハイテクカメラであるかぎり、いわば絶対値である入射光測定を兼ねる機能を備えてこそ、ハイテクカメラなのではないか。
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